ならぬことはならぬ
12年12月22日
No.1545
私は、この一週間、複雑な想いをもって、選挙後の政治の流れを見てきた。大勝した自公"合体"政権は、高笑いを顔に出さず、出来る限り“神妙な姿勢”を強調していた。それがいつまでもつか分からないが、暴走は国民を苦しめ、わが国に災難を招く。神妙な姿勢を貫くのは、結構なことである。日本維新の会も、結果は上々だったと思っているのであろうが、複雑な対応をしている。もともと確たる政治的哲学や理想があった訳ではないのだから、それは頷ける。
これに比べ、惨敗・敗北した陣営の選挙後の行動は、あまりよく分からない。マスコミが、真面目に報道していないからである。率直に言って、上記以外の政党は、今後、大変な苦境に立たされる。かろうじて第2党としての議席は得たものの、民主党は、もはや自公“合体”政権に対峙する政党ではない。政権に対峙する野党第一党として存続していけるかも、疑問である。野田首相の最大の罪は、「野党不存在の永田町」を作ったことにあるのではないか。
少なくともわが国には、戦後一貫して政権と対峙する野党第一党が存在した。長い間、それは社会党であった。その後は、新進党→民主党であった。数の上でも、野党第一党と呼ぶに相応しい議席を有していた。衆議院では、日本維新の会と同程度の議席数。そして、消費税増税は自公“合体”政権と共同して推進するという、民主党である。国民は、このような民主党を野党第一党と呼ぶだろうか。以上に名前を挙げた以外の政党の獲得議席は、あまりにも少な過ぎる。これが、第46回総選挙後の、衆議院の姿である。
衆議院のこのような姿は、比例区で全有権者の16% ─ 投票者の28%が自民党に投票した結果として、現出したのである。国民の多くが賛同している姿ではないと、私は思っている。しかし、これが小選挙区・比例代表並立制という選挙制度なのである。プロの政治家ならば、こういう選挙制度の下でどう戦えばよいのか、考えて戦わなければならない。選挙制度が悪いと言ったところで、始まるまい。
これから数年間は、自公“合体”政権が、日本の政治を支配する。これと対峙する政党が、野党である。野党が存在しない民主主義の先進国は、ない。まず、わが国に存在するそれぞれの政党が、“与党なのか野党なのか”、国民にハッキリと態度を表明する必要がある。このようなバカらしい質問をしなければならないのが、わが国の政治の現状なのだ。わが国の政治の文化度を表す、悲しき現実なのである。私は、今年の永田町徒然草で、“文化。文化力”について何度か述べたが、今回の総選挙は、“政治の文化力”の敗北であったと思っている。
最後に、言っておきたいことがある。今回の総選挙の争点は、あくまでも「消費税の10%増税の是非」を国民に問う選挙であった。総選挙に至る経過も、また、民主党から多数の離党者が出た原因も、それであった。そして、民主党が壊滅的惨敗を喫したのも、「4年間はやらないと言っていた“消費税の増税”をやった」からである。民主党の衆議院議員たちは、選挙をやったらこうなるということが、分からなかったのだろうか。政治の政界にも「ならぬことはならぬ」があるのである。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。