2003年11月24日
ここで、全国に目を転じて見てみましょう。民主党は、比例区で自民党を凌(しの)いで第一党となりました。民主党の当選者72名に対し、自民党は69名です。これこそ、今回の総選挙においてもっとも注目すべきことだと私は思っています。衆議院選挙の比例選挙は、全国を11のブロックに分けて当選者が決定されます。従って、全国の比例票の単純合計で決まる参議院選挙とは異なります。しかし、全国の比例票を単純に比較してみますと…
政権党である自民党を凌ぎ、野党である民主党が比例で第一党となりました。この意義はどんなに強調しても足りません。過去に自民党が比例選挙で野党に負けたことが2回あります。ひとつは、平成元年の参議院選挙です。反消費税の嵐とおたかさんブームで、社会党が比例区で21議席であったのに対し、自民党は18議席でした(この数字は手元に資料がないために私の記憶です。11月25日確認し、間違いがあれば訂正します)。この選挙の後の総理大臣指名選挙で、参議院では土井たか子社会党委員長が指名されました。すなわち、参議院では完全に与野党逆転になったのです。 もうひとつは、平成7年の参議院選挙です。前年の12月に結成された新進党が比例区で18議席であったのに対し、自民党は15議席でした。平成6年6月に自社さ連立により政権党に復帰した自民党でしたが、この時に自民党に走った衝撃はたいへんなものでした。次の総選挙は小選挙区比例代表並立制で行なわれることは既に確定していました。その総選挙において自民党は新進党に勝つという確かな展望はまったくなくなりました。というより、自社さ連立によって政権党になったものの、次の総選挙では自民党は野党に転落するだろうというムードが一挙にでてきたのです。 このような深い危機感が、河野洋平自民党総裁を橋本龍太郎通産大臣に替えることになったのです。特に落ち度のない現職の総裁を替えるということは、自民党にとってはたいへんなことなのです。でも、そうしなければ次の総選挙で新進党には勝てないと、多くの自民党の国会議員が思ったのです。私は「橋本総裁を実現する会」の事務局長を務めましたが、面白いように賛同者が集まりました。そして、総裁選の直前になって、河野さんは立候補をしないことになったのです。この時、橋本氏の対抗馬として立候補したのが、小泉純一郎氏でした。もちろん、橋本氏は304票対87票の大差で勝ちました。 それから1年間、橋本総裁・加藤幹事長の下で、自民党は必死の選挙対策に専念し、平成8年10月20日の第41回衆議院総選挙で、自民党は新進党に大差をつけて勝ち抜き、政権党の地位を確保したのです。自民党が執念を燃やした選挙準備の1年余、私は加藤紘一幹事長の下で、選挙の実務責任者である総務局長を務めました。私は、持てる力の全てをこの仕事に注ぎました。300の小選挙区のほとんど全てに関与しました。政治家と政治家が命を賭けて激突する、さまざまのドラマもありました。今回の選挙の結果をみると、その時に決定した基本構図がまだいきているところが、200選挙区以上あります。このことは、いずれ「300小選挙区列伝」とでも題して、書いてみたいと思っています。 話を元に戻します。過去に自民党が比例区で野党に敗れたのは、いずれも参議院選挙でした。衆議院選挙で野党に敗れたのは、今回が初めてです。これは、自民党にとってはショックなことなのです。政権選択の選挙である衆議院総選挙において国民が民主党を第一党としたことは、有権者は政権を民主党に委ねたかったということです。しかし、民主党は政権党にならなかったばかりか、与党に絶対安定過半数をとられてしまったのですから、小選挙区における民主党の対応がまずかったということになります。最大の反省をここにおかなければなりません。比例で第一党となった民主党には、これからは人材が集まることがおおいに期待されます。明るい展望があります。 しかし、衆議院選挙で比例区で第二党となった自民党が、このまま安穏と手をこまねいているいるとは思えません。いまのところ、自民党に平成7年のような大きなショックが走っているようには見えませんが、自民党にだって選挙の分る者が現われるしょう。油断はできません。鉄は熱いうちに打て!、です。幸いにも、来年には参議院選挙があります。この選挙において引き続き民主党が比例区で第一党になれば、日本の政党の中で国民の支持が一番ある政党は民主党ということになります。民主党に対する国民の見方が、現在とはガラリと違ったものになります。だが、これに負ければ、今回の勝利は帳消しになってしまいます。来年の参議院選挙は、これまでのどの参議院選挙より重大な意味をもっています。天下分け目の関が原といってもいいでしょう。 |
