価値観を同じくするとは。
14年03月29日
No.1661
前の永田町徒然草から、一週間が過ぎた。この一週間は、実にいろいろなことがあった。その都度、「何かを書こうかぁ。何かを書かなければならない」と思った。だが、年度末の忙しさと「大事なことだが、良く考えてみればどうでもいいやぁ」という気持ちが
オランダで行なわれた核セキュリティサミットは、ウクライナ問題がメインテーマとなってしまった。G7首脳はもとより、EUの議長なども集って会議をもった。しかし、期待した決定打は出なかった。ウクライナ問題は、これからの世界にとって、大きな影響を与えるだろう。プーチンは一見、勝ったように見えるが、ロシアは果たして勝ったのだろうか。クリミア半島は手にしたが、ロシアが失ったものは、これより遥かに大きいと、思い知らされるであろう。
オバマ大統領の仲介で日米韓首脳会談が持たれたが、大騒ぎするほどのことではない。そもそも、日韓の最高主導者が交代したというのに、一年余も首脳会談が持たれていないことこそが、最大の問題なのだ。その原因は、ハッキリ言って安倍首相にある。わが国のマスコミは、この単純な点を、なぜ指摘しないのか。わが国の保守派は、本来韓国寄りであった。私は国会議員の時、日韓問題に熱心に取り組んだが、「リベラル派の白川さんが、なぜ韓国に行くんですか」と、よく言われたものである。
私には、ハッキリとした信念があった。わが国は、自由主義を理想として掲げる国である。冷戦時代のアジアでは、社会主義国でない国は飛び石的にしか存在しなかった。日本、韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイが、飛び石のように存在している状態であった。これらの国々が自由主義の理念で強く結束していかなければ、わが国はもちろんのこと、これらの国々もまた、国際社会の中で存立しては行けない、というのが私の信念であった。
その最初の出発点が、日韓関係だった。私が日韓関係に携わったのは、朴正煕大統領暗殺後の全斗煥大統領の発足からだ。まだ、軍事政権の時代と言って良い。しかし、韓国がいつまでも軍事政権では、私の描く自由主義国同士の結束にはならない。私には、韓国でも軍事政権がもう限界にきているのは明らかであった。それから韓国は、軍事政権国家から民主主義国家へと、急速に変わっていった。日韓関係は歴史が古いだけではなく、本来ならば価値観を共有する隣国同士の問題なのである。
その韓国となぜ、強固な友好親善関係を構築できないのか。竹島問題が直接のきっかけとなったが、この問題は以前から存在していた。従軍慰安婦問題も、かつてから存在していた。しかし、わが国と韓国は強固な友好親善関係を築いていた。それが一転、首脳会談が持てないようになったことを、安倍首相とそのお仲間は深く考えなければならない。
上記の問題(ウクライナ問題と日韓関係)の根っ子は同じである。価値観外交とは如何なるものであるか、ということである。価値観を共有していても、実際には、いろいろな問題が生じるものである。しかし、価値観を共有していない場合には、表面的には順調にいっていても、結局は、良好な二国間関係は築けないものである。価値観を共有するということは、もっと意味が深いのだと、日本人は知らなければならない。この問題は、このくらいにしておこう。この問題は、機会ある毎に述べたいと思っている。
最後に、マレーシア航空機問題に触れておきたい。問題の飛行機が言われているような海域で墜落したのは、たぶん事実なのであろう。そして、その飛行場に搭乗していた人々が残念ながら生存していないのも、事実なのであろう。ただ、その原因が全く明らかにされていないことが、最大の問題なのである。ボイスレコーダー等が発見されていなくても、マレーシア政府は、これに触れなければならないと、私は思っている。そうしないと、マレーシアは、せっかく築き上げてきた国際的信用を一挙に失うことになる。私が最も危惧しているのは、この点である。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。
PS 先週の出来事の中で、袴田事件の再審開始決定のニュースは極めて重大だった。これまでの再審による冤罪の被害者救済は、その多くが新刑事訴訟法がまだ定着していなかった時代の冤罪であった。しかし、足利事件、東電女子社員殺害事件等の冤罪事件は、新刑事訴訟法が当然とされている現在に発生した事件であった。わが国の犯罪捜査と刑事司法は、依然として前時代的ものを残していることを満天下に示し意味は大きい。刑事司法は、その国の“基本的人権”の成熟度を判断する最も重要なバロメーターでことを強く指摘しておきたい。