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このコーナーでは、わが戦い─名付けて「平成革命」の理論や戦略などについて、私の考えや参考資料などを適時取り上げて、同志の皆さまの戦いの参考に供したいと考えております。ときどきご覧下さい。

白川 勝彦透明スペーサー


第15号

2001/7/2

道路特定財源見直しの虚構

「エルネオス」というビジネス情報誌からの依頼で、道路特定財源見直し論の虚構性について書きました(誌面は新党自由と希望サイトに掲載自由と希望代表メッセージ)。口では「改革」を言いながら、中身がいっこうに見えてこない、小泉氏の政策の特徴が表れているひとつの例が、この道路特定財源の見直しです。一読ください。

白川勝彦


小泉首相が声高に叫ぶ「改革」策
「道路特定財源見直し」の虚構

■改革を口にはするが、実はその中身を未だに示さない小泉首相。
“大蔵族”小泉首相の本質を看破する─(「新党・自由と希望」代表・白川勝彦)

私は、毎日一千人以上の人を前にして演説し、話をしています。その中で一番多く出る質問が、「九○%前後の異常に高い小泉内閣の支持率をどう考えたらいいのか」というものです。このような質問をする人も、報道機関から「小泉内閣を支持しますか?しませんか?」という質問を受ければ、いまは「支持する」と答えるのではないかという雰囲気の人が多いのです。そうであるにもかかわらず、九○%前後の人が小泉内閣を支持しているということに違和感を感じ、小泉内閣を支持しないなどと言えない雰囲気はおかしいと思っているようです。

こういう質問に私は、こう答えます。

「小泉さんが、改革、改革と言うのは結構なことですが、問題はその中味でしょう。私は改革の方向が正しければ賛成し、方向が正しくなければ反対します。しかし、実際に小泉さんがある程度、中味を述べた改革には、あまり評価するものはありません。ハッキリいって反対のものが多いのです ──」


道路特定財源見直し論議はこれまで繰り返されてきた

確かに小泉氏は、いくつか改革の方向の具体策を述べています。例えば、そのひとつである道路特定財源の見直し論議に、実は小泉「改革」の実態が見えています。六月六日の小泉内閣発足後初の党首討論では、道路特定財源の見直し問題について次のような趣旨の発言をしています。

「道路特定財源を見直すことは、これまでタブーであった。これを見直すとハッキリと言うだけでも、革命的なことじゃないですか。どのように見直すかは、参議院選挙後に、いろいろ意見を聞いて決めたい」

多くの国民は、小泉氏のこの発言を改革の姿勢が見られたと受け取ったようです。そのため「どのように見直すのか、この際、方向性を示すべきだ」と追及する民主党の鳩山由紀夫代表に対し、非難する声が多くありました。

しかし、小泉氏のこの主張は事実と違います。道路特定財源に触れることはこれまでもタブーではなかったし、現に一定の勢力から色々な場面で主張されてきました。ただ賛同が得られず、採用されなかっただけのことです。

私は、一九七九年(昭和五十四年)十月に衆議院に当選した時から三期まで、大蔵委員会に所属しました。この頃すでに大蔵族の中堅幹部となりつつあった小泉氏の下で、大蔵族としての “薫陶" を受けた一人です。

大平首相の時代から財政再建ということが言われ出し、鈴木・中曽根内閣時代では行政改革・財政再建一色でした。当然のことながら、潤沢な道路特定財源は大蔵省主計局に目をつけられました。しかし、大蔵省主税局からも賛同が得られず、一般財源化は見送られました。その後も主計局からは一般財源化の画策がありましたが、税の理屈からいって無理であるという理由で、取り合うものはいませんでした。

そして今、小泉内閣が誕生し、改革フィーバーの中で道路特定財源の見直し論が再度浮上してきたのです。


税の理論に沿って見直せば税の軽減が正しい選択

これは、公共事業見直し論が火付け役になったことは間違いありません。
私は見直し論に賛成です。十年一日の如く公共事業の配分率が変わらないなどということはおかしいといわざるを得ません。道路整備の予算配分も当然、見直されなければなりません。そして、道路整備に現在ほど予算を付ける必要がなくなったのであれば、その配分は抑制するべきなのです。道路整備の予算を削減した結果、現在、道路特定財源として国庫に入ってくるガソリン税と自動車税が道路整備予算を上回った場合(これをオーバー・フローといいます。)、どうするか。オーバー・フローした額を他の用途に使わしてもらうか、それとも、オーバー・フローなどと言われないために、この際、道路特定財源を一般財源としてしまうか、という議論が出ています。これが小泉氏の言う道路特定財源の議論でしょう。

