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2006年11月11日
No.252

加藤紘一・佐高信・鳥越俊太郎

  1. 加藤紘一氏のWebサイトを見たら、「ものをいう自由は今 〜 言論に対する暴力に抗議する集会」というシンポジウムがあるというので、昨晩虎ノ門の日本消防会館にいってきました。パネリストは、表題の3人です。

    主催は第二東京弁護士会です。私の所属している弁護士会は第一東京弁護士会。共催団体の一つになっていました。しかし、そんなことは行ってみようと思ったことと何の関係もありません。パネリストの3人とは面識があり、またしばらく会っていなかったので、懐かしさから行ってみる気になったのです。所用があって20分ほど遅れてしまいました。会場は大ホールでした。満員ならば1000人以上は入れる会場です。でも聴衆は250人でした(主催者が閉会のあいさつでわざわざいったのですから間違いないでしょう)。政治家の会ならば、きっと参加者は500人といったでしょうが(笑)。

    加藤さんと私との関係はいまさらいうまでもないでしょう。ただひとつだけ付け加えるとすれば、加藤さんの実家が放火された翌日の8月16日、私は鶴岡市に火事見舞いにまいりまして、そのとき、加藤さんといろいろな話をしました。それからもう3ヶ月もたっているので、あの事件のことをいまどのように考えておられるのか、ちょっと聴きたかったのです。

    佐高さんとは、平成6年に自社さ政権を作る活動をしていたとき、なぜかよく一緒になりました。きわめて歯切れがよく、論点が鋭い人だなぁーと、感心しました。そんな関係で、佐高さんが書いたものを目にするとよく読んでいました。いつの時代にも「毒舌家」と呼ばれる人がいるものですが、氏は当世随一の毒舌家といっていいでしょう。佐高さんが、このテーマについてどのような切り口で話をするのか、ぜひ聴きたいとも思っていました。

    鳥越さんとは、実は毎日会っています。朝の報道番組は、テレビ朝日の『スーパーモーニング』を見ています。同じ時間帯に他局の報道番組もありますが、これが出色だと思っています。鳥越さんは、毎日出ています。最近では報道番組もすっかりオチャラケになってしまいましたが、その中で鳥越さんからはジャーナリストとしてなんとか頑張りたいという矜持が伝わってきます。ですから、鳥越さんがどういうのか、特に注意して聴いています。それで、毎日会っているような気がするのです(笑)。この際、ぜひ直接話を聴いてみたいと思いました。かつて何度か取材を受けたような気もするのですが、その関係ではそんなに深い付き合いがあったとはいえません。

  2. こういう会合に、一聴衆として参加しようと思い、また実際に参加したのは、実に久々です。いや、この数十年なかったといってよいでしょう。こういう会合は、主催者するか、講演者かパネリストとして参加する対象でした。やはり、私は特殊な人間だったのだと思います。もちろん少人数の会だったら、3人にご挨拶くらいはさせていただくつもりでした。しかし、今回はそれはどっちでもよかったのです。殊勝にも純粋に話を聴きたいと思っていました(笑)。

    入り口から入って、私は後ろから3分の2くらいの席に座りました。かなり距離はあったのですが、3人を非常に近くに感じました。これはビックリしました。この夏、神宮球場で生まれて初めてプロ野球を外野席で観戦しました。巨人・ヤクルト戦です。こちらの方はぜんぜん別でした。バッターボックスの選手の表情はもちろんですが、試合を見ているという感じがまったく起きません。「代打、オレ!」の古田監督も見どころなんですが、古田監督がいったい何処にいるのかさえ分かりません。

    シンポジュウムが終ったのは、午後9時前でした。ですから、遅れて入った時間からでもきっちり2時間はありました。3人がほとんど規則正しく、順番に5〜8分くらいずつ話をしました。それぞれ、7、8回は発言されていたでしょう。日本ではなぜかこうなるんですね。それぞれが、なかなか含蓄のある面白い話でした。このシンポジュウムの全体を紹介するのが本稿の目的でもありませんし、私の任務でもありません。いずれ、どこかのWebサイトで発表されるかもしれませんから、そちらを見て下さい。昔からノートをとるというのは、私は苦手なのです。

  3. ですから、3人の話の中で、印象に残ったことをそれぞれいくつかずつ紹介します。これもかなりいい加減かも知れません。人間は、興味があると思った瞬間から、自分なりの言葉で整理して記憶しているのかも知れないからです。

    [鳥越]