私は、今回の衆議院総選挙を戦うにあたり、一人の革命家としてものを考えてきました。また、そのように考えなければ、今回の行動などできるものではありません。これまでの私の支持者の多くの方々が私の行動についてこれなかったのは、この点だったと思います。自民党を改革するというこれまでの私の政治スタンスを評価して支持して下さった方々に、自民党をぶっ倒すことに協力して欲しいというのは、正直にいってかなりの乖離(かいり)があったのだと思います。だから、仕方がないことと思っています。しかし、比例区で民主党が第一党になったということは、私の考えが決して私一人の妄想ではなかったことを証明していると自信を深めています。きっとこれからはこれまでの私の支持者の方々も、私の行動を理解して下さると確信しています。 国民はとうに自民党など見限っているのです。そして、民主党に期待をもって投票したのです。残念ながらこれをしっかりと受けとめる力が、民主党を中心とする野党になかったのです。このことを野党全体として自覚しなければならないと思います。「政権交代は、やはり、ひとつの革命である」と今回の選挙を戦う中で、私は何度もいいました。そして、この革命を実現するためにもっとも欠けているものは、政権交代を叫ぶものの主体的力量であると私は指摘してきました。今回の総選挙をこうやって総括すると、私自身を含めてこの指摘は当たっていたといえます。私も己をもう一度鍛え直さなければならないと改めて肝に銘じています。 なぜ、革命は起きるのか。どうして、革命をしなければならないのか。こうしたことを理論的・政治的に明快に論ずる力が民主党になければなりません。理論的な支柱のない革命は、決して成功しません。これからは、この理論面をこのサイトを通じてどんどん発表していくつもりです。また、革命を多くの国民に実感してもらえるように、民主党が政治的に大きく成長していく必要があります。これは、今回の選挙でバッチをつけた方々の活躍に期待するしかありません。個々の政治家が、理論的・政策的な蓄積に努めなければなりません。自民党の議員にだってたいしたものがあるわけじゃないのですから、自信をもって大丈夫です。 組織面における民主党の強化。私は全国300の小選挙区の民主党の実態を知る立場におりませんでしたから、この点について述べる能力はありません。しかし、180以上の選挙区には現職の民主党・社民党の現職の衆議院議員がいる訳ですから、やりようによっては飛躍的に強化が可能のはずです。自民党だって、現職の衆議院議員のいない選挙区ではその組織はたいしたものではないのですから、そんなに悲観する必要はありません。でも、堅固な党組織を作るということは、本当に困難なことなのです。倦(う)まずたゆまずの努力が必要なことだけは確かです。幸いにも連合という労働組合がどの選挙区にもあるわけですから、自民党に比べればその展望は明るいものがあります。 「民主党が比例で第一党になったというが、前回選挙で民主党と自由党が取った票数とほぼ同じ、合併効果にすぎない。ところが自民党は370万票も増えている。前回の森政権では投票したくなかった自民党支持者が戻ってきたと考えられる。公明党は約100万票の増加。これは自民党支持者に投票を迫った結果。一方、共産党は210万、社民党は約260万票減らした。前回共産党と社民党に投票した人は何処へ行ってしまったのか。自民党に投票するはずはないので、この人達が選挙に行かなかったのではないか」(田中良紹C-NET代表) 興味深い指摘だとは思いますが、そうはいっても民主党が第一党になった意味は大きいと思います。これだけの得票をしたのは、民主党と自由党が合併し政権党を目指したからです。この点を評価して、国民が民主党に投票してくれたのです。もし、合併していなかったならば、民主党も自由党も、共産党や社民党と同じように票を減らしていたと思います。しかし、民主党が比例で第一党になれたのは、270近くの選挙区で戦った候補者の努力は評価しますが、率直にいって、地力というよりも風によるものと考えた方がいいと私は考えます。 風を呼び起こすのも実力のうちですが、風だよりの政党がどのような運命を辿ったか、私たちは忘れてはなりません。政権を獲ろうという政党がグライダーではいけません。風のいかんによって、わが国の進路がぐらついたのでは危なっかしくて政権など預ける訳にはいかないという不安感を国民は必ず持ちます。たとえオンボロでもいい、プロペラをもって自分の力で進める飛行機でなければなりません。そして、このような政党をつくるために、国民も政治家と一緒になって努力しなければならないと私は強く訴える者です。政治は、国民と政治家の共同作業の結実なのです。政治って、やってみると結構楽しいのです。このサイトがそのために少しでも役立てばこれに過ぐる喜びはありません。
( 了 )
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