日本国民はサルか ?
14年11月24日
No.1709
今回の解散の直接的な切っ掛けは、消費税10%を延期することだった。税制の重要な変更であるから、国民の信を問うことにしたと安倍首相は説明し、「代表なくして課税なし」とか「民主党は、国民の信を問うことなく消費税を上げたから敗北したのだ」などと、一人前に能書きをたれている。この能書きを聞いて、私は“朝三暮四”という懐かしい故事を思い出した。安倍首相は、日本国民などサルだと思っているのだろう。国民も舐められたものだ。さぁ、どうする。国民の皆さん?
今年の4月から実施された8%の消費税は、自民党・公明党・民主党の談合によるものだった。談合に参加した自民党・公明党・民主党は、先の総選挙で過半数をはるかに超えたので、消費税8%は法律に定めた通り実施された。しかし、その影響は、談合した3党が考えたほど甘くはなかった。平成27年10月から消費税を10%に増税できるような状況では、到底ないことがハッキリした。談合で作った増税法案には、景気弾力条項があり、これに基づいて延期するというのだ。
景気弾力条項に基づいて、消費税を10%にする実施時期を延ばす場合、それは法律上、当然に定まるものではない。“当面の間、延期する”と定め、消費税を事実上8%に凍結することだってできるのだ。それを安倍首相は、“何があっても、平成29年4月から消費税を10%にする”と言っているのだ。「消費税を10%にするのは1年半延ばしますが、その代わり今度は絶対に10%にしますからね。それで良いですよね」といっているのである。
自公“合体”政権は、「平成29年4月から、絶対に10%にする。その際に、軽減税率を導入する。その詳細は、自民党と公明党でこれから決める。」ともいっている。ところで、食料品などの生活必需品にかかる消費税の税率をどのくらい軽減するのかと問えば、「それは、8%に決まっているでしょう」だ。“たった2%しか軽減”しないのに、弱者にやさしい消費税にしてやると、恩を売ろうというのだ。その根性が嫌らしい。
私は、消費税の導入に賛成した国会議員のひとりだ。3%の消費税を導入するのに、私たちは10年間、侃々諤々の議論を積み重ねて、漸く導入に踏み切った。これを実施したのは、平成元年4月からだった。この間、いくつも選挙があり、自民党は多くの犠牲を払ってきた。。平成2年の総選挙では、私は落選した。平成6年11月に消費税を5%にすると決めたのは、村山内閣の時であった。それが実施されたのは、平成9年4月橋本内閣の時でだ。平成8年に行われた小選挙区制で初めての総選挙では、新進党などは消費税3%凍結を公約に掲げたが、結果は、自民党の勝利であった。
消費税導入までに、約10年。消費税3%を5%にするのには、8年を要しているのだ。消費税を絶対に上げるなとは言わないが、5%の消費税を10%にすること自体が、政治的にはそもそも無茶なのである。政治的なセンスがある者ならば、5%からまず7%と考えるであろう。それだって、多くの犠牲を払わずには実現できない。8%から10%にするためには、これまた10年近くが必要であろう。自民党・公明党・民主党は、2年前の平成24年6月に、“平成27年10月までに消費税を10%”にしようと考え、談合でこれを決めた。民主党などは、そのために吹っ飛んでしまった。政治的には、馬鹿としか言いようがない。
平成26年4月に実施した8%の消費税を10%にするには、最低でも10年近くの年月が必要なのである。それを、安倍首相は平成29年4月から実施するというのだ。これまでの消費税の歴史から見ても、それは早過ぎる。何が何でも税金を取りたい財務省から見たら、1年半10%の消費税を延ばしてみても、5年以上のおつりがくるのだ。“たった2%の軽減税率”など、公明党対策と思えば、安いものである。
少し細かくなったが、私が“朝三暮四”というのが、分かって頂けたであろうか。朝三暮四というのも、久しぶりに聞いた方がいるかもしれないので、念のため末尾に紹介しておく。要するに、バカな者をだます手口をいうのだ。自公“合体”政権のやり口はいつもこういうものが多い。日本国民を猿扱いしているのだ。ここで騙されちゃあいけない。いつも問題にしている、“文化”の問題である。
※ 朝三暮四(ちょうさんぼし)
狙公が猿を飼っていた。トチの実を猿たちに与えてやるのに、けさは三つの実をやる。そのかわり晩には四つだ、といったところ、猿たちはみなおこった。そこで、それでは朝に四つやる。かわりに晩には三つにするぞといったところ、猿はみな喜んだという。
朝三暮四、つまり結局は同じことであるのに、それがわからない。このように目の前の多寡で考えるのが猿知恵であるが、人間の愚かさもこれに似ている。
諸橋轍次著 『中国古典名言事典』
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。