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総括・小泉純一郎(その4)

07年04月04日

No.385

族議員を抵抗勢力とみなして、これと闘うという構図を作って改革を演出した小泉前首相は、実はもっとも悪しき意味における“大蔵族”議員であることをこれまでに何度か書いてきた。今日は別の角度から、小泉純一郎を総括する。小泉氏の最大の改革は、郵政民営化であった。その主張はきわめて具体的だが、なぜ郵政民営化が改革の本丸なのだろうか。このことを分析すると、小泉氏は何らの理想や理念もない政治家だったということがよく判る。

わが国の政治にとって、官僚政治を克服することは戦後のもっとも大きな課題である。官僚政治とは、わが国の政策のほとんどが官僚たちによって進められてきたことである。わが国に政策力をもつ政党や政治家が育っていない場合は、それも仕方がないことである。しかし、国民主権が憲法で明確に規定され、多くの政党が生まれて、曲がりなりにも政党政治の体をなしてからすでに半世紀余が過ぎた。

官僚の企画・立案する行政が、官僚のための行政となることは避けることのできない現象である。実際に行政を動かす官僚や官僚機構を国民の代表がコントロールすること、それができなくてもせめて官僚による官僚のための行政をチェックすることを、国民は求めている。細かい理屈は分らなくても、国民はその実態を知っているし、その改革を望んでいることは確かだ。

小泉氏が行政改革の本丸とした郵政民営化は、このような行政改革からみたら、国民の期待に沿うものだったのだろうか。小泉氏がタブーへの挑戦とした郵政民営化や道路特定財源の一般財源化は、以前から大蔵省(現財務省)が執拗に狙っていたことである。政府系金融機関の一元化や郵貯・簡保の民営化は、金融機関の支配を望んでいる大蔵省にとって悲願であった。大蔵省の悲願ではあっても、少なくとも国民の悲願ではなかった。道路公団の民営化や特別会計の整理・廃止は、わが国の行政をすべて掌握しようという大蔵省のあくなき権限増殖から出ているものである。

逆説的にいえば、官僚による官僚のための行政機構の頂点に君臨しているのが、大蔵省であったし名前は変わっても財務省である。このことは、単純な事実であるし、このことを否定する者はまずいないであろう。そうだとしたら、行政改革を本気でやろうとした場合、財務省と対決し、財務省の不当な権限や振舞いを是正しなければならないことは理の当然のことである。しかし、肝心の小泉氏は典型的な大蔵族である。何らの哲学や理念もない小泉氏は大蔵省・財務省のいうことがこの世でいちばん正しいと思っている政治家なである。小泉氏にとって財務省は“聖域”なのである。小泉氏のいう「聖域なき改革」は、彼にとっての“聖域”である財務省を守るための改革であったのだ。

改革という言葉を多用したからといって、理想や理念があるというものではない。あのヒットラーのナチスの正式名称は、国家社会主義ドイツ労働者党であった。ナチスが行ったことが社会主義や労働者党と無縁だったことを考えればこのことは明らかであろう。小泉氏が掲げた「構造改革」や「聖域なき改革」は、理想や理念を追求しているようであるが、実は検証不能なスローガンを標榜しているの過ぎないのだ。検証不能な言葉の羅列こそ、近代自由主義がもっとも嫌うことである。小泉氏は改革政権を装っていたが、改革なるものの実態は明確ではなかったし、検証も批判もできないものだった。それは近代政党が避けなければならないことであると同時にその本旨に悖(もと)る行為なのである。

人間がお互いに証明することができる言葉や事実を使いながら具体的に改革をいうのでなければ、その改革は無意味であるだけでなく危険でもある。改革という言葉自体は誰も否定できないし、改革というスローガンは理想や理念をもっているように見えるからである。小泉氏はどのような国家や社会を実現したいのかを最後まで明らかにすることなく、荒廃した現実だけを残して退場した。実現しようとする国家や社会の具体像を示すことができなかったということは、小泉氏に何らの理想や理念がなかったという証左なのである。

それでは、また明日。

  • 07年04月04日 01時14分AM 掲載
  • 分類: 2.国内政治

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