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白川勝彦の世の中つれづれ談義 2010年9月18日 土曜日 (第12回)
聞け、日給者の声〜「休日は働きたくても働けない」
話者名 | 話の内容 |
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聞け、日給者の声〜「休日は働きたくても働けない」 | |
小泉 | 白川さん、あさっては敬老の日ということで、今日から三連休の方もいらっしゃるでしょうね。 |
白川 | そうですね。ところで、小泉さんはこの夏にまとめて休みを取りましたか。 |
小泉 | フリー・アナウンサーをしておりますので、仕事の無い日が休みなので、まとまって休みは取りませんでした。 |
白川 | 私は債務整理の相談で忙しかったので、お盆の前後に三日間休んだだけで、あとは仕事の毎日でした。 以前は日本も休日が少なく、働きづめの毎日でしたが、最近は欧米に比べてもそん色がないほど休日が増えました。年間130日近い休日があるわけですが、でも休日の過ごし方や休みの中味ついては、昔とはぜんぜん違いますよね。 今日は18日の土曜日、明日は日曜、あさっては休日、23日の木曜は秋分の日で休日、25日、26日は土日ですね。つまり、今日から9日間を見ると、完全週休二日制の会社なら、働ける日は3日しかないですね。休みに挟まれた24日なんて仕事にならないのではないですかね。 休みが多いことはいいことだ、社会のゆとりの象徴だという風潮になっていますが、一方では仕事をしたくても働く場が無い、働ける日が少ない、それが実態では。正社員なら月給で、休みがいくらあっても給料は保障されていますね。一年365日休みでも給料が保障される会社があれば、それに越したことはありませんがね。 それは冗談としても、残念ながら、働きたくても働く日が少なくなっている、そういう状況に追い込まれている人が増えているんですよ。 |
小泉 | 派遣とかパートの方ですよね。 |
白川 | 日本では、年収200万円の人が一千万人もいます。そのほとんどは、仕事をして収入を増やしたいと思っても、日給制ですから、休みには働けないし収入も無い。 給料をもらえて働いているからこそ休日の意味があるんですよ。日給者も会社が休みの日は正社員と同じように休まなければならない。政治家やお役所が「雇用だ!雇用だ!」と声高に言うのなら、こうした現実を考えてほしいですね。 |
小泉 | 休みが増えるのはいいことだと喜んでばかりはいられないですね。 |
白川 | 敬老の日は昭和41年に国民の休日になりましたが、最初は9月15日でした。それがハッピー・マンデー制度によって、9月の第三月曜日になった。成人の日もそうですね。1月15日を成人の日にしたのは、旧暦小正月と関係があったからですね。それがいまは1月の第二月曜になった。ですから地方では小正月の伝統行事ができなくなった、そうしたことも起きています。 休日を増やしても国民所得は減らない、そして有意義な休日を過ごせるような環境整備が必要です。日本経済は最近勢いが無いですね。江戸時代、井原西鶴が活写したように、借金があったとしても、大晦日に借金取りから逃れれば当分は借金のことも考えず生活できたわけですが、いまは大晦日といっても、そういうけじめも人情もないですね。休みが増えて、働ける日が少ないと言いましたが、その中で、365日働きづめのものがありますね。それが「金利」です。 |
「違法金利で返済した場合は任意とは認めない」 | |
小泉 | 番組の後半は、お金に関係する法律や生活経済の悩み事について、白川さんからアドバイスをいただきます。今日は、グレーゾーン金利について改めて教えてください。 |
白川 | 金利について、最も基本的な法律は「利息制限法」です。明治9年に作られた歴史のあるものです。これは、10万円以下の借金なら年利20%、10万以上100万未満は18%、そして100万以上なら15%と決められています。 もうひとつ、金利に関係する法律として「出資法」があります。この法律は「ここまで利息をとっても刑事罰にならない」という利率を決めていまして、出資法にある利息の変遷を見ると、1954年から109、5%、つまり借りたお金は倍返さなければいけないほど高かった。それが83年には73%、86年に54.75%、91年には40.004%、そして2000年からは29.2%に下った。 その29。2%と利息制限法の利息の差がグレーゾーン金利なんです。 |
小泉 | 利息に関する法律には、出資法と利息制限法があって、過払金が生まれるのは、利息制限法以上の利息でお金を借りている方となるわけですね。 |
白川 | 私は昭和47年に弁護士になり、債務整理の仕事をしてきましたが、その基本となったのは利息制限法です。 利息制限法の「第一条二項」はこう書いています。「利息制限法の金利を超えて支払った利息分は無効である。ただし、任意で支払った場合は、利息分を取り戻すことはできない」。高い金利であることを知りながら借りた場合は、規定の利息を超えていてもお金は戻らないとなっているわけです。 この決まりが、債務整理に関わる弁護士にとっては重要なポイントでした。ところが、昭和43年に最高裁判所が、「違法金利で債務者がお金を返した場合、それは任意とは認められない。違法金利分は債務の元本に充当されるものとみなす」という、画期的な判決が出たんです。この判決が債務整理にあたる私たちにとって、大きな拠り所になりました。 グレーゾーン金利から生まれる過払金を取り戻す請求を「不当利得返還請求」と言うのですが、これも10年間の時効という決まりがありましたが、平成20年に最高裁が、「一定の条件が満たされれば10年間の時効は消滅する」という判断を示しました。この判決もまた、過払金の返還を考えるうえで重要な出来事になりましたね。 |