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暫定税率は即日公布・施行!?

08年04月24日

No.782

今日のは長い。だが内容は単純なので最後まで読んで欲しい。昨日の永田町徒然草No.721「ガソリンはいつから上がるの?」で私は素朴な質問をした。私には私なりの考えはある。しかし、私は無位無官の一市井人でしかない。そんな私の考えどおりにならなくても仕方ない。だが実際にどのようになるのか知りたかったし、これだけガソリン税の暫定税率の問題にお付合いいただいた読者に実際にどうなるのかお知らせしたいと思い調べることにした。

この安値、いつなくなるの??

本来ならば財務省主税局税制第二課(消費税、たばこ税、酒税、揮発油税といった間接国税に関する制度の企画・立案を担当しているところ)に聴くのが本筋なのだが、政府の言い分を聴くことである。彼らがいうことは、税を取る立場からできるだけ政府に有利なことをいうに決まっている。それに彼らがいうことはだいたい想像できる。そんな者のいうことを聴いても仕方ないと私は思った。

そこで知り合いの新聞記者に電話をしてみた。「いま巷間いわれているように与党が4月30日に租税特別措置法改正案を再可決した場合、一体いつから暫定税率はガソリンや軽油に課せられるの?」と尋ねたところ、「それは再可決の日からじゃないですか」という。「そうすると4月30日ということになるの?法律は国会で可決され成立しても公布されなければ施行できないんだよ」と聴くと「そんな専門的なことは知らないのです。調べてみます」と答えた。「大事なことだから調べてみてよ」といって私は電話を切った。

次に共産党に電話することにした。こういう問題は共産党がいちばん厳しい筈だと考えたからである。共産党本部に電話し広報に回して欲しいと頼んだ。“国民の声”というところに電話は回された。「4月30日に与党が租税特別措置法改正案を再可決した場合、ガソリンはいつから上がるのでしょうか。教えて欲しいのですが」と尋ねたところ、「そういう問題は国会の調査局(名称は自信がない)がありますので、そちらに聴いて下さい」と答え、電話番号を教えてくれた。そこで教えてもらった電話番号に電話した。同じような質問をしたところ、「再可決の日からじゃないですか」との答えが返ってきた。

「私は弁護士の白川勝彦というものですけど、法律は公布されなければ施行できないのではないですか。4月30日に再可決したとしてもなぜその日のうちに公布され施行されることになるのでしょうか」と質問すると、「白川勝彦さん。存じております。ちょっと調べてみますので時間を下さい」とのことであった。「それでは調べて下さい」といって私の電話番号を伝えて電話を切った。

次に民主党本部に電話をした。広報に繋いでもらい、同じような質問をしたら「それならば、国会に政務調査局(名称には自信がない)がありますのでそちらの方に聴いてください」との答えであった。そこで国会に電話をして「民主党の政調をお願いします」というと電話は直ぐ繋がった。そこで私は同じような質問をした。そうすると同じような答えであった。すなわち「再可決の日からです」というのである。

「どうして再可決の日からなのでしょうか」と尋ねると「政府は即日公布・施行といっておりますから、再可決の日から施行されことになると思います」というのである。私は「しかし、公布には一定の手続きがあるので即日公布・施行という訳にはいかないのではないでしょうか」と重ねて尋ねると「どういうご趣旨の質問なのでしょうか」と答える。

「私はガソリンや軽油が実際いつから値上げになるのか知りたいので、お尋ねしているのです。法律が国会で可決・成立しても、公布されなければ実際には施行できないのではないでしょうか。だから4月30日に再可決されても、その日から施行する訳にはいかないと思うのですが」と重ねて尋ねると「政府は即日公布・施行といっているのです。そういう前例もあるのです」と力強く答えるのである

「本当にそれで良いのでしょうか」と重ねて尋ねると「政府はそういっています。法制局長官のそのような答弁もあります。だから再可決の日が公布・施行の日ということになり、その日から暫定税率が課せられることになると思います。いったいどのようなご趣旨の質問なのでしょうか」と重ねて答えるのである。「民主党はそれでよいと考えているのでしょうか」とさらに尋ねたところ、「ちょっと電話が入ったので」と電話の声は途切れた。まぁ、待っていても良かったのだが、これ以上話してもあまり得るところがないと思ったので私は電話を切った。

