深まる秋
12年10月21日
No.1533
先週の永田町徒然草No.1532「秋の夜長に」をupdateした手前、今週は一晩しか無茶をやらなかった(笑)。しかし、充実した秋の夜長を過ごせたかというと、それ程ではなかったような気がする。まず、よく休んだ。それはそれで、体には良かったのだろう。もう歳なのだから、あまり無理をすることは、控えなければならない。でも、急に若々しくなるというものでもない(笑)。まぁ、健康のために自己管理をキチンとするのが大切なのである、が…。
自宅でテレビを見る機会は、多くなった。もちろん、ニュースや報道番組が中心だ。報道する素材がくだらないからなのか、それとも報道の仕方が稚拙だからなのか、あまり心ときめくモノはなかった。たぶん、その両方であろう。例えば、尼崎の殺人事件など、事前調査が不十分なのであろう、いったいどういう性質の事件なのか、その筋が報道を見ていても分からない。近年稀に見る、極悪非道な事件のような気がする。
民自公3党の党首会談は、不調になった。これなども、そうなることは、少し勉強をしておけば、当然の成り行きではないか。「解散時期を、総理大臣として予め具体的にいうことはできない」という野田首相の主張は、その是非は別として、一貫していた。いっぽう、自民党と公明党は、野田首相が年内解散を具体的に約束しなければ、政府・民主党の要求に応じることはできないと主張していた。これでは、合意など成立する筈がない。
そもそも、国会を開催する前に、特定の政党間で国会で何をどうするかを決めることなど、おかしいのだ。その問題点を指摘するのが、マスコミの責任であろう。党首会談決裂後は、「特例公債法案を成立させないのは大問題である」と、マスコミは一斉に非難している。しかし、特例公債法案を成立させるのは、政府・民主党の責任である。野田首相は、予算と特例公債法案を一体的に成立させるルールを作ろうと提案しているが、これは乱暴な意見だ。
予算の成立と執行は、政府の重要な仕事である。しかし、執行するおカネがないないなら、予算に計上していたことでも諦めるしかない。予算に計上していたのが、そもそも問題なのだ。そういう事態に至ったら、事実を有りのままに国民に説明するしかない。そうすることによって、国の財政に対する国民の理解と協力が得られるようになるからだ。現に、アメリカなどは、平気でそのようなことを行っている。
復興予算の出鱈目な使い方が、大きな問題になっているが、これは、驚くに値しない。これが、わが国の行政の実態なのだ。だから、私は、「社会保障予算の使い方も、徹底的に見直す必要がある」と、指摘しているのだ。民自公の「社会保障と税の一体改革」の消費税の10%アップにも、必ず同じような問題がある。平成24年予算に計上されている社会保障予算も、不要不急のモノは執行停止にするくらいの勇気をもって臨めば、大した社会的問題は起きないと思う。とにかく、お役人のやること・なすことは、油断ならないのだ。
今月末に、臨時国会が召集されるという。たぶん、荒れた国会になろう。そもそも参議院では、通常国会末に野田首相の不信任決議が通っているのだ。参議院では、一切の審議が行われない可能性すら、十分ある。片肺国会で、特例公債法案や選挙制度改正が処理できるのだろうか。野田首相や民主党は、もう、先行きが見えなくなってきているのではないのか。“決められる政治”をウリにしてきた野田首相だが、いよいよ、進退窮まってきた。
…というより、わが国の政治が動かなくなってしまったのだ。統治能力の不足などというものではなく、統治能力の欠如である。その原因は、そもそも「自公民・談合の消費増税10%」にある。野田首相は、たぶん、財務官僚の囁きでこれを決断したのであろうが、財務省に日本の政治全体を動かす力など無いことを知らなかったのだ。財務省はおカネを握っているだけに、大きな力を持ってはいるが、所詮はお役人に過ぎないのだ。
この国を真に統治する者がいない中で、わが国は漂流し始めた。漂流だから、どこに行くのか分かる筈がない。自公“合体”政権が政権の座から追われたのは、統治能力の不足であった。この3年余の自民党や公明党の行動を見ていると、その欠点を克服したとは思えない。自民党などは、もう政権をとったつもりでいるが、安倍首相のアナクロニズムでは、わが国の政権運営は難しい。事態は極めて深刻であることに、国民は気が付かなければならない。
秋は日々深まっていく。わが国がそうならなければ良いのだが…。
それでは、また。