雑事を楽しむ
06年12月11日
No.273
連載をしている『『私の「健康生活」実践記』 を読んで頂いているだろうか。軽いつもりで書き始めたのだが、結構かかりそうである。多分あと2回は更新しないと完結しないだろう。健康生活実践記で書いたように、私はいまほとんどの食事を自分で作っている。外食は滅多にしない。かれこれ4ヶ月になるのでだいぶ慣れてきたが、それでも駆け出しの「主夫」であるので手際良く料理が作れる筈がない。1回で済むことを2回も3回もの手順をかけてやることが多い。最初のうちはそのことに腹が立ったが、そのうちこれで良いのだと思うようになった。効率の悪いことは決して悪いことではないのだ。
私は食材を近くのスーパーで仕入れる。だいたいのメニューは考えて買うのだがいざ料理を始めると大切な物を買い忘れることがしゅっちゅうあった。そうするともう一度スーパーまで行かなければならない。もう十分歩きその日のノルマは達成したのだが、さらに1000歩は歩くことになる。それだけ運動が期せずして増えることになる。健康生活にはプラスである。私はテレビの前に置いてある小さなテーブルに古くなった朝刊を広げておく。そこに流し場で洗った野菜を並べる。水切りをしたものでも水分はけっこうあるが、これで完全に水切りをすることができる。
まな板をテーブルの上に置いて、キャベツやらピーマンやらキュウリなどを切る。主食はどんぶりに盛る。サラダにするものは小さいお皿に盛りつけるのだが、どんぶりと一緒に持ってきていないと立ち上がって持ってこなければならない。いまでは立ち上がるのはなんともないが、83キロの頃はけっこう難儀であった。しかし、近くのソファーやテーブルに掴まらず立ち上がるのは足腰を強くする。はしだけを持ってきて、スプーンを忘れる。もう一度立ち上がらなければならない。もう1回運動しなければならない。体重83キロの人間が座って状態から立ち上がるというのはいい運動になるのだ。だから手際など良くなくともいいのだ。健康生活のためには、手際が悪い方がかえって良いのだ。最近の私はちょっと手際が良くなり過ぎたようだ。
私はいまショートピースを半分に切って煙管(キセル)で吸っている。美味しいのだ。これまで吸っていたマイルドセブンなど問題にならない。しかし、煙管でタバコを吸いながらこの原稿を打つことはできない。効率が悪いといえばすこぶる悪い。どちらかにしなければならない。でもタバコをくわえながらタイピングしたからといって褒められたことではない。タバコを吸うならば楽しみながら吸う。その方が良いのだ。第一、タイピングをしながらタバコを吸っても全然美味しくはないのだ。ただ惰性で吸っているだけなのだ。タバコを吸いながらそれまで打ったものを読んでみるといい原稿にもなる。
煙管は、15本位タバコを吸うとヤニがたまって美味しくなくなる。時にはヤニが口に入ってしますこともある。その時は大変である。だから1日に2回か3回は煙管の掃除をしなければならない。私は新聞紙を1.5センチ位に切って、「こより」を作りこれを煙管に通して掃除する。最初のうちはなかなかいいこよりを作ることができなかった。またこよりを急いで抜こうとして切ってしまい、煙管を詰まらせてことも何度もあった。だいぶ慣れたといってもこよりを作り、煙管を掃除するには5分位は最低かかる。でも考えてみればタバコを吸わない時間がそれだけ延びることではないか。もともと吸わない方が良いことは私でも分かっているのだ。10分でも5分でも延ばした方がいいのだ。こんなことをやっているうちにマイルドセブンの半分以下の本数で済むようになった。
長い間10数人の秘書がいて、この秘書たちに日常生活のいろんな面をサポートしてもらっていたので、いま一人でいろんなことをやろうとすると不手際ばかりやっている。しかし、最近では不手際をやる自分に全然腹が立たなくなった。それは決してマイナスではなく、プラスの面もあるんだと思えるようになったからである。30歳から先を急ぐ、効率だけを求める生活をしてきた。だから地盤・看板・カバンがないのに国会議員になれたのかもしれないが、私は普通の人ではなくなっていたのかもしれない。人生は、効率や成果だけではかるべきものではない。人生なんてそもそも無駄な時間の総延長なのかもしれない。そんなに急いでやらなけばならないことなど何もないのだ。
何かを達成したから成功した人生といえるとは思えない。回り道をしたり、崖から落っこちることもある。しかし、その過程で真っ直ぐな道にはない花や鳥に出会うこともある。だから失敗や不手際は多いに結構なことなのである。人生には無駄も多い。生きることそれ自体が無駄なことなのかもしれない。また人生は雑事の連続でもある。だから雑事を楽しむことを知らない人は、人生をもっとも粗末にしている人だ。61歳になって雑事を楽しみながら生きることを心がけることにした。そうするとイライラやストレスを感じることはほとんどなくなった。お互い、雑事を楽しみたいものである!
それでは、また。