混乱させているのはマスコミ
12年11月25日
No.1538
前回の永田町徒然草「今回の解散の原点は !?」から、10日が経った。それ以降、当然のことながら、ニュース報道をできるだけ見るようにしてきた。しかし、
公職選挙法の関係もあり、マスコミも、選挙が公示・告示された後は、公平な報道にかなり注意しているようである。しかし、衆議院選挙についていえば、衆議院が解散された後は、同じような配慮が必要であり、これまでもマスコミはそれなりにそのことを意識してきた。しかし、この10日間のニュース報道は、常軌を逸するものであった。石原新党と日本維新の会の動向ばかりが、異常なウエイトで報道されてきた。どちらも、国会議員が5名前後いない少数政党に過ぎない。このような政党について、なぜ異常に報道するのか。特別な意図があるとしか思われない。
政治報道をどのようにするかには、そもそも、難しいものがある。マスコミが「第4の権力」と言われるようになって、すでに久しい。それだけに、各国において、そのあり方は大きな問題となっていると思われる。私も、その詳細を掌握している訳ではない。しかし、各国においてこの問題を論じる場合、イギリスBBC放送の基準が、必ず参考にされている筈である。BBCでは、解散時における国会議員の議席数を基本にして報道するという基準がある。単純だが、非常に参考になる。
もうひとつは、その選挙における候補者数も基準にしなければならないという点であろう。そうしないと、既成政党だけが有利となり、新しい政党の発足を阻害するからである。イギリスには比例選挙がないので、小選挙区候補者の数だけを問題にすればよい。しかし、比例選挙がある場合は、小選挙区と比例選挙区の候補者数をどうするかが、大きな問題となろう。また、比例選挙にもいろいろな制度がある。ヨーロッパ各国の実情を調査すれば、必ず参考になる基準がある筈だ
今回の衆議院選挙では、10数の政党がある。これらの政党においては、比例区に立候補者を出すに過ぎない政党も、少なからず、ある。比例選挙も、全国11ブロックに分かれる。全ブロックに比例区候補者を出す政党と、1~3ブロックしか候補者を擁立しない政党を同列に取り扱うかも、議論しなければならない。今日のNHKなどは、こういうことを少しも考慮せずに、すべての政党を出席させていた。これではあまりに数が多過ぎて、国民に嫌気を起こさせる意図があるのではないかと疑われても、仕方があるまい。
このように、選挙や政治の報道は難しい。しかし、マスコミは、報道を止める訳にもいかないであろう。だったら、各放送局は、いくら困難であっても、どのような基準と考え方で報道を行っているのかを、明らかにする必要があろう。これも、私がいつもいう“文化力”の問題である。マスコミは、文化力が無いとは、口が腐ってもいえまい。大いに苦しむべき問題であり、各放送局の文化力が、国民の前に明らかになる。
この10日間のニュース報道を見ていて感じたのは、混乱・出鱈目さについて、その原因が、煎じ詰めると「今回の総選挙の最大の争点は何か」を詰めきれていないことに尽きると思う。マスコミも、消費税の増税が争点であることは認めている。それに、原発問題やTPP問題を付け加える。また、景気回復や外交も付け加える。だが、これらを同列に扱うことが、そもそも疑問なのだ。もちろん、議論することは重要だが、二者択一で答えが出せる問題ではない。
それに比べて、消費税を10%にするかどうかは、二者択一に馴染む問題である。それに、今回の消費税10%増税の決め方が、民主主義のあり方にとって、死活的に重要な問題でもある。こんなことを許しては、これから先、マニフェストや公約など、意味のないものになる。多くの国民が、今回の選挙で白けているのは、実はこの点なのではないか。だが、「消費税の10%増税の是非」を基準にして整理すれば、賛成派と反対派は、明快に分かれる。
消費税の10%増税の賛成派は、自公民である。日本維新の会も、よくよく煎じ詰めて見ると、結局は賛成派と見なしても良いのではないか。それ以外の政党は、消費税の10%増税に反対である。こう見れば、事態は実に簡単なのである。最大の問題は、消費税の10%増税に反対する政党が大同団結し、国民がどこに投票すればそれが実現できるのかを、国民の目に明らかにすることである。公示までにそれができるかどうかが、今回の総選挙の最大の焦点である。私は、それだけに注目している。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。