しかし、これでは本来、採られるべきもうひとつ選択肢が忘れられています。オーバー・フローした分だけ、道路特定財源を軽減するということなのです。

そもそも道路特定財源は著しく遅れていた道路整備を急ぐために昭和29年に特別に導入されたガソリン税と、同46年に導入された自動車重量税です。道路を使う自動車の利用者から、特別の税金を払ってもらい道路整備に充てようというものです。

この特定財源を得ることにより、道路の整備が著しく進んだことは事実です。この税制が創設されたころ、わが国には舗装されていない道路がいっぱいありました。また、自動車の普及率も低く、特にガソリン車などはごく裕福な人しか持てない時代でしたから、自動車で道路を利用する人は特別な人でした。

現在はどうでしょうか。ほとんどの人が運転免許を持ち、自動車が必要な人はほとんど手に入れることができ、利用しています。道路も相当、整備されてきました。地方で生活していても、舗装されていない道路を通ることは日に一回あるかないかです。

こうなったら、道路整備のぺースをスローダウンすることはあり得ることです。当然、道路特定財源はオーバー・フローした税金をどうするか。それが、道路特定財源の見直し議論の本質であるべきでしょう。

道路整備のために取っていた税金が余ったのなら、「カエサルのものはカエサルに返せ」です。つまり、ガソリン税や自動車重量税を軽減する。これが税の理論です。関係者は、前から強くこのことを望んできました。国民もそのことを望んでいるはずです。

道路特定財源を見直すという場合、税の理論の常識からは、この税の軽減という選択肢しかないのです。オーバー・フローを別の用途に使おうというのであれば、もっと税の理論の根っこから討論しなければなりません。「改革」のリーダーである小泉氏が道路特定財源を見直すというのなら、せめて税の軽減策を取るのか、オーバー・フローを別の用途に回して使おうとするのかということは最低限、示されなければなりません。それがリーダーシップというものです。

仮に前者の途をとるのならば、税率をどのくらい引き下げるのかということが問題になります。後者の途をとるのならば、一体どのようなものに使うのか。根本から討論する必要があります。たとえば環境対策に使うという議論もあります。これもガソリン税の理屈になかうことです。ただし、環境対策なら何でもいいのではなく、自動車の排気ガスや道路や廃棄自動車の処分が環境にかける負荷に対する施策に関するものとするべきです。

しかし、小泉氏は「道路特定財源の見直しを革命的に行う」と声高に言ってはいますが、肝心の具体策は何も言っていないのです。
 これが小泉「改革」の一例です。


国政は憲法に基づく――
小泉氏にその認識があるか

小泉氏が具体的に語っている「改革」に、憲法改正と靖国神社公式参拝があります。

 憲法改正議論は、第九条の改正と有事法制整備のセットと、首相公選論です。どちらも相当に熱意をもっています。

 しかし、いま第九条を改正して軍隊を持つ普通の国にしようという方向性が正しいかというと、疑問なしとしません。戦後五十年の国会の討論の中で、専守防衛に徹する自衛隊と日米安全保障条約によって、わが国の独立と安全を保持しようという現在の防衛政策が確立されたのです。この安全保障政策は、厳しい冷戦下においても立派に機能してきたことを評価しなければならないと、私は思っています。二十一世紀のアジアの目指すべき方向を考える時、小泉氏が唱える憲法第九条改正論議は、現実には近隣諸国を無用に警戒させるだけでしょう。

靖国神社公式参拝問題も、実は憲法論なのです。「いかなる宗教団体も、国から特約を受け、又は政治上の効力を行使してはならない」(憲法二十条一項後段)という規定から見たら、明らかに問題があるのです。中曽根首相はこのことを知っていたために、有識者を集め、憲法のこの規定に反しないような参拝方式で公式参拝しましたが、内外の反発が強かったため一回でやめました。

憲法に基づいて国政を行わなければならないことは、あまりにも当然のことです。小泉氏の憲法感覚の是非を論ずる以前の問題として、小泉氏は憲法に基づいて国政を行わなければならないという認識がはたしてあるのかという疑問が、私にはあります。

小泉さんの改革がとんでもない方向に行く可能性の大きい原因に、九〇%前後の異常に高い内閣支持率があるのかもしれません。このことに国民はそろそろ気が付いてもいいと思っています。

*以上原本のまま掲載

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