自由主義そのものを安っぽくする
トランプ次期大統領と安倍首相
16年11月26日
No.1879
キューバ革命の指導者、フィデル・カストロが死去したとの報道に接した。カストロとその盟友チェ・ゲバラは、私たちの世代に大きな影響を与えた革命家・政治家だった。学生時代、私もチェ・ゲバラのように髭を伸ばしたものだが、ゲバラのようには格好良くならなかったので、半年くらいで止めた(笑)。私たちがカストロやゲバラに憧れたのは、超大国アメリカのすぐ隣でその傀儡政権を倒し、アメリカと戦って国造りをしていることへの尊敬があったような気がする。
アメリカとキューバは、昨年7月54年ぶりに国交を回復した。キューバはこれから、大きく変わるであろう。しかし、キューバ自身は、社会主義を放棄しないと言っている。キューバ、そしてアメリカ・キューバの関係がどうなるのか、私は、注目していきたいと思っている。キューバに親近感を持つ日本人は多いので、わが国からも、多くの人々が訪ずれるであろう。是非、そういうところを見てきて欲しいものである。
お隣の、韓国の政治情勢が深刻だ。ここまでくると、
ところで、最近のドル高と株高は、一体どういう訳なのだ。私は、経済や金融のことはよく分からないが、「トランプ氏が大統領になると何故アメリカが良くなる」とアメリカ人が考えるのか、そこが、どうしても分からない。ウォール街の金融資本は、どんなことにも屁理屈を付けて、要するに儲けようとしているだけなのではないか。
アメリカの株高を追って、日本株も上昇している。それを見て、多くの人たちが「トランプ次期大統領も、そんなに悪くはないのではないか」と思っているような雰囲気が、わが国でも出てきている。円安になると、株高になる。もうそろそろ、単純な考えは止めた方がいいのではないか。輸出企業は、円安になると儲かるかもしれないが、わが国は、大の輸入国でもあるのだ。国民の生活物資は、輸入に頼るものが多い。消費者物価が上がり、また個人消費が減退する。
経済や金融のことは専門家に委ねるとして、政治的には、野蛮な思想が世界中に
これまでアメリカという国は、経済的・軍事的な大国であっただけではない。政治的にも、大国であった。冷戦時代は、自由主義陣営全体のリーダーであった。全部そうだとは言わないが、アメリカという国や社会がやってきた中に、自由主義国の模範となってきたことは、沢山ある。もちろん、イギリスやフランスにも模範となるものがあった。
それらの模範となる理念や制度は、品格のある、知性的なものであった。トランプ氏のこれまでの言動のどこに、品格と知性があるのだろうか。私は、トランプ氏の言動には少しも、そのようなものを感じることはできない。自由主義を安っぽくしているような気がして、ならないのだ。ドイツのメルケル首相がトランプ氏当選の際に贈った祝辞は、明らかに、これに釘を刺すものだった。
ところが、トランプ次期大統領と無理矢理会った安倍首相は、「トランプ氏と信頼関係が築けると確信した」と言明した。安倍首相の自由主義に対する考えは、トランプ氏と同じレベルなのだろう。だから、信頼できる指導者と感じたのであろう。トランプ次期大統領やその取巻きと、早くも
自由主義の歴史は、決して長くない。せいぜい、300年位しかないのだ。自由主義自体が本当に人類を幸福にする思想なのか、300年の歴史の試練では、断言できるものではない。自由主義者は、そのくらいの考えをもって事に当たる必要があると、私は思っている。だから、自由主義に対する深い理解と進化を、怠ってはならないのだ。私たちは、絶対に、トランプ氏や安倍首相のような安っぽい考えに染まってはならないのだ。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。