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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2011年8月16日 火曜日 (第28回)
テーマ
「離婚する夫が自己破産 子供の養育費は請求出来るか?」
| 話者名 | 話の内容 |
|---|---|
| 上柳 | ラジオの前のあなたの「法律の問題」について、お話を伺う時間です。「ごごばん! 法律クリニック」。スタジオには、「白川勝彦法律事務所」白川勝彦弁護士です。宜しくお願い致します。 お盆休みは、なんかあったんですか? お取りになったんですか? |
| 白川 | 3日間ですが、故郷の新潟に帰って、先祖供養してまいりました。 |
| 話者名 | 話の内容 |
|---|---|
| 上柳 | そうですか。 それでは早速、今日の相談内容をご紹介いたしましょう。今日は、匿名の女性の方からの、このメールです。 |
| 増山 | いま、別居中の主人と離婚をすることを前提に話をしています。原因は、夫に借金があり、自己破産をするから、私や子供に迷惑をかけるということでした。夫が自己破産をした場合、子供の養育費に心配があるのですが、そんな主人に対しても、養育費の請求はできるのでしょうか。 |
| 上柳 | なかなか、また大変ですけどね……『離婚をする前提に話をしている』『ご主人には借金がある』『自己破産をするから、子供に迷惑をかけたくない』『奥さんに迷惑かけたくない』と。でも、養育費がもらえるのか。 ─ なかなか、逆さに振っても無い時は無いですけど … どうしましょうか、これ。 |
| 白川 | 義務があるかないかと、払えるか払えないか、これは別問題ですからね。 まず、他にも色々話したいことがあるんですが、質問だけに答えますと、仮に、自己破産をした場合、免責といいます ── 裁判官が『債務を払わないでいいですよ』というのを免責というんですが ─ その免責を受けたとしても、養育費の支払い義務は免責されません。支払う義務があります。 |
| 上柳 | 養育費は別なんですね。 |
| 白川 | よく、自己破産というのは借金をゼロにするという手続きだと言われますよね。正式には、裁判官が『この債務は払わなくてもいい』というのを免責と言うのですが、これは、免責するかどうかだけで手続きを一回設けるくらいですから大事なんですけども、破産の場合、免責を仮に受けたとしても、支払い義務がなくならない債務があります。ひとつは、税金とか… |
| 上柳 | 税金は払うんですね。 |
| 白川 | もちろん、もちろん。それから、健康保険料とか。 ああいうものは、仮に自己破産を申し立てて、裁判官が他の借金はいいよと言っても、それは免責の対象になりません。 それから、例えば交通事故を起こしたりした場合、罰金が残りますよね。その罰金ももちろん、破産したからといって、なくなるわけじゃありません。 それから、よく不貞行為に基づいて離婚した場合、当然慰謝料の問題なんかが出ますよね。その場合はどうでしょうか。慰謝料という債務ですよね。 |
| 堀 | それは免責にならないんじゃないですか? |
| 白川 | そうです。おっしゃる通りです。払わなきゃいけません。 一般論で言うと、不法行為に基づく損害賠償義務は原則としては免除されません。それから、特に故意による不法行為は免責になりません。 例えば、過失の場合ではどうなるかというと、過失の場合はいいんじゃないかというかもしれませんが、人の生命とか身体に関する損害賠償請求義務 ─ これも、なくなりません。 ですから、破産したからといって、あらゆる借金がなくなるわけじゃないんですね。そういうことを前提にして、子供さんの養育費の支払い義務がなくなるわけじゃないです。 ただ、この質問ね、もうちょっと大きな目で考えてみたいと思うんですが … 原因は結局『ご主人さんが借金がある』と。借金があるから、自己破産をしなきゃいけないと。自己破産をすると、子供さんや奥さんに迷惑かけるから、離婚したいということでしたよね。これ、主客転倒だと思うんです。 確かに、借金の悩みって重たいですよね。だから、借金があるために生活が乱れたり、色々、家庭生活がおかしくなるケースはよくあります。しかし、それは借金の悩みなんであって、それが解決すれば、家庭生活については、問題ない人の場合が多いと思うんですよ。 それで、自己破産というのはあくまで債務整理をする手法の一つなんですね。任意整理、それから個人再生。その二つでも、無理の場合は破産をして、債務全体をチャラにしてもらうのが自己破産ですから … ですから、主客転倒してるような気がするんです。 あくまでも、借金の苦しみを解決したいから自己破産をするわけですから。自己破産というのは、そのためにやるもんですから。 昔は、かなり … 破産をすると戸籍にその旨が書かれたりですね、選挙権がなくなったりということがありましたが、今はまったく、債務を整理する一手段にすぎないわけですから。そういう、債務に関する以外のほとんど障害というのがないと言ってもいいくらいじゃないでしょうか。 ですから、むしろ破産をして、借金の問題はきれいに解決して本来の生活に戻れば、それは、家族を大事にしたりすることだと思うんですよね。ですから、自己破産をしたら奥さんや子供に迷惑をかけるというのは、主客転倒してるということなんです。 ところが、多いんですよね … 例えば、奥さんなんかでありますけども、破産まで至らなくても、今抱えてる借金がバレて離婚させられちゃうというようなこともありますから。 しかし、僕はいつも言うのですが、たかが借金ですからね。 |
| 堀 | でも、『養育費の請求はできるのでしょうか?』と聞いてるってことは、離婚の意思があるってことですよね? |
| 白川 | だけど、それ以外が理由なら仕方が無いですよ。借金がある ─ 確かに重大な問題ですが、借金は、自己破産も一つの手で、法的に、そんなに大したことなく解決できるわけですから。僕は、古いと言われるかもわかりませんが、たかがお金のことぐらいで、結婚とか離婚とか、そういう重大問題を簡単に考えて欲しくないなという気はするんです。 |
| 上柳 | 別居中でなぜ、という理由は色々あるでしょうが、場合によってはもう一度、正式に話し合ってもいいのではないか、と… |
| 白川 | それから、破産の事でせっかく出たんだから、この際言っておきたいと思うのですが、本人自身の借金は、破産ということで免責されます。だけど、保証人とかそういうものは、この前も話したかと思いますが、本人の借金はゼロになっても、保証人の借金はゼロになるわけじゃありませんから。 ですから、この場合、もし奥さんが連帯保証人なんかしていたりしたら、その場合も、奥様もどうしても額が大きかったら、奥様自身も一緒に破産すればいいわけですから。 だから、破産したからって、決して名誉なことじゃありませんけども、対外的には、そんなに大きな障害があるわけじゃないんだから、お金のことで、人生の大事な結婚とか離婚を考えないで欲しいなと、私はいつも思ってるんです。 |
| 上柳 | そういうために弁護士さんがいらっしゃるんだな、と。 白川勝彦法律事務所の『借金の悩みは重い ─ 債務整理の三つの方法 マメ知識』なんて小冊子も、お作りになっていらっしゃいます。今週も、どうもありがとうございました。また来週、宜しくお願いします。 |
| 白川 | 宜しくお願いします。ありがとうございました。 |
| 増山 ・堀 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー / 堀ちえみ氏 = タレント曜日パートナー (文中敬称略) | 第27回 | TOP[t] | 第29回
