具体的状況の具体的分析
12年12月02日
No.1540
この半年間、政治の動きは複雑かつ激しかった。特に、野田首相の解散発言以降の政党や政治家の離合集散は激しく、多くの国民は困惑気味でさえある。こうした動きを正しく分析し、国民に正確な判断材料を提供する義務のあるマスコミやジャーナリスト、政治評論家は、一向にその役割を果たしていない。マスコミが偏重する政治評論家や政治アナリストは、私に言わせれば、政治評論家でもないし、政治“アナリスト”と呼べる人物ではない。マスコミの“文化力”も、地に落ちたものだ。こうした現状は、わが国の最大の問題点なのである(嗚呼)。
2日後には、衆議院の総選挙が始まる。公示後になると公職選挙法の関係で、発言がどうしても制約される。だから今日、今回の総選挙について言っておきたいことを述べたいと思う。民主主義社会において、選挙はひとつの“戦い・闘い”である。私は長い間、この戦いの当事者として闘ってきた。その闘いを行うにあたり、いつも心掛けてきたことがある。それは、「具体的状況の具体的分析」。あらゆる戦い(闘い)をする際に、これは、極めて重要であり、それなくして勝利を手に入れることはできない。
公示を2日後にひかえた今日において、多少は整理されたとはいえ10数の政党があり、様々な政治的論争点が提起されている。政党やマスコミは、さまざまな論争点を提起し、その選択を訴えている。こうなると、多くの国民には訳が分からなくなる。どのような論争点を提起するのも勝手だし、また何を基準に投票するかも勝手である。しかし、政党や政治家がどのような論争点を中心に提起するか、また、国民がどのような論争点を中心に選択するかで、闘いの勝敗は決する。
論争点をわざわざ作りだし、本当の問題の所在を隠そうと考える政党や政治家がいる。それを意識的に行う者もいれば、問題の本質が解らず、世間受けするスローガンを羅列する政党や政治家もいる。それらを見分けるのが、いま、重要である。そのカギは、原点に立ち返り、「具体的状況を具体的に分析する」ことにある。今回の解散総選挙を強く主張し、野田首相に迫ってきたのは、自民党と公明党であった。その
民主党から多くの離党者が出て、多くの政党が生まれた原因も、消費税の10%増税法案の成立であった。消費税の10%増税は、3年半前の総選挙における民主党のマニフェストと野田首相の“シロアリ発言”に明らかに反している ─ それが明らかだったからだ。まさに“造反有理”である。野田首相の最大の罪悪は、国民が苦労して作り上げたひとつの政党をズタズタにしてしまったことだと、私は思っている。“決められる政治”(?)などとほざいておいて、そんなことを行う権利は、野田首相にはない。民主党の党首として、“その罪、万死に値する」というべきである。
これまで一貫して主張してきたように、今回の総選挙の最大の論争点は、「消費税の10%増税の是非」である。これこそ、今回の総選挙で決着をつけるのに
自公民の党首も景気が良くならなければ、見直条項があるから、消費税10%を実施しないと発言しているが、そんな発言に惑わされてはならない。だいいち、名目であろうが実質であろうが、GDPが3%成長することなど、まず期待できないことは容易に予測できる。しかし、自公民3党は選挙後も、消費税の10%増税に関しては協力していくと宣言している。結局のところ、消費税の10%増税を実施するであろう。これもあるから、今回の総選挙で「自公民・談合による消費税10%増税」に反対する勢力を、シッカリと確保しておかなければならない。
原発やTPPについて賛否を問うのを、私は否定しない。しかし、これらの問題は、今回の総選挙で決着をつけられる問題なのだろうか。原発を引き続き継続していくという政党は、自民党くらいである。それも、曖昧な言い方しかしていない。それ以外の政党は、いずれ原発を止めるという。原発を止める時期が2020年代か2030年代かの違いがあるに過ぎない。TTPに賛成という政党も、“国益に反しなければ”とか“国益を守ることを条件に”と言っている。何が国益なのかを明示しなければ、判断しようがない。それは、TPPに参加する条約を批准する時に問題とすべきテーマである。
今回の総選挙の予測は、非常に難しい。しかし、“消費税の10%増税”反対派が、自民党・公明党・民主党の合計数を凌駕することはない。何故ならば、“消費税の10%増税”に反対する政党の候補者数が、過半数に遠く及ばないからである。共産党を含めれば300選挙区となるが、これまでの経験則上、国民は、未来の党などと同じようには捉えないであろう。いくら評判が良くても、候補者を擁立しなければ当選者がでないのが、選挙というものの厳しさである。
今回の総選挙は、もちろん重要であるが、前記田中氏の言うように「大政局一歩手前の総選挙」なのかもしれない。しかし、何事も step by step である。わが国における民主主義の発展の歴史こそ、まさに step by step であった。このことを肌で知っている私としては、別に驚かない。だが、仮に step by step だとしても、一つひとつの戦い(闘い)は、命懸けで行わなければならない。300の小選挙区においても、有権者は、具体的状況を具体的に分析して行動しなければならない。
それでは、また。