    1. 加藤さんの自宅に対する放火事件は、本来なら今年の重大ニュースのかなり上の方にランクしなけばならない事件だと思う。しかし、マスコミはそのように報道してこなかった。こういう問題に、マスコミ自体が鈍感になっている。
    2. 夏休み中とはいえ、小泉首相からも安倍官房長官からも、放火事件について積極的コメントは発せられなかった。記者団にいわれて初めて「聞かれなかったから、言わなかった」と小泉首相はいったが、そういう問題ではないだろう。夏休みであっても、官房長官はオフではなかった。官房長官は、内閣のスポークスマンだ。内閣として、ちゃんとした声明を出す必要があった。
    3. この国は、これまで超えてはならないとされてきた線を、平気で踏んでもいいんだということになってきた。それはかなり危険であり、怖い。
    4. 報道番組でも分・秒単位の視聴率が、翌日には出てくる。視聴率が稼げないニュースは、大事だと思っても追っかけて報道できなくなってしまう。マスコミが悪いのか、国民が悪のか、それは問わない。でも結論的にいえば、国民のレベル以上のマスコミをその国民は持つことはできない。

    [佐高]

    1. 森・小泉・安倍と保守右派の政権が3代続いた。これは、自民党の歴史にはなかったことである。ウルトラ右派の安倍を何となく支持する国民・自民党になったというのが、わが国の政治の現状である。
    2. かつては隅っこの方で小さな声で発言してきたのが、日本の右翼・民族派だった。ところが、マスコミなどで○○大学教授とかいう権威ある人が、堂々と右翼的言動をいうようになったので、既成の右翼は、これを超えなければ存在を示すことができなくなった。今回の放火事件は、そんなところに原因があるのだと思う。
    3. 田中内閣の時にできた青嵐会の隅っこにいたのが、森喜朗・石原慎太郎・浜田幸一であった。石原さんは都知事、ハマコーはいまやテレビの常連。もう何もいいたくない気になる。

    [加藤]

    1. 『中央公論』や『世界』などが全盛時代のとき、文芸春秋などでほそぼそと発言してきた人たちが、それまでの 鬱憤 ( うっぷん ) を晴らすために攻撃しているのだと思う。要するに、社会主義や、それと同じようにみられるものに対しての反撃なのである。ソ連が崩壊したことが、この人たちを元気にしている。
    2. 中選挙区時代の自民党の政治家は、本当に凄くまた強かった。中選挙区の下では、最低12〜15%あれば当選できた。その地盤培養のためにお金がかかり、不祥事も起こったが…。だから、環境の専門家や福祉の専門家などが育った。強い後援会さえあれば、怖いものはなかった。
    3. 小選挙区で当選するためには、少なくとも65%くらいの有権者に支持されることを言わなければならない。その中で個性的なことをいうことは、ほとんど不可能に近いことです。これが他人と違うことをいえない政治家を作ってしまった。私が靖国問題でああした発言ができるのも、強い後援会があるからです。
    4. アメリカの中間選挙の結果で、日本の政治も必ず変わります。だから、足場をしっかり守って頑張りましょう。最近、糸の切れた凧のような人々が多くなってきたような気がする。ですから、何かとしっかりとつながっていなければならない。家族とのつながり・友人とのつながり・地域とのつながり ─ なんでもいいですから、そういうものを大切にしなければならない。
  4. 9時ちょっと前に、シンポジュウムは終りました。大きな会場でしたから、挨拶を交わすことはできなかったし、またするつもりもありませんでした(控え室にいけばお会いすることはできたと思いますが)。まず私がしなければならないことは、タバコを吸うことです。男性の喫煙率が50%をきったようですが、私はまだやめられません。玄関の入り口にある喫煙所で、いい気分で紫煙を燻らせていました。懐かしい表現ですね(笑)。すると、私たちの出口とは違う出口から鳥越さんが出てきました。私はもちろんすぐ分かったのですが、鳥越さんも私を認識したらしく笑顔で私の方に歩いてきました。

    「いつもテレビで見てますよ」とご挨拶したら、「白川さんが来ていると、いま皆んなで話していたんですよ。お元気ですか」と話しかけてくれました。「はい。ようやく元気になりました。Webサイトを再開しましたので、ときどき見て下さい」といって名刺を渡したところ、「私も、インターネット新聞をやっていますから見て下さい」といって名刺を下さいました。OhmyNewsというんだそうです。
    「インターネットを見て感じることなんですが、いいことをいっている人は結構多いのですが、どうもインターネットの世界・自分の中に閉じ篭っちゃっている。やはり、今日のように実際に会わないとダメですね。今日は本当に良かったですよ。これからもどんどんやって下さい」
    「そうなんです。やはりインターネットの匿名性というのが質を下げていますね」
    などと話していると、今度は別の出口の方から佐高さんが歩いてきました。

    佐高さんも「白川さん、元気にしてますか」と声をかけてくれました。私も「佐高さんが経済評論家とは知りませんでした。政治評論家とばっかり思っていました(これ、ホントのことです。今日のシンポジュウムの垂紙に経済評論家と書いてあったのです)」。佐高さんは、大声で笑っていました。政治評論などという馬鹿らしいことをやっていられるかというような風情でした。

