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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年9月18日 火曜日 (第82回)
テーマ
「契約書がない場合でも、代金の支払い請求は可能か?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日この時間は、「ごごばん!法律クリニック」。ラジオの前の、あなたの法律の問題について、お話を伺います。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年、白川勝彦弁護士です。今週も、宜しくお願い致します。 |
白川 | どうぞ、宜しくお願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 今日もご相談内容、早速参りましょう。匿名希望、45歳の男性の方からの、このメールです。 |
増山 | 私は、先代から引き継いだ小さな会社を営んでいます。付き合いがある会社は殆どが先代からのもので、長い間取引をさせていただいています。そんな状況の中、先日、ある会社に、これまで同様契約書を作成せずに、口約束だけで商品を売却し、代金の支払いを求めたところ、購入した覚えはないと言われてしまいました。正直、証明する契約書がないので頭を抱えている状態ですが、裁判などで代金の支払いを請求することはできるのでしょうか? |
上柳 | 長い間、口約束だけでお付き合いをしてきて、突然契約書というのも、なかなか言いにくいんでしょうかね。さて、どういたしましょうか、こういうケースというのは。 |
白川 | この方のご質問そのものは、あとで個別に答えたいと思うのですが、実は、私どもが裁判をやって、原告・被告に分かれて、色々やりとりする ─ 基本は、みんなこのことなんですね。 特に、日本人の場合は、こういうことが多いんですね。だから、契約そのものというのは、両当事者間で合意が成立すれば、契約は成立するわけですね。形式とか、そういうものは、特殊なものを除いては殆ど制限はありません。だから、どういう合意が当事者間に成立したか、と。 その時は、とにかく合意が成立しているんですよ、大体が、日本人の場合は。しかし、その合意が、ある人にとっては不利、ある人にとっては有利な場合、当然、『そんな合意は、した覚えがない』と、言いますよね。合意そのものが、そんな契約をした覚えはないという風になった場合、何を基準にして決めるか、と。 一番大事なことは、その時のどういう合意がなされたか ── それは、神のみぞ知る話で。じゃあ、争われた場合、こういう契約が成立したと。いや、そんな契約はしていない、こういう契約だったんだ、と。真っ向から対立することが、多いわけですね。そうした場合、何を基準にして決めるかというと、それは、証拠によるということですね。 だから、主張は主張として良いんだけど、『あなたが嘘を言っているとは思わない』と。しかし、『それを証明するための証拠は、どういうものがあるんですか?』と、いうことで争われるわけですね。 証拠があり、ぜんぜん争いがなければ、争いが起きないわけです。ですから、その証拠が何かということが、裁判を通じて最大限、どういう合意が成立していたかというのが、あらゆる裁判を通じて争われるわけです。 もちろん、どういう契約が成立したかというのは、何も、書類だけじゃありません。その時、第三者が『こういうことを聞いたよ』と。書類は何もないんだけど、立ち会っていた人が、こういう風に記憶しているよというのも、大事な証拠ですしね。 あるいは、口に言わなくても、全体の流れの中で、こうなんじゃないかという …… だから、証拠というのは書類だけじゃなく、何をもって証拠とするかは、裁判によって色々異なります。 そこで、日本人は、親しい間では契約書を、ちゃんと書類に残しておいて欲しいと。今回の場合なんかで、長い取引経過があるから、そんなことしなくたっていいじゃないかと言いがちなんだけど、やっぱり、何らかの…後日のために、メモ程度でもいいから、サインしておいてもらうということは、非常に大事な感じがしますね。 やっぱり、人の気持ちというのは、残念なんだけど変わるということなんですね。だから、その時にお互いどういう気持ちだったかというのは、契約書でなくてもいいから、名刺の裏に書いてもらうとかね。あるいは、メモ用紙にいついくら払うというようなことも含めて書いてもらうと、裁判の時に非常に有利です。 |
上柳 | 正式な書類じゃなくても、十分な証拠になるわけですね。 |
白川 | ただし、契約をするときによく、判子を押して出すということがありますね。いっぱい書いてあることが、多いんじゃないでしょうか … 細かいことが。そうすると、『俺は読まないけど、知らない間に判子を押したんだ』と言ったとしても、一応読んだ上で判子を押したとみなされるのが普通ですから。ですから、正直言って、物を買った時もかなり細かいことが書いてあると思うんですが。 分からないこともあると思うので、一般的な例としては、契約をする場合 ── 特に、相手が素人の場合は、契約書を見ても分からないことが多いから、『説明してよ』ということを求めることが一番いいんじゃないでしょうか。 例えば、保険契約書なんかでも、読んでも分からないんじゃないでしょうかね。 それで、今回の方のご質問に添えて言いますと、継続的な取引があった場合ですから、契約書なんかなくて、もちろんいいわけです。ですから、納品書とか、なんかがないといけないんじゃないでしょうか。納品書に受け取りのサインがあれば、そうすると、物が移ったということが分かりますね。 ただし、会社の中にいっぱいいるわけですから、会社の中の誰かが、会社の了解なしで自分の私用に使うために注文する場合もあるんだから、そういうことを含めて、揉めると思いますね。 ただ、この方がどんな商品を売却するかによると思うんですが、何十万とか何百万という商品を、売った・売らないというのは、普通大事なことですから、何か、契約書でなくても、かなりきちんとした書類を作るんじゃないでしょうか。 また、少々のことならば、長い付き合いで ── 例えば、ある社員が私用のために使っちゃったというのだって、それは、しょうがない場合もあるかもわかりません。そういうことを含めて、一番大事なことは、書類、あるいは書類でなくてもいいから、何か…… |
上柳 | 名刺の裏に、簡単に書くのでもいいから… |
白川 | そういうことですね。それが、一番大事だと思います。 |
上柳 | これは、ちゃんと証拠として使えるんだということですね。白川勝彦弁護士でした。どうも、ありがとうございました。 |
白川 | どうも、ありがとうございました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第82回 | TOP[t] | 第83回