非正規労働とは何ぞや!?
08年12月26日
No.1032
昨日はクリスマスの夜であった。白川勝彦法律事務所の電話は夜遅くまで鳴りっぱなしであった。私も午後11時まで電話の対応に追われた。これはわが国の不況の現れなのだろうか。それとも年末特有の現象なのであろうか。そのいずれかという確信はないが、いつも言っている通り債務整理は思い立った日が吉日である。最近消費者金融でも18%の金利が多くなっているが、18%の金利に堪えられる人はそんなに多くはない。そもそも18%の金利を払い続けることなど無理なのである。金融危機を乗り越えるために世界はゼロ金利政策をとっているのである。
消費者金融の業界も寡占化が進んでいる。規模の小さな消費者金融業者は経営に行き詰まり、大手の消費者金融業者に吸収されている。吸収しているのはメガバンクがバックに付いている大手消費者金融である。銀行業界にとって18%で金を借りてくれる人々は“魅力的な消費者”なのであろう。だがその国の経済にとって、このような分野に資金を回すことは国民経済からみてどうなのであろうか。
金融システムは経済の血液だという。経済に疎い私にはそのことに関して論評する力はない。政府はその血液が途絶えることがないように全力を尽くすと言っているが、わが国の血液は本当に途絶えることなく循環しているのだろうか。私が知る限り本当に資金(血液)が必要なところに資金が回っているようには思われない。金融システムの世界において、心臓に当たるのは銀行であろう。銀行に国民経済的視点があるとは、どうしても私には思われないのである。日本の銀行業界など私はどうしても信頼できないのである。
企業も国民にとって血液を送る心臓に当たる筈だ。企業は金利など付けないで国民に血液を送る存在なのであるが、この心臓がいま急速に弱っている。非正規労働者が切られている。こんな時勢であるから切られた非正規労働者を新たに雇用するところなどごく限られている。切られた非正規労働者には血液が送られなくなる。肉体に例えるならば“壊死”である。壊死で手足を切断したという話は聞いたことがある。経済にとって非正規労働者は切り捨ててもよい存在なのかもしれないが、政治や社会はこれを切り捨てることなどできない。これが政治の本質である。
いまマスコミには“非正規労働者”という言葉が溢れている。しかし、そもそも“非正規労働”とは何ぞや。いや“正規労働”とはそもそも何ぞやと問いたい。労働とはそもそも神聖なものである。“神聖な労働”に、正規と非正規などという差別があって良い筈がない。労働法は私の好きな科目であった。司法試験の時も選択科目として選んだ。私が学んだ労働法は、労働者の権利を重視した。それが当時のわが国も労働法の基本であった。企業はひとたび労働契約を締結した以上、普通の契約と同じように企業の都合で労働契約を解除したり、契約内容を変更することはできないものとされた。
いずれ労働法に関することはもっと詳しく述べたいと思うが、労働法制はその国の政治の基本である。小泉改革と称される中で、労働法制が大きく変わった ─ いや、変えられた。それが今日の失業問題の最大の原因である。その時にいわれた自公“合体”政権の言い分を思い出して欲しい。多様な労働形態があり、それに応える改革であるというものだった。労働者側が望む多様な雇用形態が強調されたが、何のことはない、企業側が望む多様な雇用形態を作っただけなのである。そもそも、そんなに新しい名案など余りないものである! 要するに、自公“合体”政権の哲学と政治思想は貧困なのである。
それでは、また。