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今回の再可決は、憲法違反。

08年04月29日

No.790

明日4月30日、自公“合体”政権は道路特定財源の暫定税率を今後さらに10年間にわたり課税することを内容とする租税特別措置法改正案を再可決し、5月1日から元の高い暫定税率が復活するとマスコミは既定事実のように報道している。だが憲法59条2項および4項による今回の再可決は、憲法上問題はないのか。このことを誰も問題にしないのは、なぜなのだろうか。憲法学者はいったい何を考えているのだろうか。これまで道路特定財源の暫定税率に関することは、ほとんど述べてきたつもりであるが、今日はこの問題を論ずることにする。

およそ憲法の条文には、さまざまな解釈がある。憲法9条の解釈は数十もの解釈があるというではないか。司法試験の勉強をしているとき、まさかこんな単純な条文は意見が分かれていないのだろうと思って読み始めるといろいろな解釈があるのである。だから読み飛ばす訳にはいかないのである。法律の勉強とはそういうものである。私は法律の勉強を通じて、物事にはさまざまな見方があるということを知った。少数意見にも、多数意見が見落としている貴重な観点があるのである。これは政治家となったとき、非常に役立った。

法律家は、世間では屁理屈をいうことを事とする人物と思われているようである。法律家は、屁理屈を楽しんでいるのではない。ある価値や利益を守るために、戦いとして法律論を組み立てるのである。憲法の解釈などは特にそうである。憲法の解釈をする場合、その根底には政治的価値や政治的理想がある。その価値や理想を実現するために、“権利のための闘争”として憲法解釈が行われるのである。この基本をまず押さえておいて欲しい

今回の租税特別措置法改正案の再可決をめぐる実体的問題とは、何であろうか。まず道路特定財源の暫定税率が高すぎることである。国民は道路が必要でないなどと少しも思っていない。しかし、道路もそれなりに整備されてきた。欲をいえばキリはないが、自動車を所有し走行するためには費用が嵩(かさ)む。その自動車関係諸税は明らかに高すぎる。暫定税率でほとんどの自動車関係諸税が倍以上になっている。もう本則税率の範囲内で道路整備をして欲しいと多くの国民は考えているのである。その按配具合・バランスを問題にしているのである。私はきわめて健全なバランス感覚だと思う。

この健全なバランス感覚から国民の60%以上が道路特定財源の暫定税率を今後さらに10年間も維持することに反対しているのである。いっぽう本則税率の3兆数千億円では除雪や補修工事しかできないと自公“合体”政権や知事や市町村長はいっているのである。だが、それは真っ赤な嘘である。3兆数千億円の道路特定財源があれば、必要な道路の整備は十分できる。もしそれでできないというのなら、一般財源を道路予算に回せば良いだけのことだ。その場合に文教や福祉の予算を削ってまで作らなければ道路かという国民の真剣な議論が行われることになる。

地方財政に“穴があく”と福田首相も知事たちもいっているが、自公“合体”政権が参議院で過半数を失ったのであるから、道路特定財源の暫定税率が廃止される可能性があることはある程度考えておかなければならなかったのだ。暫定税率で入ってくる税収は、会社でいうならば見込期待額にすぎない。見込んでいた売上金が入ってこなかったといって手形を決済しなかったら、不渡手形となり倒産である。そんなことをいっている福田首相や知事は、地方公共団体を経営する能力が欠如しているのである。恥ずべきことなのであるが、逆に居直っているのだから始末に負えない

以上がいま争われている実体的問題である。本来ならば福田首相や知事がいくら泣いても叫んでも、国会が租税特別措置法改正案を成立させてくれなければ本則税率の税収で道路の整備は行うしかないのである。国会の意思が暫定税率に反対ならば、それで我慢するしかない。多くの国民はそれで少しも困ったことだとは思っていない。もしそれでいろいろな不都合が生じてきたら、そのときに考えれば良いと考えている。私もそれで良いと思っている。税とサービスの関係を考える癖を、わが国民はもっと身につけた方が良いと考えているからだ。

それなのに自公“合体”政権は、2年7ヶ月前に行われた郵政選挙で獲得した化け物のような議席を衆議院でもっていることを奇貨として、憲法59条2項および4項で租税特別措置法改正案を再可決して、法律にしようとしているのである。こうした行為が、憲法上問題にならない筈がない。ほとんどの憲法学者はこの実態に目を向けようとしていないのである。このような実体的問題があるのに、憲法59条2項および4項の解釈として何らの疑念がないというのは、最初から問題意識がないからである。

かなり長くなってしまった。私の憲法59条2項についての考えの基本は、永田町徒然草No.776「再可決に必要な憲法上の要件は?」に述べておいた。これはまだ試論だが、その根幹には自信がある。この考えによれば、2008年4月30日、自公“合体”政権が「道路特定財源の暫定税率を今後さらに10年間課税することを内容とする租税特別措置法改正案」を再可決することは、憲法59条2項および4項に違反する所為である。野党が明日の衆議院本会議でこの点をどのように主張するのか、私は注目している。“昭和”憲法は、“権利のための闘争”を行う者にとって武器になるのだが・・・・・

それでは、また。

  • 08年04月29日 07時02分PM 掲載
  • 分類: 5.憲法問題

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