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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年8月28日 火曜日 (第79回)
テーマ
「一度も返済してない借金で、債務整理は可能でしょうか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日この時間は、「ごごばん! 法律クリニック」。ラジオの前の、あなたの法律の問題について、お話を伺います。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年、おなじみ白川勝彦弁護士です。こんにちは。宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願いします。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | では早速、今日もご相談内容、紹介致しましょう。匿名希望、45歳の男性からのメールです。 |
増山 | 私は今、4つの金融会社から借り入れをしています。返済が厳しく、債務整理を検討しているのですが、中には、一度も返済をしていない金融会社もあります。以前、私のように一度も返済をしていない場合、計画的なんじゃないかと思われて、債務整理に支障をきたすと言われたことがあるのですが、本当でしょうか? そのような場合は、どうすればよいのでしょうか? |
上柳 | お金を借りて、一回も返済しないまま債務整理をする。貸している方から見れば、たまったもんじゃないですけど、返さなきゃしょうがないわけで。どうなりますかね? |
白川 | 支障をきたすかどうかということですが、それは、確かに支障となります。特に、破産の場合は、問題となるケースが大きいです。 しかし、債務整理ができないということはありませんので、まずは、弁護士さんと相談することが一番じゃないかと思います。 なぜかというと、真面目な人ほど、倒産だとか破産を決意する ─ なんとかしたいということで、最後の最後まで頑張るわけです。どっかからやっと借りて、とりあえず返済できるところはした、と。ところが、そこで万事休すしちゃって、行き詰ったと。だから、結果として一回も返していないというような場合は多々あることだし、それがまさに、普通なんです。ですから、一回も返してないから詐欺だとかなんて、言われません。 ただ、破産の場合一般的に問題になるのは、倒産すると。弁護士さんに頼んで破産の申し立てをするという意思を100%決めたのに、結果としては、借りて一回も返してない、と。だから、返す気が無いわけですね。破産をするということは、裁判所を通してゼロにしてもらうということでしょ。 あるいは、倒産して商売が成り立たなくなって、財産も何もないから返せない。だから、返す気が無いのに、そのことが分かれば、相手がお金を貸してくれないわけでしょ。ですから、詐欺ということになるわけですね。破産の場合なんかでも、それは破産詐欺といいまして、刑事告訴をされる場合もありますし、刑事告訴をされなくても、破産の申し立てをしても、債権者が異議を申し立てて、『うちの借金だけは、ゼロにしてもらっちゃ困ります』と、免責に対して異議を求める場合があります。 ただ、だいたい裁判所は、そういう確信犯的でない場合ならば、めったに債権者の言い分は認めませんけどね。これは、どういうことかというと、金融会社というのは、金利を頂いてくるのが仕事なんですね。それが、彼らの本業なんですよ。だから、ある面ではお金を借りてくれて、そして返済もする。返済もすると同時に、金利を払う。払ってもらっているということは、大事なお客様なんですよね。だから、一回も返してないといったら、元金も返してないことだから。 金融業者が一番大事にしているのは、金利なんです。結局、金利をもらっていない、と。だから、金利をもらうのがお客様なんだけど、一回も金利を払ってない、元金も払ってないから。金利を払って下さった方というのは、お客様なわけですから。商売的な取引をすれば、その中で返せないとか出てくる ─ どの商売でも同じですよね。だから、1年とか3年とか付き合っていたら、金融業者はあんまり文句を言わないんですけど。 ただ、破産の場合が特に問題だと言いましたが、任意整理の場合や個人再生の場合はどうかということなんですが…。 任意整理の場合は、金利はゼロで、もう勘弁してください、と。例えば、元金は払いますということでしたからね。ですから、元金は返すと言っているんだから、詐欺じゃないわけですね。ただ、金利をつけるのは勘弁して下さいよということですから。 ただ、さっき言った通り、自分たちの本業の金利を一回ももらっていないもんだから、普通なら、3年とか5年の長期分割にしてもらえるんだけど、さすがに一回も返していない場合は、それは勘弁して下さいよ、と。分割にしても、1年とか長くても2年くらいでと言われるのは、しょうがないですね。僕も、しょうがないと思っています。だから、中には一回でも二回でも返しておいた方がいいんじゃないか、と。それから債務整理をしますというケースもありますけど、最近は、僕もそういうことはしません。 結論としたら、一回や二回返しても、業者から見たら同じことですから。 |
上柳 | 誠意を見せたいというようなのは、あまり通用しない、と… |
白川 | そうはいっても、結局、『一回や二回返しても、あとは返さないでしょ』と、いうことになっちゃうわけですから。 詐欺だとは言われませんよ。ただ、長期分割には応じてもらえないということが多いですね。ある程度ちゃんとした所ならば、一生懸命やっているからそうなったんだということで、一回も返してない場合でも、『仕方がないですね、他の借金も返す都合で、そうなったんだ』ということで、3年間位の分割にしてもらえるケースも結構あります。 だから、意思の場合なんですね。最初から踏み倒すつもりだったのか、それとも、一生懸命頑張っていて、結果としてそうなったかという。 だから、人間見る時も同じじゃないですか。最初から私に迷惑かけようというのと、そんなつもりはなかったけど一生懸命やっていたけど、結果としては迷惑かけたというのは、人の受け取り方違うでしょ? そういうことなんですね。 |
上柳 | その辺の姿勢の問題というか、割と、情みたいなものも考えてくれるんですね。 |
白川 | 特に、任意整理の場合はそうですよね。あくまでも、当事者間の合意によって。 だから、その時によって、この人は真面目なんだけど、なんとか返そうと思って頑張ったんだけど、ここで一歩も止まっちゃって ── 特に、総量規制が始まった3分の1になってから、こういうケースがいっぱいありましたね。今は、さすがになくなりましたけどね。 個人再生の場合は、債権者も意見を申し立てることができますから。その場合は、個人再生に反対という意思表示ができますから、だから、あまり問題になることはないですね。 |
上柳 | あまり、一人で抱え込んで頑張るのもいいんだけども、やっぱりプロの方、弁護士さんに相談すると、色んな道があるぞということですね。 |
白川 | 結局、それに尽きるんです。餅は餅屋に任せてもらうしかないので。 |
上柳 | 絶望の底にいらっしゃる方も、一筋の光が見える可能性があるということですね。 今日も、御相談頂きましてありがとうございました。みなさんからも「ごごばん! 法律クリニック」、お便りをおよせください。 白川勝彦弁護士でした。どうも、ありがとうございました。 |
白川 | どうも、失礼しました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第78回 | TOP[t] | 第80回