GDP年4.8%増…!?
09年11月17日
No.1345
今日は論じなければならないテーマがいろいろある。日米同盟、普天間基地移設、アフガニスタン支援、経済対策、治安、世論調査等々である。永田町徒然草は一話一題を原則としているので、とても全部は論じきれない。昨日の事もあるので、不得手な経済問題を取り上げる。昨日内閣府は09年7月~9月期の国内総生産の1次速報値を発表した。夕刊各紙には“GDP年4.8%増”などといった見出しが躍(おど)っている。
本当に年率4.8%の成長ならば、大したものである。不景気である筈がない。ところが、世の中は不景気風が強まるばかりだ。何故なのだろうか。その秘密は単純である。物価の動きを反映した名目GDPは前期比0.1%減、年率換算で0.3%減って、6期連続のマイナスだからだ。日々の実際の経済は、名目(お金)で動いている。税収も、名目の収入で決められる。税務署は、物価調整してくれた上で幾らいくらの税金を納めろなどとは、決して言わない。実質経済が成長しているのに名目経済が落ち込んでいるのは、デフレのためであろう。
私などは、インフレを経験している。しかし、デフレのことはあまり分からない。日々の物価が下がることは、庶民にとってそんなに悪いことじゃない ── そんな感覚しか持ち合わせていない。いま問題なのは、どうも資産デフレのことのようである。資産など持ち合わせていない私には、これもピンとこない。ただ、債務整理の現場で、住宅ローン債務に関して資産デフレの現状を日々目撃している。10年前に4000万円のローンを組んでマンションを買った。10年間月々9万円のローンを払ってきたが、いま売ったとしても2500万円にしかならず、しかし住宅ローンの残額は3200万円あり、結果として700万円の債務が残ってしまうという現象である。
国は、経済対策として住宅ローン優遇策を講じて、国民の住宅建設・購入を促進してきた。こういう状態では、結果として国民に損害を与えたことになる。この間、住宅ローンを貸し付けた銀行等だけが儲けてきた。その銀行が困ると、公的資金を投入して救済を図った。その銀行が苦境に陥ったのは、確か、不動産融資が焦げ付いたのと証券が暴落したからだと記憶している。だったら、個人の住宅の建設・購入の欠損にも、何らかの支援をしても、おかしくないのではないか。個人にとって住宅建設・購入は立派な不動産投資なのであるから。
経済の門外漢がこれ以上いうと、益々ボロが出てくるので止める。しかし、このような不安感・不条理がいまの世の中にはいっぱいあるのである。だから明るい気持ちになれないのだ。国民がせっかく政権交代を実現したのだから、鳩山内閣には世の中を明るくする責任がある。世の中が良い方向に向かっているとすれば、個人の活動は必ず活発になる。個人の活動を活発にすることは、何もお金だけに限ったことじゃないと私は思っている。“個人消費を刺激する”という言い方を、私はあまり好まない。国民の消費に国が介入するのはおかしい。国民が自分のお金を何に使おうが“カラスの勝手”である筈だ。
選挙の際、民主党は国民の家計を温めるといった。温めてほしいのは財布だけではない。国民の心を温めてほしいのである。事業仕分けをしている“仕分け人”の表情や言いぶりを見ていると、とても心が和むものではない。役人の無駄を無くすことなど、予算を付けなければそれで済む話なのだ。民主党は政権を取ったのであるから、この予算はダメというだけで十分なのである。理屈など言わなくとも、国にはお金がないのだ。借金をしてまで役人にやってもらわなければならないことなど、あまり無いと私は思っているのだが…。これが、自由主義経済の基本である。自由主義者の信念である。
それでは、また。