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自民党抵抗勢力に担がれた小泉“改革”政権の正体

この小論は、『財界展望』11月号に掲載された“白川勝彦の「日本を斬る」”に、10月11日時点で若干の補筆をしたものです。当サイトでの該当掲載記事は画像によるものですから、読み易くするためもあって、リライトしました。

青木サンは改革派?

 小泉首相の勝利の下に自民党総裁選は終わり、党役員と内閣の改造が行われ、そして10月10日衆議院は解散された。それにしても、先に行なわれた自民党総裁選ほどつまらなく、気の抜けたものはなかった。総裁選の真っ最中に、野中広務元幹事長の引退声明という大バクチもあったが、ほとんど影響がなかった。自民党関係者としては、総裁選を行えば、何はともあれマスコミは取り上げるし、その結果、自民党の支持率は上がると考えていたのであろう。しかし、くそ面白くもない田舎芝居を演じてみても、期待どおりになるとは私は思わない。

 それにしても、野中氏の反小泉感情は相当のものである。国民の多くは、小泉首相を改革派と見ているから、反小泉の野中氏は抵抗勢力の代表と言うことになる。その結果、鉄の団結を誇ってきた橋本派(旧経世会)を割ってでも、小泉首相の支持に回った青木幹男自民党参議院幹事長は改革派ということになる。

 しかし、騙されてはならない。青木氏が率いて小泉支持に回った自民党参議院議員こそ、政官業癒着の政治家そのものなのである。ご存知の方も多いであろうが、自民党の比例区選出の参議院議員こそ、各省庁が傘下の業界団体をフル回転させて産み出す政治家なのである。この人たちは、参議院議員になっても役所にいた時と同じ感覚で行動している。各省庁も、一つの天下りポストくらいに考えている。このような参議院議員の大半が田中派→竹下派→小渕派→橋本派に所属しているのである。それ故に、この派閥は各省庁に強いと言われてきた。また、実際にそうであった。

「構想的」な抵抗勢力

 なぜ、こんなことをくどくど書くかというと、青木氏と結託した小泉首相は、自民党の最も「構造的な抵抗勢力」の支持を受けて再選を果たしたのだということを理解してほしいからである。私は、別に野中氏を弁護しているわけではない。野中氏本人も自認しているように、野中氏は小泉首相の改革に反対する抵抗勢力であろう。しかし、青木氏が率いて小泉支持に回った参議院議員は、さらに構造的な抵抗勢力なのであろう。

 いま、政治に一番求められているのは、政・官・業の癒着を断ち切るということであろう。これは与野党とも共通の認識であろう。各省庁と自民党が一体となって誕生させるのが、比例区選出の自民党参議院議員なのである。

 今回の総裁選における青木氏の小泉支持は、小泉圧勝の大きな分岐点であった。しかし、それは、小泉氏が自民党の最も構造的な抵抗勢力の支持を受けるということだった。逆にいえば、小泉改革なるものは、各省庁にとって痛くも痒くもないという証左なのである。

 マスコミは、なぜ、このような単純なことを報じないのだろうか。それは、各マスコミとも、記者クラブ制の中で、各省庁ベッタリになっているからだろう。各マスコミとも、記者クラブ制の下、省庁に対する批判能力を失っている傾向が極めて強いのである。まさに、日本と言う国は、役人があらゆる面でがんじがらめに牛耳っている国なのである。

各省庁の応援団だ

私が、なぜ、反官僚的かというと、日本の官僚は自らを変える力がないからである。個人でも、団体でも、国でも、活きいきと存在し続けるためには、生々流転する現実に対し大胆に対応する力を持たなければならない。日本の官僚は、この対応能力に欠けるのである。

 だから、優れた政治家が各省庁を指導しなければならないのだが、そのような能力を持った政治家は極めて稀である。そして、そのような政治家が大臣になったとしても、自民党から推されて大臣になったので、その能力を発揮できないのである。なぜならば、自民党という政党は、各省庁を指導しようという気はさらさらなく、各省庁の応援団となろうという政治家がほとんどの政党だからである。

 「改革!改革!」と叫ぶ小泉首相そのものが、財務省・金融庁(旧大蔵省)の大の応援者なのである。20年以上にわたって小泉首相の政治活動を自民党の中で見てきた私にいわせるならば、小泉首相ほど恥も外聞もない大蔵族はいなかった。

 だから、小泉首相が手掛けようとしている改革なるものは、ほとんどすべてが旧大蔵省がやりたがっていた改革なのである。旧大蔵省は、確かに優秀な役人のいた役所ではあるが、所詮、役人でしかない。先に書いた日本の官僚の通弊を脱してはいない。今日の構造的不況・デフレの最大の責任者といわれても仕方なかろう。

政権交代でどう変わる

 民主党と自由党が合併して、政権交代ということが多くの人々の口から出るようになった。まだ、今の状況では現実感のある言葉となっていないが、投票日が近づくに従ってもっと熱っぽく各候補者がこの言葉を口にするだろう。それはいいことである。

 しかし、政権交代を口にする政治家は、政権交代の中身を具体的に語る必要がある。これまでの野党は、福祉や環境のことを強調するだけで、自分たちが政権をとったら、どのような政権運営をするか、ほとんど語ることがなかった。これでは、与党が余程のチョンボをしない限り、国民が野党に政権を託そうという気にならないのはやむを得ない。

 民主党と自由党との合併は、非常に順調に進んだ。選挙体制もまた社会民主党との選挙協力もかなりしっかりとできていると私は思う。これから必要なことは、政権交代をすると政治がどう変わるのかと言うことをできる限り明らかにすることである。。政策の違いを明らかにするためにマニフェスト作りも必要である。

 しかし、一番大切なことは、官僚支配の政治を、政党支配の政治に変えるということだと私は思っている。そうすると、その政党がどのような国づくりを考えているか明らかにしなければならない。価値観の多様な現在、これはそう簡単なことではない。また、全部を文字にする必要もないし、できないこともあるだろう。要は、政党のイメージ、党首のイメージが大切となってくる。

 「新民主党」の管直人代表は、自信と気迫をもって、自らの政治哲学を訴えることが大切だと思う。最後はそれが勝敗を決める!

白川勝彦


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