道路特定財源と暫定税率は不可分(1)
08年04月13日
No.771
2日間ほど情けない状態をお見せしてしまった。健康は大切である。戦いをする者にとって、健康は武器である。健康でなければ、覇気がなくなる。覇気がなければ、相手を呑むことはできない。相手を呑んでかからなければ、戦いに勝つことなど出来やしない。“喝”である。これからは、気分が良いからといっても深酒は慎むようにしよう。
政府与党は道路特定財源の一般財源化するための会議を重ねている。これをマスコミがさも重大事のように報じている。民主党の鳩山幹事長は、閣議決定をしなければ与野党協議に入れないといっていた。逆にいえば、道路特定財源の一般財源化を閣議決定すれば与野党協議に応じ、妥協でもしようというのだろうか。結局、道路特定財源の一般財源化に関する認識がいい加減だからである。というより、税に関する認識と覚悟が不十分なのである。
税を取る方としては、税は真水の方が良いに決まっている。税の使途が決められていたのでは、権力者が自由に使えない事態が生じるからである。道路特定財源では、現にそういう事態が生じている。小泉内閣で政府与党が道路特定財源の一般財源化を口にするようになったときから、そういう事態があることを政府与党は認めているのである。
税を取られる方としては、立場が異なる。税は取られない方がいいに決まっている。仮に税を取られるとしても、税の使途がハッキリしていた方がまだ納得できる。自由主義社会は、政府に対する不信感から出発している。道路特定財源に限らず、わが国の“政府・官僚の税の使い方を信頼せよ”とでもいうのだろうか。本気でそう考えているとしたら、傲慢そのものである。官僚不信は、いまや国民的コンセンサスである。
道路特定財源のチャンピョンであるガソリン税についてその歴史をみれば、特定財源化と暫定税率の導入は不可分一体であることは明らかである。これから2回に分けてこのことを論ずることとする。ガソリン税の歴史的考察である。ある問題の本質を正しく見抜くためには、それが歴史的にどのように形成されてきたかを考察することは、きわめて重要な手法である。現実は歴史の集積だ。政治をみる場合、このことを忘れてはならない。
ガソリン税とは、揮発油(がそりん)に課せられる揮発油税と地方道路税を合わせた呼称である。現行ガソリン税の本則税率は、揮発油税が1リットル当り24.3円、地方道路税が1リットル当り4.4円である。合わせて1リットル当り28.7円である。現在は廃止されたが、去る3月31日まで揮発油税として1リットル当り48.6円、地方道路税として1リットル当り5.2円の暫定税率が課せられていた。ガソリン税は合わせて1リットル当り53.8円であった。
本則税率でも暫定税率でもガソリン税の中核は揮発油税である。そもそも揮発油税の歴史は戦前に遡る。揮発油税は、昭和12年ガソリンの代用燃料生産を助長する目的で創設された。昭和18年石油専売法の施行に伴いガソリンが配給制になったために、揮発油税は廃止された。ところが、昭和24年揮発油税法が制定され、揮発油税が復活した。
Wikipediaには「当時代用燃料車がガソリン車に比し割高であったのでそれとの均衡及び財源の確保等の見地から復活」したとあるが、“代用燃料車”とは一体何なのであろうか。木炭自動車のことなのだろうか。木炭自動車がガソリン車より割高であったとはちょっと考えられないのであるが・・・・? 揮発油税法は昭和24年5月に施行された。その時、揮発油税は特定財源でも目的税でもなかった。揮発油(ガソリン)に課せられる物品税であり、国税であった。
この揮発油税が道路特定財源とされたのは、よく知られているように昭和29年4月に施行された「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」による。この法律は田中角栄議員らが中心になって制定した議員立法であった。この法律は、昭和33年に「道路整備緊急措置法」に継承され、更に平成15年に「道路整備費の財源等の特例に関する法律」に改題された。現在の国会に「道路整備費の財源等の特例に関する法律」を「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」に改める法律案が係属している。
ガソリンに課せられる税額の推移
昭和29年揮発油税が道路特定財源になってから、ガソリンに課せられる税は次のように増えていった(ガソリン税の推移が問題であるから法律の条文に従って、1キロリットル当りの税額を記載した。増大した税額を考えながらみて欲しい)。
- 昭和26年1月 揮発油税11,000円/キロリットル
- 昭和29年4月 揮発油税13,000円/キロリットル
- 昭和30年8月 揮発油税のほかに地方道路税が課せられるようになる。その分だけガソリンに課せられる税額が増えたわけであるが、地方道路税が導入された時点の税率は手元に資料がないので不明である。
- 昭和39年4月、揮発油税24,300円/キロリットルに引き上げ(プラス地方道路税の本則税率)。この間、他の道路関係税創設、自然増収等により大きな制度改定なし。
- 昭和49年4月、第7次道路整備五箇年計画の財源確保のため 「暫定的」に揮発油税29,200円/キロリットルに引き上げ (プラス地方道路税の暫定税率)
- 昭和51年7月、揮発油税36,500円/キロリットルに引き上げ (プラス地方道路税の暫定税率)
- 昭和54年6月、揮発油税45,600円/キロリットルに引き上げ (プラス地方道路税の暫定税率)
- 平成5年12月、揮発油税4,600円/キロリットルに引き上げ、地方道路税5,200円/キロリットルに(確か?)引き下げ(手元に資料がないので不確実)。 (平成20年3月31日までの暫定措置)
- 平成20年4月1日 租税特別措置法の期限到来により揮発油税24,300円/キロリットル+地方道路税4,400円/キロリットルの本則税率に引き下げられる。