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安倍モノのはかなさ

13年04月06日

No.1565

この週末は、強い低気圧の影響で、日本各地は大荒れのようである。東京では、まだ荒れてはいないが、これから大荒れになるという。最近よく、台風並みの低気圧の襲来がある。昔はあまり聞かなかった話だ。そもそも、台風も低気圧の塊だ。地球環境がもっと壊れると、数百年後には、台風という言葉も消えてしまうかもしれない(笑)。とにかく、地球環境は大きく変わっている。

エコ番組なるものが、けっこう多い。数日前に、NHK-BSアーカイブスで、2夜連続で“エコツアー”を紹介した番組を見た。いずれも、深夜の番組だ。私は、あまりエコ物に特別の興味がないが、他の番組があまりにもクダラないので、2本とも最後まで見た。その番組のことを言うつもりは、ない。しかし、福島原発のニュースに触れる度に、私たちは、原発についてもっと考えなければならないと、つくづく思うのだ。

原発がひとたび事故を起こすと、その被害は、想像を絶するものがある。人類は、そのことにまだ目を向けていないような気がする。チェリノブエリとフクシマの事故の後も、原発建設は、これまでと同じように続いている。原発中止を国として決めたのは、ドイツだけである。安倍政権は、原発について、これまでと同じような方針で進めていくという。フクシマ原発事故の当事国として、この態度は、世界から怪訝に思われると思う。

話はガラッと変わるが、日銀総裁に就任した黒田氏の「これまでとは、質的にも量的にも次元の違う金融緩和」の打ち出しで、株価と為替が激しく乱高下している。多くの個人投資家が、再び株式市場に向っている。これを扱っている会社は、狂乱的な景気だという。私は、株をやったことがないので、分からない。株で大損をした話はよく聞くが、株で大儲けしたという話は、あまり聞いたことがない。

乱高下する相場で、素人が儲けるのは、なかなか難しいという。その理由は、相場の乱高下は、プロ筋が仕掛けているからだという。仕掛けた人間は、自分が儲けるために仕掛けているのである。それに釣られて市場に入ってくるお客が多少儲かることはあっても、ごっそり儲けるのは、仕掛けた人たちである。アベノミクスなるもので株価は上がったが、この間にいちばん儲けたのは、外国人投資家だという。個人投資家は、注意した方が良い。

アベノミクスなるもので、私がいちばん気に食わないのは、インフレターゲットである。「2%の物価上昇は、2年間で達成できる」と、黒田日銀総裁は言っている。しかし、消費税を5%から10%に引き上げれば、それだけでも、物価は2%位は確実に上昇するであろう。円安になれば、輸入品の価格も上昇する。現に、もうかなり上がっているではないか。「これから物価が上がるぞといえば、その前に買っておこうという人が増える」という説明も、いかがわしい。

原子力発電の問題も、デフレ克服の問題も、安倍首相が示す方針には、哲学に裏付けられた理念や政策が少しも感じられないのだ。安倍首相の主張で少し纏まったものは、憲法を改正しなければならないという、頑迷な主張だけである。その主張の根っ子は、現在の憲法が占領軍に押し付けられたものというだけだ。現在の憲法が制定されて、60余年になる。その憲法が果たしてきた歴史的役割への評価など、まったくない。「日本が悪くなったのは、すべてこの憲法のせいだ」というのが、この人たちの主張と認識である。

わが国を自由主義体制で統治・運営していこうと明確に定めたのは、昭和憲法である。自由主義の考えが脆弱なわが国であったが、憲法でそう定められたら世の中は、そう動かざるを得ない。その役割を果たしたのが、昭和憲法であった。自由主義も、ひとつの政治思想である。憲法でいくら自由主義体制でいくと定めても、実際の政治や行政が自由主義的に進めれるとは限らない。自由主義体制の政治や経済や社会を立派に進めていくためには、多くの自由主義者がいなければならないは、当然のことである。

昭和憲法が公布・施行された昭和21から22年頃のわが国の政治環境は、どうだったのだろうか。まず、GHQがいた。GHQが“押し付けた昭和憲法”であったから、GHQも、あからさまにはこれを否定はできなかったが、GHQの占領政策に反しない範囲で、昭和憲法の自由主義は生きざるを得なかった。自由主義の伝統がこの時代に脆弱であったのは、事実である。また、明治憲法の価値観も強くあったし、封建的考えもまだあった。新しく、社会主義思想が大きな政党と団体によって喧伝されていた。

そうした中でも、昭和憲法が定めた自由主義体制は、徐々に現実となっていった。しかし、自由主義を好ましからず考えていた人たちは、昭和憲法を空洞化しようと執拗に抵抗した。こうした勢力と、昭和憲法は激しく闘わなければならなかった。だが、憲法がひとつの政治思想を表明することは、大きな力を持った。わが国の自由主義の伝統は必ずしも強くなかったが、それでも、それなりの自由主義日本が徐々に作り上げられてきた。

その結果として、自由主義経済国家ー日本が形成され、高度経済成長が徐々に実現されていった。わが国の奇跡的な復興は、自由主義的な経済体制がなければ、絶対にできるものではなかった。私には、この成長過程を実感をもって見てきたという自負がある。わが国の経済を成長させるためには、自由主義を発展させなければならない。自民党がいくらその力を誇示しても、この原理原則に従わなければ、経済を成長させることは決してできないのだ。

だから、昭和憲法に敵意を抱いている安倍首相、それに染まった現在の自民党では、わが国の経済の停滞を打破することはできないのだ。私のこの確信は、それなりの成功をおさめた日本の政治の核であった自民党の中で、これを長く見詰めてきた者として、揺るがない。安倍自民党は、一時的な付け刃の成果を(もたら)せても、わが国が抱える諸問題を、根本的には解決できない。そう、私は思っている。

それでは、また。

  • 13年04月06日 06時53分PM 掲載
  • 分類: 2.国内政治

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