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“大権”行使の責任。

08年10月27日

No.973

今週はこれからの日本を占う上で重要な週になるであろう。まず株価がどうなるかだ。先週末のニューヨーク株式市場は大幅な下落で終わった。いつものパターンでいえば、今日の東京市場は値上りでなければならない。もし株価が上昇しないようだと株式市場は大変になるのではないか。いま始まったばかりの東京株式市場では、日経平均株価は7552円でバブル以降の最安値を更新した(2008年10月27日午前9時05分現在)。これは日本だけに留まらないと思う。

もうひとつは、解散総選挙に関する与野党の動向である。麻生首相は北京で「政局よりも国際的な金融危機にどういう役割を果たすかを考えなければならない局面である」という趣旨の発言をした。いつ解散総選挙をやれば自公“合体”政権が勝てるのかというのは、政局である。いちばん政局なパフォーマンスを行ってきたのは麻生首相自身その人ではなかったか。“よく言うよ”と思う。解散総選挙をいちばん急いでいたのが公明党であった。民主党もなぜか解散総選挙を急いでいる。この両者には何らかの関連があるのだろうか?

衆議院の解散を決めるのは時の政権である。時の内閣である。内閣総理大臣は全大臣の罷免権をもっているので、首相が解散を決断すればいつでもできる。総理大臣の“大権”といわれる所以である。確かに解散は総理大臣の大権の行使だが、決して無責任ではない。その行使には責任が伴う。まず解散の後に行われる総選挙で総理大臣は責任が問われる。総選挙で敗北すれば、衆議院で首相には再任されないのである。

仮に総選挙で首相に再任される議席を獲得したとしても、与党内で責任を追及されれば総理大臣候補に指名されないこともあり得る。だから総理大臣は与党と密接に連携しながら解散の時期を探るのである。与党内の反対論を押し切って解散総選挙に踏み切ったのは、私が知っている時代では大平首相と小泉首相の二人だけである。共に結果は上首尾だったが、大平首相は総選挙中に死亡した。小泉首相の大権の行使は、それだけを捉えると見事といわざるを得ない。“敵ながら天晴れだった”とだけ言っておく。

麻生首相が解散を逡巡しているという。それは自民党が行った世論調査の結果が自民党にとって好ましいものではなかったからだという説が一般に流布されている。民主党が解散総選挙を急ぐのは、民主党が“極秘に”行った世論調査で好ましい結果が出たからだという説が専らである。民主党ならばやりそうなことだが、自民党についていえば普通そんな馬鹿なことはやらない。世論調査は昔に比べれば安くなったが、それでも1選挙区の調査に200万円位は必要である。200万円×300選挙区で6億円だ。そんなお金があったら選挙対策費に使うのがプロである。

少なくとも私が総務局長の時、300小選挙区の全部の世論調査など行わなかった。しかし、私はどの報道機関よりも正確に300選挙区の選挙情勢を掴んでいた。それが選挙の実務上の責任者である総務局長の仕事であると考えていたからである。私はいろいろなルートを通じ常に300選挙区の選挙情勢を収拾し、分析していた。自慢ではないが平成8年10月の総選挙の予想は、小選挙区で3つ間違っただけである。それも当選など予想もしていなかった候補者の当選という嬉しい誤算であった。

閑話休題。別に自慢話をしたいのではない。どのような過程を通じて解散総選挙に至るかが重要なのである。解散という大権の行使そのものが、きわめて大きな政治的パフォーマンスなのである。当然のことながらそのパフォーマンスの良否は、総選挙にもろに影響する。麻生首相は総裁選の時からそのパフォーマンスに失敗してしまったのである。私に言わせれば、現在も毎日そのパフォーマンスに失敗している。それに気が付かないようならば、よほどの政治音痴である。

解散の日などいつでも好い。そんなことは政治的に重要な意味がない。ここまできたらもう五十歩百歩だ。解散に至る過程、解散に追い込む過程が重要なのである。その重要なパフォーマンス・駆け引きが見られるのがこの10日間である。これは政局などという単純なものではない。政治のあり方、政治的な価値観が現れる重要事である。最近では自民党の中でもこの永田町徒然草が読まれているという。あまりストレートには書けない。敵に塩を送るようなことを書くのは私の本意ではない。私は政治評論家でないのだ。だから、眼光を紙背に徹して私の言いたいことを読み取って欲しい。

それでは、また。

  • 08年10月27日 09時32分AM 掲載
  • 分類: 2.国内政治

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