菜種梅雨
09年04月04日
No.1131
昨朝は寒かったが、太陽が出るとドンドン気温が上がった。私は愛用のレインコートを着ずに事務所に向かった。大丈夫だった。事務所を出たのは午後9時過ぎだった。駅まで歩いた。夜でも寒くはなかった。東京にも春が来たようだ。桜も満開になった。ところが、今日は雨が降るという。これじゃ、花見などできないではないか。
今年の東京の3月後半は本当に寒かった。その代わり天気の良い日が多かった。“菜種梅雨(なたねづゆ)”というのをご存知だろうか。春先の3月ころに続く雨をいう。春の季語だ。3月の後半は日本上空に寒気団がどっかりと居座っていた。春の天気図ではなかった。だから、菜種梅雨など降らなかったのである。春の陽気になれば、雨が降るのは仕方ないのであろう。しかし、いくら寒かったからといっても、房総の菜の花はもう終わったのではないか。
私の生まれた十日町地域では、菜の花を3月菜(さんがつな)と呼んでいた。深い雪に閉ざされる十日町地域では、三月菜は春になって初めて食することができる新鮮な生の野菜だった。野菜はたくさん貯蔵されていたが、どうしてもだんだん古くなる。漬物だって古くなれば美味しくない。ビタミンCが不足してくる。3月ころ、私たちは秋に3月菜を植えておいた畑や田圃の床(とこ。苗床(なえどこ)などの“とこ”と同じ)を雪の中から掘り出す。
3月になっても積雪はまだ1メートルくらいある。子供も一緒になって掘り出す。新鮮な青物がとにかく食べたいのだ。もちろん深い雪の中で菜の花が育っている筈がない。3月ともなると雪国でも陽ざしはかなり強い。深い雪の中から3月菜が植えてある床を掘り出してやると、3月菜の新芽が吹き出すのである。その新芽を摘んで食するのである。おひたし、漬物、胡麻和え、煮物。いろいろな料理にして食べた。私などは“体が黄色くなるぞ”といわれるほど食べたものだ。本当にビタミンCが不足していたのだろう。
ちょうどその頃、田圃の畦(あぜ)や崖っぷちの雪の少ない所に蕗の薹(ふきのとう)が出る。これが初めて食せる山菜である。十日町地域では4月の初め頃まで積雪がある。山の雪が消えるのは、遅ければ5月となる。そうするとあらゆる山菜が出る。十日町地域は山菜の宝庫だ。そんな十日町地域でも、今年の冬は平地で1メートルも雪が積もらなかったという。異常である。山菜好きな私としては、山菜がどうなるのか心配なのである(笑)。
それでは、また。