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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年7月10日 火曜日 (第72回)
テーマ
「個人再生について ②」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日この時間は、「ごごばん!法律クリニック」。ラジオの前の、あなたの法律の問題について、お話を伺います。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の、白川勝彦弁護士です。 こんにちは。宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくお願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 実は、今週は、先週頂いたご相談の続きになります。では、前回頂いたご相談、おさらいしておきましょう。トシキさん、37歳の男性からのメールです。 |
増山 | 私は今「小規模個人再生手続き」を利用したいと考えているのですが、将来の収入に不安がないわけではありません。もし、弁済途中で支払いが出来なくなった場合は、どうなるのでしょうか? 将来の収入に不安のある場合は、考え直した方がいいのでしょうか? |
白川 | 今週も、先週に続いて個人再生のお話をしたいと思います。非常に重要な制度ですが、難しい所もありますので。ちょっとおさらいをしましょう。 この方が言う「小規模個人再生」 ── 個人再生でいいでしょう。どのくらい借金を圧縮してもらえるかというと、1500万円以下ならば、5分の1。もしくは、100万のどちらか高い方です。500万までならば、100万は払って下さい … 例えば、1000万ならば200万円払って下さいということですね。1500万から3000万までは、300万。3000万を超えて5000万までは、10分の1払って下さいと。そういう面では、非常に有利な、便利な制度なんですね。 ただ、裁判所の力を借りて人の借金を5分の1とか10分の1に圧縮するわけですから、『ある債務は全部出して下さい』と、なるわけです。 |
上柳 | 出すもの出していただいて、初めてこういう条件が適用できる … |
白川 | そうでないと、おかしいでしょ。ある人のは5分の1にされる、ある人のは全然手つかず、というわけにはいきませんので。 そう言われると、うーんと考えちゃう人がいるんですね。と、いうのは、会社から借りているとか、これも借金は借金ですから、出さなくちゃいけないんです。あるいは、会社の健康保険組合だとか、共済制度から借りられる … そういう会社もあるわけですね。それなんかも、民事再生を申し立てるとバレる、と。 それから、親しい友人から借りたりしている場合も、民事再生をすると、それも出しなさいと言われると、躊躇する人が多いんですね。 もっとも多いのは、車のローンの残。債務は債務ですから、それも一応出さなくてはいけない。それも債務整理の対象にすると、車を引き揚げられますからね。こういうことなので、あるものは全部出して下さい。そして、公平に圧縮しますよというのが、個人再生の一番大事なことなんですが…。 ただし、大きな例外が一つあります。それは、住宅ローンです。住宅ローンは、額も大きいですよね。『住宅ローンは全額払うけど、他の借金は圧縮して下さい』というのは、法律上ちゃんと認められています。 |
上柳 | 家を売却してどうのこうのしなくてもいい、と。 |
白川 | なぜかというと、住宅というのは衣・食・住というくらいだから、必要ですよね。それから金額も大きいです。それから、30年とか35年ローンで長期です。金利も、現在ならば安いですよね。他の債権者も、住宅ローンを返すというのは、仕方が無いのかということで、制度として認められているわけです。ですから、マイホームローンを残したうえで債務整理をしたいという人には、非常に便利な制度なんです。 さて、この前もお話しをしましたが、例えば、『破産だったら払わなくていいよ』と、ゼロにしてくれるわけですが ── 個人再生の場合は、裁判所が決定したからといって、例えば、500万の借金が100万になるわけじゃないんです。 まず、100万は返しなさいよ、と。だいたい、3年間で返しなさいよというのが多いんですが。それを、500万なら1件じゃなくて、3つか4つに分かれますね。トータルして、500万を100万にしてもらうんだから、それを3年分割で、この通り払いなさいよと ─ 再生計画と言いますけど、それを、ちゃんと出してくれるんです。その通りに『ちゃんと払い終わったら、残りの5分の4は、法律上免除してあげますよ』ということです。 |
上柳 | 100万円をクリアしてからじゃないと、ダメなんだと… |
白川 | だから、ちゃんと払わなくちゃいけないんですね。 ですから、裁判所としても、まけてはあげますが、ちゃんとまけた金は払えるんですか、ということを、かなり細かく調査します。裁判所としても、5分の1にして、ところが半年後くらいから払ってくれないというんだったら、5分の1にされた人の立場もないじゃないですか。裁判所としても、面目ないということで。 ですから、本当に支払えるのかは、かなり裁判所の方がよく、我々弁護士を通じて、『本当に大丈夫ですか』と言われます。 それから、もう一つ忘れてはいけないことが、裁判所の力を借りて、人の借金を5分の1とか10分の1に圧縮するわけですから、人に迷惑をかけたことは、事実ですよね。ですから、官報には載ります。『何々さんは、個人再生をしたことがあります』と。罰として載せるわけじゃないんです。人の借金を5分の1にしたことがあることが。その人が、今後、別の取引もするわけですから、そのことは知っておいた方がいいでしょう、ということで、破産と同じように、官報に掲載されます。罰ということではなく、あくまでも、人の借金を5分の1にしたことがあるよという、そのことを知った上で、もしお付き合いするならしなさい、ということなんです。 ただ、普通の人は、官報なんて見ませんから。官報というのは、すべての人が見る、すべての人に教えようということで発行される、国の発行物ですから。だから、それを通じて知られることが、ないとは言えないですよね。そういうことでしょうかね。 個人再生という制度は、借金が多い方とか、マイホームを持っている方にとっては、非常に便利な制度ですから、債務整理の方法の一つとして考えるのは、重要だと思います。よく頭に入れておいた方が、いいと思います。 |
上柳 | 『この家も、売らなきゃいけないのか』と、いう風に言っている人もいますよね。 |
白川 | ただ、私も毎日たくさんの個人再生をやっているんですが、実際やるとなると、結構難しい点が多々ありますので。やっぱり、誰でもできる仕事ではないので、できれば、債務整理を専門としている弁護士さんなんかに頼むのがよろしいんじゃないかと、私は思います。今日は、こんなところでよろしいでしょうか。 |
上柳 | ありがとうございました。と、いうことで、2週に続きまして、個人再生手続きについて、お話を伺いました。白川勝彦弁護士でした。どうも、ありがとうございました。 |
白川 | どうも失礼しました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第71回 | TOP[t] | 第73回