お詫びと反省,そして涙。
09年07月23日
No.1235
昨日は“皆既日食”のハナシでもち切りだった。私は小さい頃こういう話が大好きだった。しかし、日食が起こる理屈を知るとそれほど興味がなくなった。あいにく日本の殆どのところは天候が悪く、日食をきれいには観られなかったようである。だが、皆既日食の地域は、夜のように真っ暗になったそうだ。昔はきっと大騒ぎになったのだろう。
政治や経済の話も同じようなところがある。ある現象が起こる理屈が分かれば、そんなに大騒ぎする必要はないのだろう。しかし、政治や経済の話は、誰もが認める天文学のような理屈がない。立場によって全く正反対のことを言う。たとえば、今日の経済不況は“小泉・竹中の構造改革”が原因だと多くの人々が言う。ところがそこに竹中平蔵が座っていて、「今日の経済不況は私が進めようとした“改革”がまだ完全に行われていないからですよ」と言う。こういうテレビ番組がけっこう多くあった。
いま自民党と公明党は苦境に立たされている。多くの自民党支持者が、それは麻生首相のせいだと思っている。ところが自公“合体”政権の執行部は、「お前たちがそんなことをいうからそうなるのだ」と応える。麻生首相は「一致結束して断固として戦おう」といい、解散総選挙に踏み切った。麻生首相は、いったい誰と戦おうというのだろうか。ブツブツいう自民党の反対者と闘おうというのか、それとも麻生首相が行ってきた政治に反対する者と闘おうというのか。
もし後者だとしたならば、麻生内閣を支持しないという者を敵にすることになる。私は世論調査における“内閣支持率”というモノをそれほど重視しない。内閣支持率は少しのことでかなり動くからである。“風”のようものでもけっこう動くのである。それにしても報道各社の世論調査における麻生内閣の不支持率は、どれも60~70%なのだ。麻生内閣を支持しない“下々の皆さん”と麻生首相は戦おうというのか。
「麻生さん、そりゃ無茶だぜ」と誰だって言いたくなるだろう。しかし、麻生首相はきっとこう言いたいのだろう。
「大丈夫。7月21日の私の声涙くだるパフォーマンスでモヤモヤは晴れた。下々のヤツなんてそんなものだ。ワシは畏れ多くも内閣総理大臣だぞ。ワシは吉田茂の孫だぞ。ワシに従わない者は国賊だ!」
と言いたいのだ。麻生首相は、郵政解散時の小泉首相のパフォーマンスを必死に研究していたらしい。
“お詫びと反省、そして涙”で麻生内閣の支持率が回復するほど、事態は単純ではない。国民が置かれている経済状況は深刻なのだ。4回の補正予算を組んだからといって事態は一向に改善していない。麻生首相も竹中平蔵元大臣も、“政治は結果責任である”という単純な原理原則を知らないようである。二人の頭は、依然として日本青年会議所会頭であり、慶應大学教授なのである。そんなもので日本の政治を動かせるほど単純ではないのだ。
それでは、また。