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白川勝彦の世の中つれづれ談義 2010年8月14日 土曜日 (第7回)
終戦記念日を前に思う〜戦後日本の歩みを否定しない
話者名 | 話の内容 |
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終戦記念日を前に思う〜戦後日本の歩みを否定しない | |
小泉 | 明日8月15日は65回目の終戦記念日です。白川さんはこの終戦の年にお生まれになったんですね。 |
白川 | 日本の歴史には色々な変わり目がありますが、少なくとも昭和生まれで昭和20年、1945年8月15日は忘れられない特別の日でしょうね。 |
小泉 | 白川さんは6月22日のお生まれですが、この日は沖縄戦が終わる前日だったとか。 |
白川 | 確かに、8月6日と9日の広島、長崎への原爆投下は忘れてならないわけですが、ほかに昭和20年3月10日の東京大空襲もそうです。およそ10万の犠牲者が出ましたからね。もう一つの忘れていけないのは、今年は総理も慰霊祭に出席しましたが、沖縄戦の終結の日ですね。 6月23日の沖縄戦終結の前日に私は生まれました。今は情報化社会ですが、当時は情報に乏しい時代だったと言われています。でも私はそうではなかったと思います。自分の親や兄弟が戦争に行ってましたから、戦況について日本国民はよく知っていたと思いますよ。沖縄で負けそうだ、沖縄で負けたら日本は戦争に負けるという思いがあったから、私の親は「負けてほしくないということで、「勝彦」という名前をつけたのではないですかね。 将来政治家になって選挙に勝てとか、スポーツの選手になって試合に勝てということではなく、日本は負けてほしくないという思いを込めて、勝彦にしたと思います。高校の同級生に勝彦が3人いましたね。 |
小泉 | その思いも空しく日本は敗戦となりますね。 |
白川 | 空しくかどうかは…色々な思いがあるのでは?。戦争中、日本人は色々と考えていたのではないですか。軍部の言うこと、政府の言うことが全て正しいのかという疑問があり、8月15日を境に、一気に切り換えることができましたね。その意味で、私は戦後第一期生だと思っています。 新しい日本に変わりましたから、日本人全体にとって、戦前・戦中より間違いなくいい世の中になりました。8月15日を境に日本はダメになったという人が政界・思想界にいますが、私はそうは考えない。敗戦を境に、日本は世界の一員として憲法をもとに新しい歩みを始めたと言えるのではないですか。 私は戦後第一期生であって、日本の戦後の歩みに忠実であると、自らに言い聞かせてきました。 |
小泉 | 戦後は食糧難と言われましたが、その点でのご苦労はありましたか。 |
白川 | 全てを戦争で失いましたから大変でしたが、私は「すいとん」を食べた記憶は無いですね。食べることにみなさん苦労されたと思いますが、私が物心ついた昭和25、6年頃は、新潟に居たせいもありますが、食べるものが無かったという状態ではなかった。現在に比べれば食料の確保は厳しかったことは事実でしたが。 |
小泉 | ただ貧しい時にあっても、家族の絆は強かったのでは。 |
白川 | 当時に比べれば今は豊かでしょう。でも、今の日本人の心は豊かでしょうか。小児虐待をする人が4万4千人いるとか、自殺者が3万人をずっと超えているとか、そういう時代に生きるわれわれが、本当に豊かだと言えますか。昔が貧しいとか今が豊かだということは、簡単には言えないことです。 |
「貧乏人の子だくさん」、その意味を考えよう | |
小泉 | 番組の後半は、お金に関係する法律や生活経済に関する悩み事について、白川さんからアドバイスをいただきます。ものが豊かだといって、生活が豊かとか貧しいとかの基準にならないというお話でしたが。 |
白川 | 自分の給料とか売り上げの中で生活するというのが、世界のどこでも生活の基本なんです。貧しければ貧しいなりに、その収入の中で我慢をして生活することが当たり前だったが、それがいつの間にか逆転してしまった。この生活をしたい。お金が無かったら借りればいいという、おかしな時代が始まってしまったんですね。 その先鞭をつけたのは、アメリカだと思うんです。クレジットなどで簡単にお金を貸しますよ、その借りた金でものを買いましたから、アメリカ経済は調子よかった。金だけは調達できたから、景気がよかったと言われ続けた。しかし、借りた金は所詮は借金ですから、いつかは返さなければいけない。それを決済できなかったのが、リーマン・ショックだったんです。アメリカだけが困ったわけではなく、それが世界中の経済に打撃を与えました。日本でもバブルの頃は、銀行も他の金融機関もどんどんお金を貸したわけです。 いまでもそうでないですか。リボ払いにすればポイントがいっぱい貯まります、だからどんどんお金を借りなさいと言いますね。それが間違っているのではないですか。基本は収入の中で暮らすことですよ。政府も見てください。本来なら税収の中でやりくりしなければならないのに、もう何十年も前から、税収の何倍もの国債という借金をしてきましたね。その借金が900兆円にもなっていますね。 |
小泉 | 身の丈に合わない生活をしたために多重債務を抱えてしまった方に、白川さんはどのようなアドバイスをされますか。 |
白川 | これだけのお金が絶対必要なんですという相談者に対しては、ほんとうにそうですかと聞きます。昔から「貧乏人の子だくさん」ということわざがあるでしょう。貧乏でも家族がたくさんいて一緒に暮らしていれば、少額で生活できるんですよ、そういうお話をします。 たとえば、ご両親が近くに住んでいるのに、本人はアパートを借りて住んでいる人がいますね。親と一緒に生活すると、うるさいという理由らしい。でも、アパートの家賃もかかるし食費も要りますね。それで、生活できなくて借金しましたというわけです。確かに、実家で生活していたら文句も言われるでしょう。でも、家賃も払わなくてもいい、食費もそうかからない。それで、借金の返済に充てられるお金も出てくるのでは。 |
小泉 | 返済に追われるより、まず生活設計を変えなさいということですね。 |
白川 | そうでないと、借金を返すことはできません。 |