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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2011年8月9日 火曜日 (第27回)
テーマ
「浮気相手にも慰謝料請求は出来ますか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日は、ラジオの前のあなたの「法律の問題」についてお話をうかがいます。「ごごばん!法律クリニック」。スタジオには、「白川勝彦法律事務所」、所長、弁護士歴39年の白川勝彦弁護士です。お暑うございます。宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくお願いします。暑いですね… |
増山 ・堀 | 宜しくお願い致します。 |
話者名 | 話の内容 |
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白川 | いい天気ですね。これがないと、秋の実りは採れないですから。そう思うと、だいぶ気が楽になるんですよね。 |
上柳 | そうですね。雨も、おひさまも、全部必要があってという事だと思います。では早速、今日の相談内容を紹介いたしましょう。今日は練馬区にお住まい、匿名の女性からのメールです。 |
増山 | 私の友人がご主人の浮気を疑っていて、もしも浮気をしていたなら、すぐに別れると話しています。そして、もしそうなったら、ご主人からたっぷりと慰謝料をと言っていて、さらに浮気相手の女性からも慰謝料をとってやると、いきり立っています。私にはよくわからないのですが、ご主人はまだしも、浮気相手の女性からも慰謝料を取るなんてことができるのでしょうか?なんだか、二重取りみたいな感じもするんですが。 |
上柳 | 現実的には、疑っているという状況ではあるんですけども。慰謝料ね、ご主人と、そして浮気相手両方から。 |
堀 | 私の経験から言うと、慰謝料って相手が払わないって言っても、取れたら、途中で終わっちゃいますよね? |
白川 | もちろん、相手方に収入があれば、慰謝料の額を確定させて、給料で差し押さえされてるケースがいっぱいありますよ。 |
上柳 | 給料差し押さえですか!? |
白川 | もちろん。賠償義務は一つの債権ですから。 |
上柳 | 慰謝料というのは本当に色々、ケースバイケースということのようですけど。この件に関しては白川先生、どうですか? |
白川 | 最近、離婚とかの話があると思うんで、ちょっと根本から話してみようと思うんですよ。浮気とかっていうことは、よく言いますよね。 7年目の浮気でしたっけ?マリリンモンローの。あの映画観てないから分かりませんが、浮気なんか僕、結構知ってますね。本当の意味での浮気。「ちえみさん、いいな〜。素敵だな〜。」と。気ぐらいは、いくらでもあるんじゃないですか? ただ浮気自身は、それ自体、不貞行為とは言いません。離婚の原因になるような不貞行為とはいいません。 |
上柳 | 心の中で思うことぐらいでは。 |
白川 | ちえみさんが素敵だなと思って、お金ないのに100万円の時計を買ってやるとか。ウチの女房にバレても、時計を買ってあげただけなんだから、それは不貞行為とはいいません。ところで不貞行為、不貞の貞ってなんでしょう?不逞の輩の不逞じゃないですよね。不貞と言うのは、どういうことだと思いますか? 基本的には、貞操とか、貞節とか、その貞でない行為ということなんですね。 貞操というのを調べてきましたら「男女が交互に性的純潔を守ること。しかし女性の男性に対する純潔を言うことが多い」 ──貞操帯なんて、昔の十字軍の時にあったとかって話あるじゃないですか。あれなんか、明らかにそういうことですよね。 それから、貞節というのも広辞苑で引いてみたのですが「女子の操の正しいこと」と書いてあるんですがね。どうも、僕なんかも一応、そんな古い人間じゃないんですけど…男に貞操義務があるなんて、上柳さんは思いますか? |
上柳 | あんまり考えたことないですね。 |
堀 | そうなんだ! |
白川 | だけど、法律的に言う不貞行為というのは別に、女だけがおってる。 |
上柳 | 男女ともにあるんだよ、ということですよね。 |
白川 | 民法に貞操義務があるんなんて書いてないんですよ。あくまでも法律にあるのは「夫婦はお互いに協力し、扶助しなければならない」 ─ 貞節義務を守らなければならないとは書いてない。 ただ、離婚は「配偶者に不貞な行為があった時は、裁判所に提起を訴えることが出来る」という裏返しとして、夫婦には貞操義務がそれぞれあります、という解釈が出来るんですね。 さっき言った通り、あくまでも不貞行為というのは、男女の性的関係を言うわけであって、プラトニックラブだとか単なる思いだとか、そういうことは入らないわけで……という風に、まずは分かりましたか? 男女の性的な関係というから、不貞行為というのは一人では出来ないわけですね。だから、不貞行為というのはそもそも、二人の男女がある人に対して行ういけないことであり、同時に、非常に精神的にも大きなダメージを与えたりしますから。そういういけないことをした場合は、損害を被らせたわけだから、二人で共同して不法行為を行ったと。したがって二人が共に被害をこうむった ─ 精神的な損害を受けた人…例えば、不貞行為を知っただけで離婚をしなくても、一方は精神的ダメージもすごく大きいじゃないですか。それは二人でやったんだから、二人とも、その人に対して損害賠償義務がありますよ、と。 慰謝料というのは、損害賠償義務のことですから。ただ、正式には不貞行為自身が「共同不貞行為」。二人でやって初めてできる行為だから。「一人だけでは出来ない行為」だから、二人で、ある人に損害した場合は、不法行為を行った二人が共に賠償義務があるというのは、一般の不法行為でも同じですよね。 |
上柳 | じゃあ、浮気相手の女性に対しても、請求する権利はある、と。なるほどね。 |
白川 | だから、二重取りになるとかあるじゃないですか。二重取りじゃないんですね。私は、不貞行為をされてすごく傷ついた、と。それがいくらかは別ですよ。それは夫に対しても、そして、その相手である女性に対しても当然払って下さいと。 |
上柳 | その二人がいなければ、不貞行為はないわけだから。 |
堀 | これ、逆のパターンだったらどうなるんですか? |
白川 | 逆パターンというのは? |
堀 | 奥さんが他の人と浮気した場合も、両方に請求できるとか。 |
白川 | 同じです。それから、時間も押しているようなので……不貞行為に基づく慰謝料と、不貞行為が原因で離婚してしまったと。離婚するというのは、大きな、色んな意味での精神的なダメージ、経済的ダメージも大きいじゃないですか。それはまた、離婚に対する慰謝料ですよね。それもあるということです。 簡単に申し上げますと、色々難しいんだけども、世の男性や女性が考えているほど、慰謝料って高額ではないということは、まず頭に入れておいてください。 それから、たんまりと取ってやると最初の文面にありましたけども、しかし、不貞行為に至るには、やっぱり夫婦間になんか問題があるから。だから、たっぷり取ってやるとか考えるよりも、そうならないように努力するのが、一番大事なんじゃないでしょうか。 |
上柳 | お時間でございます。白川弁護士、ありがとうございました。 |
白川 | どうも。 |
増山 ・堀 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏 = ニッポン放送アナウンサー / 堀ちえみ氏 = タレント曜日パートナー (文中敬称略) | 第26回 | TOP[t] | 第28回