世論調査の結果分析
07年06月19日
No.462
『朝日新聞』の第6回連続世論調査(6月16、17日調査)の結果が、今日の同紙面に載っている。内閣支持率の変化は、43→44→36→30→34→32%である。不支持率のそれは、33→38→42→49→48→51%である。たったこの数字だけでも、参議院選挙の予測をする上できわめて重要なことが分かってくる。『朝日新聞』のこの連続世論調査は、たいへんありがたい。まず私が注目するのは、内閣支持率がなかなか30%を割らないということである。
先週1週間の安倍内閣や自民党のパフォーマンスは、決して良いものではなかった。その代わり、強行採決などもあることはあったが、あまり目立たなかった。年金問題について、特別に良い対策が打ち出された訳ではないが、出鱈目さも特にこれといったものも出てこなかった。国会の審議は、一応粛々と進んでいる。朝日新聞社の調査で支持率が急落した3週前以来、それでも一応30%台をキープしている。他の世論調査の数字をいま手元に私はもっていないが、多分同じような傾向が見られるものと思われる。安倍内閣の努力がそれなりの効果を発揮しているとみるか、野党の攻勢が手詰まりもしくは単調すぎるとみるかは、人によって意見が分かれるであろう。とにかく内閣支持率が30%台に留まっていることが重要なのである。
安倍首相の本当の危機は、その支持率が30%を割り込み、20数%台になった時である。そうすると安倍内閣は、もういくら踏ん張っても支持率を盛り返すことができなくなる。現在の状況を相撲でいうと、安倍内閣・自民党は追詰められているものの足が得俵(とくだわら)にかかっている状態といってよいだろう。足が得俵にかかると、これを追い込むのはなかなか難しいのである。“がぶり寄り”でもなんでもよいから、野党はさらに攻勢を強めなければならない。ここで攻勢の手を緩めると、こんどは野党が苦しくなる。お義理にも安倍首相を横綱などに例えることはできないが、与党の方が野党より格上の力士であることは間違いないであろう。いまいちばん注意しなければならないのは、“どっちもどっち”という声が出てくることである。現にそうした声を、マスコミなどは意識的に流し始めている。
もうひとつ私が注目することは、内閣不支持率が下がっていないことである。49→48→51%というのは、世論調査的には誤差の範囲内である。不支持率は増えてはいないが、下落はしていないところが重要なのである。50%を超えたことは重要な気もしない訳ではないが、これは誤差の範囲内とみるべきで糠喜びする訳にはいかないと私は考える。それから100-(32+51)=17%という数値は、一体どのように捉えたらよいのだろうか。質問項目をよく見てみないと何ともいえないが、私には気になるところである。仮にこの17%を内閣支持の32%に加えると49%となり、不支持率の51%とほぼ拮抗する。安倍首相の言動は無内容だがそれほど悪人面をしていないことと、どんな選挙でも上の指示することに無批判に従う創価学会の存在がこの不気味な数字の原因だと私は思っている。
参議院選挙に突入する直前の戦況は、大雑把にいえばこのようなものである。悲観する必要はないが、野党が考えるほど甘くもない状況と私は考える。しかし、ここで局面が大きく変わる動きがでてきた。国会の会期延長である。『産経新聞』は1面に「12日間 会期延長へ 参院選29日投開票 政府・与党」の見出しで次のように報じている。
関係筋によると、安倍首相は15日夜、首相公邸で青木幹雄参議院議員会長と片山虎之助参議院幹事長らと極秘に会談。首相は「参議院がうまく国会審議を運んでも野党が抵抗すれば国会は止まる。公務員制度改革法案は絶対に成立する態勢で臨んでほしい」と述べ、12日間の延長が必要だとの認識を示し、難色を示す青木氏を説得したという。
参院選を先送りすれば、候補者が大幅に選挙日程の変更を強いられることから、参院側はもともと5日公示、22日投開票となるギリギリの線として5日間の延長を検討していた。
しかし、5日間の延長では公務員制度改革法案の参院本会議採決は閉会日直前の27日になる公算が大きい。参院では20日に教育再生3法案とイラク復興支援特措法改正案、22日に社会保険庁改革関連法案の本会議採決を予定しているが、野党が対決姿勢を強めれば、これらの重要法案も会期ギリギリにもつれ込む可能性がある。
このような状況を受けて、自民、公明両党は18日、衆参国対委員長会談を開き、「重要法案の成立には延長やむなし」との認識で一致。今後も野党側と水面下で折衝を続け、20日にも延長を正式に表明、21日にも衆院本会議で延長手続きを行う方針を決めた。
私は衆参ダブル選挙を2回経験している。ダブル選挙となると、衆議院選挙も参議院選挙も事前の予測はほとんど当てにならないほど激変する。法案成立のために国会が延長され、そのために予定されていた参議院選挙の日程が1週間ずれたという記憶が私にはない。必要な法律を通すためだったら、選挙の日程がずれても仕方ないのではないかととらえる向きもあるかもしれない。選挙が1週間先に延びても、国民にはそれほど関係なさそうにも思える。問題はその大義名分と法案の中身であろう。安倍首相がこだわる公務員制度改革法案=例の“人材バンク”法案なるものの中身を、野党は徹底的に追及していかなければならない。現在の野党の反対理由は、率直にいって国民によく理解できない。この法案を審議する参議院内閣委員会の委員長は民主党の議員であるから、それは十分可能であろう。ここは踏ん張りどころだ。
それでは、また明日。