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白川 勝彦

6   「実体のない幽霊政党──自民党」

1文字アキ“一寸の虫にも、五分の魂”というくらいですから、一つひとつの政党には何らかの「理念=基本的価値観」がなければなりません。ところが、前述したように、現在の自民党は、有象無象の支配によって、政党としてのアイデンティティをはかる理念を失くしてしまいました。

1文字アキ今の自民党にあるのは、「ただ政権党でいたい」ということだけです。同様に、現在連立を組んでいる公明党にも保守党にも、理念は全くありません。これが、自公保連立政権に対する国民の不支持を強くしている大きな原因であるといえるでしょう。
1文字アキこのような理念のない政党同士が組む連立の目的はただ一つ。政権を持っていたいということだけです。つまり、自公保政権の本質は政権維持にすぎないわけですが、実はこのことがそれぞれの政党の基盤を弱くしているのです。

1文字アキ理念のない無節操な連立は、必ず縮小再生産につながります。このことは私が書いた『自公連立の政治論的批判』という論文(webサイトに掲載)に詳しく書いてありますので、ここでは多くは述べませんが、一つだけそのことを証明した例を挙げておきたいと思います。
1文字アキそれは二〇〇一年六月に行われた総選挙の結果です。総選挙の直前、それまで連立を組んでいた自由党は、政権離脱を巡る意見の対立により分裂し、自由党は政権の外に出て、政権に残留した議員は保守党を作りました。そして総選挙を迎えたわけですが、その結果はどうだったか─。ご承知のように、政権の外に出た自由党は倍増し、政権にとどまった保守党はほぼ壊滅したのです。
1文字アキ理念のない無節操な連立の末路がどうなるのかを、これほど雄弁に物語っている事実はないと言えるでしょう。

1文字アキ私が自民党のことを実体のない幽霊政党だと断言する理由は、なにも自民党に理念がないからだけではありません。
1文字アキ実は、自民党には党を支える社会的実体、つまり組織もないからなのです。確かに、自民党を“難攻不落の城”あるいは“不沈空母”と見ている人が、まだまだ多いのは事実です。また、自民党もそのように見せかけ、思い込ませようとしています。だから、多くの人は、自民党が“難攻不落の城”ならば、少なくともその土台となる石(組織)くらいはあるはずだと思っているのです。
1文字アキ民主党には、連合という組織がついています。公明党には、創価学会という化け物みたいな組織がついています。共産党にも、これまた強い党組織があります。ところが、実は自民党には、これらの政党が持っているような土台となる組織は全くないのです。

1文字アキこのように書くと、「自民党にだって、建設業界団体や軍恩・遺族会、農業団体、特定郵便局長会などがあるじゃないか?」との反論が聞こえてきそうですが、それは違います。
1文字アキ確かに、これらの団体は自民党を応援しています。しかし、それは自民党の理念に賛成するから応援しているわけではなく、自民党が政権党だから応援しているにすぎないのです。

1文字アキ実際、北海道の建設業界団体は、先の総選挙では社会党や民主党を一生懸命応援していましたし、新潟県三和村の町長選挙では、共産党の村長を応援していました。軍恩・遺族会はというと、これらの団体を結束させているのは、軍人恩給であり遺族年金なわけですから、自民党が政権党でなくなれば、応援することはないのです。

1文字アキ農業団体も、今や農業土木の建設業者を中心とした動員体制しかとれないのが実情ですし、特定郵便局長会にしても、自分たちの利益を守るための団体でしかないわけですから、自民党が政権党でなくなれば、自民党から離れていくのは目に見えています。

1文字アキ経済界も自民党を応援していると、世間では思われています。実際、私たちが自社さ政権を作ろうとしていたときに、社会党の議員から

「ところで、白川さん。財界は白川さんたちを応援するんですか?」

と、聞かれたことがありました。一瞬、私は「この人は何を言っているのだろう?」と思いました。というのは、財界と自民党とは何の関係もないからです。少なくとも私には関係ありませんでした。ところが、社会党の議員はそうは思っていなかったのです。当時、社会党は総評という労働組合が金も票も全部面倒見ていた関係で、その総評の意向に逆らって、社会党の代議士として活動することなどできないという意識だったのです。

1文字アキだから、自民党の議員も経済界のいろんなグループの意向には、これっぽっちも逆らえないだろうと思っていたのでしょう。
1文字アキしかし、財界というのは、多少は自民党に献金していましたけれども、自民党が野党に転落したときには、もう自民党なんかどっちでもいいといった感じで、すでに細川政権にすり寄り始めていたわけです。
1文字アキそういう意味では、財界もほかの団体と同様、実は全然自民党を応援してるわけではなく、政権党だから自民党を応援してるだけのことなのです。
政党にとって本当の支持団体というのは、その党が政権党であろうが野党であろうが、党の理念に賛成するから応援しましょうという団体のことだと思います。しかし、自民党の団体総局長を二年間務めた私の目から見た限りでは、自民党にはそんな団体はほとんどないというのが結論です。

1文字アキ今、無党派が大流行です。「新党・自由と希望」も無党派が頼りだろうと言われています。しかし、実は自民党こそ、無党派的政党だったのです。
1文字アキ五十五年体制の下ではどうだったかというと、社会党は総評という労働組合と野党第一党としての集票能力でもっていました。民社党は同盟という労働組合がその母体でした。公明党は言うまでもなく創価学会が母体であり、共産党は強固な党組織と共産党系の労働組合および団体の支持を受けていました。
1文字アキしかし、自民党にはこのような意味での支持団体はありませんでした。では、誰が自民党を支えてきたのかというと、実は保守層と呼ばれる地域の実力者や影響力のある人たちが、遠巻きに自民党を支持してきたのです。
1文字アキそして、その中身はというと、経営者や会社役員、商店主、農民、サラリーマン、主婦など実にさまざまで、まさに国民政党としての陣容を揃えており、そのなかには地域で活動し、大きな影響力を持った人たちがたくさんいたのです。

1文字アキまた、社会党をはじめとした野党が、支持団体に偏りすぎて、国民一般の政治的ニーズに耳を傾けず、目を向けなかったことも、自民党には幸いしていたと言えます。
1文字アキしかし、こうした自民党支持者は、誰かに強制されて自民党を支持していたわけではありません。だから、逆に言うと、彼らはいつ自民党から離れてもおかしくはないのです。大都市部のほとんどが社共を中心とした革新自治体となったとき、実は自民党の基盤に大きな変化が現れ始めていることを、自民党は気づかなければなりませんでした。
1文字アキ自民党はそのことに気づかず、消費税を導入しようとしたために、平成元年の参議院選挙で大惨敗してしまいました。また、最近では、1999年の東京都知事選挙で、自民党と公明党が推薦した明石康候補が大惨敗したことも、自民党の支持者がいかに無党派的であるということを如実に示したといえるでしょう。

1文字アキつまり、自民党の支持者というのは、本来、自由を愛し、民主的なものを愛する人たちなのであり、自立した人たちなのです。党員といえども、そうです。党や組織の命令によって、盲目的に自民党を支持し、投票する人も若干はいるかもしれませんが、大半は違います。
1文字アキあくまで自分の判断で行動し、投票する人たちが主流なのであって、そういう意味では、党員であっても自民党という組織に帰属意識はないし、盲目的に従うこともないと言えます。
1文字アキだから、私は自民党支持者は他党の支持者よりも無党派的だと言っているわけです。

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