暫くすると先ほどの共産党の人から電話が入った。「やはり再可決の日か翌日からだと思います。政府は即日公布・施行といっておりますから、そういうことになると思います」との答えであった。「再可決したその日に閣議決定して、天皇陛下から御名御璽をいただいて、独立行政法人国立印刷局が官報に掲載しこれが霞ヶ関の政府刊行物サービス・センターにおかれた時に公布となりますから、即日公布・施行はできると政府はいうのです」との答えであった。「私はそんなことは知っていますが、そんな通例でない公布は許されるのでしょうか。そのことを聴きたかったのです」と尋ねると、「政府がそういっているのであり、それがいいと私たちが思っている訳ではありません」との答えが返ってきた。私はそれ以上尋ねるのを止めることにした。

まぁ、大雑把にいうとこういう事であった。やりとりの言葉の多少の違いは勘弁してもらいたい。私が聴きたかったのは政府の言い分ではない。彼らのいうことはだいたい想像できる。だから財務省主税局には最初から電話を入れなかったのだ。私が民主党や共産党に訊きたかったことは、「再可決の日から施行される」と主張する政府の考えに民主党や共産党がどう考えているのかを知りたかっただ。少なくとも以上のような答えをするようでは、ガソリンや軽油に暫定税率が実際に課せられるのを一日でも遅らせようとする雰囲気は感じられなかった。民主党からは「どういうご趣旨の質問なのでしょうか」と2度もいわれた。私の質問の意図がまったく理解できないのであろう。

国会は戦いの場である。学問的な議論をするところではない。法制局長官が45年も前に答弁したことを金科玉条のように扱うことはできないであろう。しかも法制局長官の答弁は国税通則法案という手続法に関する答弁なのであって、税法そのものに関するものではない。刑罰法規が遡及できないないことは憲法が定めている。税を課すとことも同じように厳格に考えなければならないと多くの人々は考えている。

そうすると税を課す場合、始期と終期を定めることは慎重でなければならない筈だ。租税特別措置法改正案が4月30日に再可決されることは多くの国民が知ってはいるが、その場合その施行日(すなわち暫定税率がガソリンや軽油に現実に課せられる日)が○月○日になるのか、ほとんどの国民は確とは知らないであろう。法律を知っている者すなわちリーガルマインドをもっている者ならば、新たな税負担を求める税法を即日公布・施行することは乱暴であると考える筈である。

社民党や国民新党には電話をしなかったが、野党に必要なのは国民の利益を守ろうという決意である。道路特定財源の暫定税率が復活すれば、国民から1日につき約100億円近くの税金が取られるのである。しかも国民の60%以上が再可決による道路特定財源の暫定税率の復活に反対しているのである。そうだとしたら1日でも不条理な施行を遅らせることは正義である。そのために戦うことは“権利のための闘争”である。この問題意識のない人といくら話しても時間の無駄である。私は少しでも問題意識をもっている者に働きかけることにした。だいたい理解してもらったが、それを国会の場で使ってくれるのか注目している・・・。

多くの国民がガソリンや軽油が○月○日から値上がりするのか本当に知りたいのだ。1日でも延ばしてもらいたいのだが、それがダメならばせめて実際に○月○日から暫定税率が課せられることになるのか正確に教えてもらいたいのである。そうしないと暫定税率が課せられない安いガソリンをいつ仕入れたらよいのか、いつ買ったら良いのか分からない。「政府が即日公布・施行といってるのだから、再可決の日と想定される4月30日(もしくは翌日の5月1日)でしょう」というのでは、「“政府がこの日だといった日がそうだ”」というのと同じではないだろうか。“なんだか江戸時代に戻ったような気がする”との昨日の慨嘆は、誇張ではないようである。本当にそんなことでよいのか?

それでは、また。

  • 08年04月24日 05時14分AM 掲載
  • 分類: 2.国内政治

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