ヘッダバイパス[j]ump
liberal-shirakawa.net 白川勝彦 Webサイト (HOMEへ)
白川勝彦へメールを送る
永田町徒然草を閲覧しています
自薦論文を閲覧します
白川文庫を閲覧します
フォトエッセイ即写一言を閲覧します
永田町徒然草
自薦論文
白川文庫
フォトエッセイ 即写一言
プロフィル
リンク

 

雪の便りに思うこと 

07年11月18日

No.617

各地から雪の便りが届くようになった。新潟県の日本一の豪雪地帯で育った私には、この季節は特別の思いがある。かつてはひとたび雪が降れば、豪雪地帯は完全に雪に閉ざされたのである。4月の終り頃まで、雪の上で生活しなければならなかったのである。いま考えれば、豪雪地帯の最大のハンディーキャップは、冬の間自動車がまったく使えないことであった。いまほど自動車は普及していなかったものの、約半年間自動車を使えないことがどれほど不便なことか想像できよう……。

だから私の育ったところでは、根雪の降るのが1日でも遅いことを大人も子供も心から願っていた。初雪があっても、それがそのまま根雪になることは滅多になかった。初雪が11月にあることはそれほど珍しくなかった。だが11月中に根雪が降ることは余りなかったように思う。3回くらい降雪があるとほぼ根雪となった。12月になっても根雪がない年もかなりあった。そうすると大人も子供もひょっとすると雪のない正月になるかもしれないと嬉しそうに話し合ったものである。しかし、正月を旬日残した頃、無情にも静かに雪が降り始める。そういう雪は確実に根雪となる。豪雪地帯では、雪のない正月ははかない夢なのである。

私は18歳までその十日町市で正月を迎えたが、雪のない正月は1、2回しかなかったような気がする。しかし、雪は地上のいろいろなものを覆い隠して、一面を白色の銀世界にする。道路も田畑も小川もいまのように綺麗に整備されていた訳ではない。いまでいう田舎のインフラは、それほど美しくはなかった。そういうものを美しく整備するほど余裕はなかった。田舎は貧しかった。家屋もそんなに立派なものは少なかった。庭もあることはあるが、お金をかけた庭は少なかった。家の周りも畑や田圃なのである。それは生産の場なのである。美しさは二の次である。深い雪が雪化粧をしてくれる。すべて覆い隠してくれる。そして正月が来る。

子供にとって正月は本当に楽しみだった。あと幾つ寝ると正月、と本当に指折り数えたものである。正月になると美味しいものが食べられた。私にとってもっとも嬉しいことは、3日か4日工場が止まることであった。私の実家は工場と居宅が一体となった家で、昼は50人くらい、夜は30人くらいが一緒に暮らしていた。私の子供のころは、本当に休みの日が少なかった。正確ではないが、日曜日は必ずしも休日でなかったような気がする。実家の大部分は工場である。工場が動いているのだから、だいいち相当な騒音がある。また人々はそうのんびりとしていない。家庭の団欒などまずない。

正月になると工場のメーターが止まる。家の中がやたら静かになる。人ははじめて落ち着き、ゆっくりといろいろな話をする。私にはそれがいちばん嬉しかった。しかし、そんな中で親父や家の実権を持っていた婿と向かい合わなければならないことが怖かった思いもあった。私は正月でも家に帰らない女工さんの部屋に遊びに行くことがいちばんの楽しみだった。みんな「勝ちゃん、勝ちゃん」と可愛がってくれた。家族も従業員も私にとっては、そんなに違いはなかった。私にとっては皆“大人の人”であった。休みの日しか、大人は子供とじっくりと付き合ってくれる暇などないのである。

いまや3連休など珍しくない。しゅうちゅうある。だからといって、大人と子供の対話が増えたとは思わない。子供は仕事をしている大人と接する機会が減っている。大人がいちばん素晴らしいところを子供に見せられるのは、仕事をしている中である。大人は生きるために子供では考えられないようなことを平然と行う。人間の気高い姿は、仕事をしているときにいちばんあるような気がする。私は幸いにも大人たちのそういう気高い姿を多く見る機会に恵まれた。だから受験勉強は確かに辛いが、それが子供の仕事なのだから多少辛くても当たり前だという思いがあった。だから、受験勉強はあまり苦にはならなかった。雪の話からいささか飛躍しすぎたようである(笑)。

それでは、また明日。

  • 07年11月18日 02時57分AM 掲載
  • 分類: 1.徒然

白川勝彦OFFICE   白川勝彦へメール送信 ]

Valid XHTML 1.0 TransitionalValid CSS!Level A conformance icon, W3C-WAI Web Content Accessibility Guidelines 1.0

Copyright©K.Shirakawa Office 1999-2016 - Web pages Created by DIGIHOUND L.L.C. All Rights Reserved ©1999-2016
Powered by Nucleus CMS. Page designed by James Koster.Ported to Nucleus by Joel Pan. Re-design and adjusted by DIGIHOUND L.L.C. © 2006-2016