典型的な世論誘導記事
06年12月07日
No.269
年末の税制改正・予算編成に向けて、道路特定財源の一般財源化がいま政府と与党の間で大きな問題になっている。政府としては今週中に決着をつけたいようである。道路特定財源の一般財源化については、永田町徒然草No.253で述べたので、私の意見は繰り返さない。問題はマスコミや与党の対応である。ちょっと、いい加減にしてくれといいたくなる。
貼り付けたのは、2006年12月5日の朝日新聞である。永田町徒然草No.253で紹介したように、朝日新聞は道路特定財源を一般財源化せよという立場である。その立場から道路特定財源を一般財源化することを「道路財源改革」と表現している。道路特定財源の一般財源化に反対している「強硬与党へ妥協の気配」を見せている安倍首相は、いま「剣が峰」に立っているよといいたいのだろう。道路特定財源の最大の税目である揮発油税に切り込む法改正をするかどうか「カギ」と読める。本文を読むと朝日新聞の主張は何も書いていないのだが、見出し小見出しをみると朝日新聞の主張そのものである。朝日新聞の主張がどうであったも構わないが、新聞の記事作りくらいは普通にやってもらいたいものだ。これは明らかな世論誘導記事ではないか。ハッキリいってこういうことはまことに宜しくない。「朝日よ、お前もか」といいたくなる。
一方与党に方は、これも十年一日の議論を展開している。道路は必要だ、地方切捨てになる。地方はまだまだ道路を作ることを要望している。確かに必要な道路は、都会にも地方にもある。しかし、そのためにいくら税金をとっても構わないと国民は本当に思っているのだろうか。ガソリン等の負担にいちばん苦しんでいるのは、地方の人々ではないのか。ガソリンなどは安くなるが、その代わり道路整備のペースはいまよりちょっと落ちるがそれでいいかと問えば、おおかたの地方の人々はそれが良いというと私は思っている。肝心要のこのことをどうして誰も主張しないのか、私にはそのところが理解できない。国土交通省の官僚が怖いのだ。他の公共事業が減少される中、道路建設で糊口をしのいでいる建設業界の反発が怖いのだろう。朝日新聞は、いつもあの朝日がといわれているものだから、たまには政府のいうことに賛成しておこうということか。
私が道路特定財源にこだわるのは、税と国民との関係を大切にしたいからである。莫大な借金と少子高齢化で、わが国はこれから国民の税負担を多くしなければやっていけなくなると思う。多くの国民が老後の頼りとしている年金もそうしないと維持できなくなるかもしれない。そういうことを近い将来やらなければならないのであるから、税とサービスとの関係を明確にしておくことがいま大切なのだ。必要がなくなった、あるいは今ほど必要がなくなった税金は廃止または減税する。その代わり必要な税金は国民の理解を得ていただく――こういう健全な緊張感がある税制度を作らなければならないのだ。そしなければわが国はいずれ立ち行かなくなる。その試金石が道路特定財源なのだ。額が大きいので減税の実感も感じてもらえる。
「損して得をとる」ことを日常茶飯事に実行している普通の商売人の感覚がまったくないのだ。こういう感覚のない政治家やマスコミがいう「民営化」なんて信用しない方がいい。また増税なんて簡単にできるもんじゃないというのは、実は国民を馬鹿にした考え方なのである。平成8年の総選挙の時、新進党は消費税3%を据え置くといったのに対して、自民党は消費税5%を主張して戦い勝ったのだ。平成2年の消費税選挙で私は落選したが、消費税導入に際して非常に高い物品税を廃止したことは消費税の理解を得る大きな主張になった。わが国の国民を馬鹿にしてはならない。遅れているのは、増税イコール国民は反対するという固定観念なのだ。国民を信頼できない古い政党や政治家の考えなのだ。そうした古い考えで、3兆円もの税金をいろいろな理由をつけてかすめ取ろうとしている安倍首相は、お世辞にも若いリーダーなどとは呼べない。「改革」などという言葉をみだりに口にして欲しくない。
※この際道路特定財源について勉強してみたい人がいたら、これを読んだらいいと思う。
それでは、また。