冷徹かつ冷厳な数値
08年10月08日
No. 954
3人の日本人学者が、ノーベル物理学賞を受賞した。昭和24年湯川秀樹博士がノーベル物理学賞を受賞したことは、子供であった私たちにとってもひとつの誇りだった。“頭が良い”とは、数学や物理に強いことだという観念が私にはある。湯川博士が日本人ではじめてノーベル賞を受賞したことが大きく影響しているような気がする。
政治や選挙でも、数学は大切である。世論調査の基本は、数学である。確率論である。確率は、私たちの高校時代数学Ⅲで勉強させられた。数学Ⅱまで私は数学もけっこう強かった。しかし、数学Ⅲから急に弱くなった。受験科目でなかったこともあるが、どうもそれだけではないようだ。私は数学的思考がどうも苦手のようだ。だから、詳しい理屈・理論は分からないのだが、世論調査を分析する理論を私は単純に信用している。
麻生内閣の誕生に伴い、いろいろなところの世論調査の結果が報道されている。この永田町徒然草では、『朝日新聞』の世論調査の数値を基に世論を分析してきた。ある動向を予測する場合、同じ条件で行った世論調査を比較検討することが大切である。選挙の世論調査では、調査の曜日・手法(電話or面接)・質問項目などが“条件”である。普通の人が重視するサンプル数は、それほど重要な条件ではないのだ。
朝日新聞社は、これから“総選挙連続世論調査”をやってくれるらしい。朝日新聞社は、東京都知事選と参議院選挙で連続世論調査をやってくれた。これは非常にありがたいものであった。永田町徒然草では、この総選挙連続世論調査の数値を基に世論を分析することにする。連続世論調査の第1回は、10月4・5日(土日)の調査だという。これから一定の間隔でやってくれるのだろう。それはそれでよい。
しかし、問題は10月6・7日に発表された第1回の世論調査をどう評価するかである。『朝日新聞』の記事では、9月24・25日に行った世論調査を前回調査とし、その数値と第1回の数値を比較検討している。それはあまり意味があるとは思えない。条件が違うからである。朝日新聞社が毎月行っていた世論調査と比較した方が良いと私は思う。
同社が毎月行っていた世論調査では、7月12・13日(土日)に実施した数値が最後である。8月と9月のデータは手元にない。8月は内閣改造の直後だったし、9月はど派手な総裁選の真っ最中であった。仮にあったとしてもあまり意味がないと思う。やはり7月の数値と今回の数値を比較検討した方が良いと思う。もちろん福田首相が麻生首相に替わったし、かつ麻生内閣誕生直後であることを考慮しなければならない。
まず内閣支持率を見てみよう。
- 福田・麻生内閣の支持率25→19→23→24%‥‥‥41%
- 福田・麻生内閣の不支持率60→65→59→58%‥‥‥42%
前者が福田内閣であり、最後の数値が麻生内閣誕生直後である。内閣支持率というのは、かなりいい加減なものだというのが私の考えである。その時々の風向きで大きく変化する。
次は私が最も重視している政党支持率である。
- 自民党支持率26→22→22→26%‥‥‥33%
- 民主党支持率22→26→22→24%‥‥‥23%
- 支持政党なし41→38→41→40%‥‥‥31%
今回からは他の政党の支持率も挙げる。特に注目していなかったので共産党・社民党・国民新党・新党日本の数値が手元にない。共産党のX%は念のため調べてみるが、他の政党の数値は以下で間違いない。
- 公明党支持率4→3→4→2%‥‥‥4%
- 共産党支持率X→X→X→X%‥‥‥2%
- 社民党支持率1→1→1→1%‥‥‥1%
- 国民新党等の支持率0→0→0→0%‥‥‥0%
第1回世論調査はいろいろな質問をしているが、基本的には以上の三つの数値が重要である。内閣支持率は、福田首相が麻生首相に替わったのであるから、連続してみるのは慎重にしなければならない。しかし、自公“合体”政権の内閣であることに変わりはない。福田首相の無責任な政権投げ出しに対する批判、ど派手な自民党総裁選、麻生内閣の誕生などいろいろなことがあった2ヶ月半であった。その結果が、支持41%不支持42%なのである。1%だが不支持が支持を上回っていることに、自信過剰な麻生首相は不吉な予感をもったのではないか・・・。
私が世論調査を見るときに、いちばん重視するのが政党支持率である。今回からは公明党以下の数値も記載することにする。自公“合体”体制で選挙に臨む訳であるから、自民党支持率+公明党支持率=“特殊自民党支持率”と考えた方がよい。特殊民主党支持率ということも考えられないこともないが、今回はこれについて触れない。特殊自民党支持率は26%→37%と11ポイントも増加している。「支持政党なし」が40%→31%と9ポイントも減少している。
世論調査にはいろいろな質問項目があるが、選挙行動を予測する上で最も基本的要素は政党支持率である。上記世論調査の数値をみる限り、民主党を中心とする野党に有利な要素は見当たらない。それなのにマスコミや週刊誌などが民主党有利と予測するのだろうか。民主党はどうして解散総選挙を急いでいるのだろうか。解散を決めるのは自公“合体”政権である。その日まで有利な情勢を作るために国会で自公“合体”政権を徹底的に追い込むこと、そして各選挙区の地道な活動が必要だと私は思うのだが・・・。
それでは、また。