“新法”の提出!?
07年09月12日
No.547
昨日の永田町徒然草No.547で、安倍首相の“職責を賭す”発言は、「参議院でテロ特措法延長法案が否決されても、憲法59条2項のいわゆる“3分の2条項”を使って成立させますよと表明したにすぎないと考えている」と述べたことは間違っていなかったようである。これは、テロ特措法延長法案ではなく、インド洋における給油活動を可能にする“新法”を政府が提出する方針を決めたからである。
テロ特措法の延長法案ではなく、政府が新法を提出することにしたのは、テロ特措法はいわゆる“日切れ法案”だからである。確かテロ特措法は、2007年10月31日までの特別措置法だったと思う。従って、10月31日までに延長することが決定されない場合、テロ特措法そのものが失効してしまう。失効するとは、そのような特別措置がない状態に戻るということである。国会で延長法案が審議中だということで特別措置をそのまま続けることはできないのであるである。
政府自民党は、どう考えてもテロ特措法延長法案を参議院に送付した後、60日以内に、可決させることも否決させることもできないと考えたのだろう。衆議院で3分の2条項を使って再可決するためには、参議院に法案が送付された後、否決されるか60日以内に議決がされないことが条件なのである。60日間議決されないことを待っていたのでは、その間に問題の2007年10月31日が到来してしまうのである。そうなると再可決したくてもテーマであるテロ特措法そのものが失効しまっているので不可能なのである。
失効するとは、その法律がなくなってしまうことである。一度なくなってしまった法律は再議決の対象にはならない。それは一度死んでしまった人間を電気ショックで生き返らせることができないのと同じである。一度止まってしまった心臓を電気ショックで蘇生させるのは、医学的には心肺活動が一時的には停止していても完全に死んでいる状態でないから蘇生施術を試みるのである。医学的に死が確認された人間にいくら電気ショックを与えても再び生き返ることがないのと同じである。3分の2条項にもそれほどの威力はないのである。
それではどのような“新法”を出してくるのか。提出された後、ジックリと検討してみることにしよう。現在イラク特措法というものもある。これはイラク戦争にどう“貢献”するかという法律である。イラク戦争そのものがおかしいというのは、いまやわが国はもちろん世界の共通認識である。従って、イラク特措法の延長法案ならば、国民の賛否は明らかである。ところが、テロ特措法となると必ずしもそうとはいえない状態であることが世論調査などから窺える。
今回問題となっているテロ特措法は、アフガン戦争勃発のときに制定されたものである。アフガン戦争をはじめたアメリカを支援するための法律だったのである。しかし、イラク戦争も問題だが、アフガン戦争にも問題が多い。アフガン戦争は6年前の9・11同時多発テロから時間が経っていなかったために、わが国でも国際的にも冷静な議論が必ずしもされなかったと私は思っている。政府が“新法”を提出するというのだから、私たちももう一度アフガン戦争というものを見直してみようではないか。
なお、いずれの場合でもインド洋で行っている多国籍軍に対する給油活動は、一時的に法的根拠を失うことは避けられないであろう。しかし、それは国民の直近の選挙の結果なのだから仕方ないだろう。どうもこのところが自公“合体”政権には分かっていないようである。給油活動ができなくなった場合、申し訳ないという気持ち・国益を損なうという考えがあるようである。一体だれに対して申し訳ないというのか。何が国益かということも最終的には国民が判断するものである。権力者が国益とするものが国益というものではない。自公“合体”政権には、自分たちだけが国益を考えている思いあがりがある。だが、自公“合体”政権の政治家の本質が“政権党でいたいだけの浅ましい集団”ということに思いを致せば、チャンチャラおかしいと私はいいたい。
それでは、また明日。