よそ道に逸れたお話
08年02月27日
No.720
昨日はゆっくりと休ませてもらった。国会議員だった頃には休みはほとんどなかった。若かったし、やるべきことが多く休んでなどいられなかった。しかし、時々伸び切ったゴムのようになり、新しい発想ができなくなることを体で感じることはあった。そのような時に私は上越の自宅にあった庭の手入れをした。手入れといっても木の剪定などできなかったから、要するに草むしりであった。私はこの草取りが案外意外に好きなのである。
小さい頃、畑の草取りをさせられてものである。畑にはとにかく雑草が生える。これを取らないと作物がうまく育たない。子供でも簡単に取れる雑草もあれば、子供ではなかなかきれいに取りきれない雑草もあった。雨が少ないと土が固くなってしまい雑草は取り難くなる。雑草を大きくしてしまうとこれを取るのが大変になる。雨が降って土に湿り気があると草は取りやすくなる。しかし、こういうときはだいたい蒸し暑く汗でびっしょりとなる。雑草取りは、野菜農家ではいまでも大変な作業のようである。
田んぼの草取りは、子供には簡単にはできなかった。だから私には経験がない。稲はきちんと列に植えられているから、その列の間の雑草を取るのである。稲が小さい間は屈んでこれを手で取る。その作業は大人でもきつい作業であったようだ。稲が大きくなると稲の先端が眼に刺さる。そこで細かい金網の張ってあるお面を被って草取りをしたものだ。草取りで眼を潰してしまったという人がいたものである。草取り機というものもあった。鉄の爪(7~9センチくらいのもの)がいっぱい付いている木のロールが6個くらい組み合された物で、これを押して泥を掻き回して雑草を土に埋めてしまうという機械である。稲が大きくなった列の間に屈んで雑草を取ることに比べれば、かなり優れものの機械であった。
いま田んぼでは草取りなどほとんどしないようである。除草剤ができたからである。現在使われている除草剤は“ヘイ”(後記の白川注を参照のこと)をやっつけるそうである。ヘイは稲に似た植物で、稲の穂が稔るころヘイも穂をつける。これをそのままにして農作業をするとヘイの実が米と一緒になってしまい、米の品質を著しく下げる。だから稲を刈るときもヘイは稲とは一緒の束には絶対にしなかった。稲に近い植物なのだろう。そのヘイは枯らすが稲には害がない除草剤というのはかなり精巧(?)な除草剤なのであろう。害虫を殺す農薬にもいろいろな問題があるが、雑草をなくする除草剤もいろいろな問題がある。
中国製冷凍餃子問題を論じようと思って書き出したのだが、話はだいぶよそ道に逸(そ)れてしまった。中国製冷凍餃子の殺虫剤混入事件の真犯人がだいたい判ってきた。これは重要なことだから、別に述べることにしよう。除草に関するまとめをしておこう。害虫(害獣)を駆除したり、雑草を取らないと私たちが口にする作物は立派に育たないことを指摘したかったのである。そうするために農薬が発明されたのだが、そのために自然のサイクルが壊されかなり狂ってきた。その結果より強い農薬が必要になったようである。自然のサイクルを壊すとそのツケは大きい。私たちがいま問題にしなければならないのは、地球温暖化だけではないようである。
それでは、また。
白川注:私たちの地域では“ヘイ”といったが、広辞苑に“ヘイ”はなかった。私たちが“ヘイ”と呼んだのはたぶん稗(ひえ)なのだろう。新潟県では“い”と“え”の区別があまりハッキリしない。ヒエ(hie)がヘイ(hei)になっても少しも可笑しくない。例えば「いちごのえちご」である。いまでも私は越後(えちご)の苺(いちご)となかなか上手くいえない(笑)。
注:ひえ【稗】イネ科の一年草。中国原産で、わが国には古く渡来。種子はやや三角形の細粒。強健なため、古来、救荒作物として栽培、粒を食用とした。粒・茎葉は飼料とすぐれているが、今は栽培が少ない。<季・秋>・・・・・『広辞苑』