    久々にお会いしたので名刺をお渡しし、「最近またWebサイトで少しずつ書き始めましたので、見て下さい」といったところ、「私、インターネットはダメなんです。あいかわらず手で書いているんです」といいながら名刺をいただきました。
    週刊金曜日   代表取締役社長・編集委員      佐高   信(さかた   まこと)
    とありました。『週刊金曜日』に関係していることは知っていましたが、その社長とは … これも初めて知りました。さすが経済評論家。経済評論家がやっているのですから、経営も大丈夫でしょう。でも、これからは私も買うことにします。

    少し遅れて、今度は加藤さんが鳥越さんが出たところから来ました。談笑している私たちをみて「おぉ、元気か。それにしてもずいぶん締まったなぁー」と声をかけて下さいました。「はい。この前お会いした時から、10キロ痩せたんです。どうしても先生にお聴きしたいことがありますので、今度お訪ねます」「ああ、待っているよ」ということで別れました。

    3人ともほんの数分ずつでしたが、ちょっとした挨拶以上のことができました。3人とこうして話しできたことは、正直にいってたいへん嬉しかったです。シンポジュウムにきて良かったと思いました。3人とも、いまや数少なくなった質の高い論客です。ご活躍をお祈りします。

  5. 一聴衆として関心のあることが、実は二つだけありました。一つは、昨日総務大臣がNHKに対して出した放送命令のことです。それに対してどういうのか聴きたかったのですが、この話はまったくでませんでした。長くなったので詳論は避けますが、私も郵政関係の仕事を長くやってきましたので、関心のある問題です。

    放送法33条1項には、確かに「総務大臣はNHKに対して、放送区域、放送事項その他必要な事項を指定して国際放送を行うべきことを命」ずることができるとあります。これまでは編集の自由への配慮から「時事」「国の重要な政策」「国際問題に対する政府の見解」などといった大枠のものでした。しかし、今回総務大臣は短波ラジオの国際放送の報道などで、北朝鮮による日本人拉致問題を重点的に扱うよう命令したのです。

    今回の放送命令を出すことについて総務大臣から諮問をうけた電波監理審議会は、11月8日「(内閣)が拉致問題を最重要課題として推進することになったことに伴う変更であり、適当だ」と答申しました。一方で、実際の運用では「従前と同様、NHKの編集の自由に配慮した制度の運用が適当である」と総務大臣に求めたといいます。分かったような分からないような答申ですね。総務大臣は、命令をした目的について「北朝鮮の幹部もラジオを聞いている。拉致問題の解決が日本の最重要課題だということを彼らに示す必要がある」と述べたといいます。

    国際放送に対するNHKの予算は今年度85億円で、これに対する国の交付金は22億5000万円です。この国費投入の見返りに、この命令権限が総務大臣に与えられているのです。放送命令のことを私は知っていましたが、あまり深く勉強したことはありません。また、これまであまり問題になったこともありません。ただ、私はおおむね次のように理解していました。

    1. わが国に対する理解を深め、またわが国の基本的な外交政策などを他国に理解してもらうという政府広報的な役割を持つ放送をすること。
    2. 外国で生活する日本人のために便宜としての放送をすること。
    3. 国際情勢が緊迫し、その地域で生活・滞在している日本人の生命・自由・財産などを保護ために、その地域にいる日本人に対して必要な情報などを緊急に伝えることを目的とする放送をすること。

    特に放送命令を出す必要があるのは、3の場合です。この場合は、編集の自由などということはあまり問題にならないはずです。内容も具体的になりますし、放送する区域も限定的なります。本来、放送命令とは、こうしたものを想定しているのだと私は考えます。これに対して異論を唱える人は、そんなにいないと思います。

    「北朝鮮の幹部もラジオを聞いている。拉致問題の解決が日本の最重要課題だということを彼らに示す必要がある」と命令されたNHKは、いったい何をすればいいのでしょうか。NHKは「これまでも手厚く報じてきたのに、なぜ命令なのか」と受けとめているそうですし、橋本NHK会長も命令を受けた後、「これまでどおり放送の自主・自立を堅持する」とコメントし、「放送の内容は何も変わらない」と受けとめているといいます。

    そうすると、今回の放送命令はいったい何なのかという疑問が生じます。いったい誰がこんことをいいだしたのでしょうか? 総務省の役人か、それとも総務大臣などの政治家なのか、自民党なのか? どっちにしても、安倍首相に対するオベンチャラという気がしてなりません。ひょっとして、安倍首相自身だったりなんてことはないんでしょうなぁー(笑)。

    前号で、郵政問題はつまるところ、通信の秘密をどう守るのかという問題なんだといいました。報道の自由をどう守るかということも、郵政省の大事な役目だったのです。郵政省には放送行政局というのがありました。郵政省そのものがなくなり、この問題を専門に扱う看板を掲げた部署がなくなったことは、今回のことに深く関係していると思います。

言論の自由ということに関しては、もうひとつ大事なことがあります。権力者にとって都合の悪い情報を国民からオフ・リミットするという動きですが、これは別の機会に書くことにします。それでは、また。

白川勝彦

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