 自己紹介
1: 私は、昭和57(1972)年ころから、ニューメディアというものの勉強をはじめました。かなりの特訓を受けました。
2: 昭和63(1988)年11月から平成元年まで、郵政政務次官を務めました。このとき「網の文明」という著書を出版しました。
この本で、これからの日本は高度情報通信社会を国家目標とすることを私は提言しました。
また、この本で以下の4つの情報通信ネットワークがあり、これらは情報通信技術の発展により相互に融合していくことを予測しました。
<四つの情報通信ネットワーク>
郵便ネットワーク
電気通信ネットワーク
新聞ネットワーク
放送ネットワーク
このことは、郵政政務次官としての私の単なる思い込みではなく、その後このようなコンセンサスが生まれてきていると思います。
なかでも電気通信ネットワークにおける技術革新はめざましく、インターネットの誕生・普及が四つの情報通信ネットワークを大きく変えております。ただ、電気通信ネットワークにおけるシステム・技術の革新には不十分な点が多くあり、これが
IT革命における日本の立ち遅れとなってしまった。詳しくは、後述します。
3: その後も、郵政行政とくに情報通信の問題には一貫して興味を持ってきました。また、郵政行政には、党の部会などを通じて携わってきました。
 「省庁再編を見る」について
講演はお引き受けしたものの、演題までは決めていなかったのですが、仮にということで「省庁再編を見る」といただき、それが今日の会の案内にも書いてありますので、この問題の適任者ではありませんが、看板に偽りがあってはいけませんから、まずこのことからお話します。
1 理論的・思想的なものがあっての総務省の新設ではない。
1: 郵政省が、自治省と総務庁と一緒になって総務省となるということは、少なくとも自治省が望んでいたことでもなければ、郵政省が望んでいたことでもありません。総務庁が望んでいたかどうかは知りませんが、このことだけは事実です。平成9(1997)年9月、政府の行革本部の第一案が示されたとき私は自治大臣をしておりましたのでこのことをよく知っています。郵政省にとっては、まさに晴天の霹靂ともいえる案でした。
行革本部の説明にも、なぜ郵政省と自治省と総務庁を一緒にして総務省とするのかという点について、批判に耐えうるだけのものはなかったと思います。郵政三事業の民営化に引きずられた議論であり、むしろ郵政省を解体することに力点がおかれていたように思います。
2: 1年後の平成10(1998)年に、自民党が省庁再編の最後の決定をするとき、いちばん有力な案として浮上したのは「運輸通信省」というものでした。この案には運輸省も郵政省も完全に賛成だったのですが、これを認めると1府12省庁が13省庁となってしまうため、最初の政府行革本部の国土交通省と総務省にするとの案に落ち着かざるを得ませんでした。しかし、最初の案とはずいぶん異なり、郵政省全体が総務省に編入されるということになりました。
3: 経過は以上のとおりですが、新しく生まれた総務省が現実を直視し、省庁再編の妙味をどのように発揮するかは別問題です。12月10日の読売新聞に「住民票の郵便局での交付」という記事は載っていました。小さなことですが、これなどはその一つとして注目していいと思いますし、これからこのようなことが多く現れることを希望します。
2 新しい郵政行政の編成
1: 今回の省庁再編を郵政省を中心に見ると、基本的には、郵政省はそのまま自治省と総務庁と一緒になり、総務省となると理解していいと思います。ただ、橋本行革で大きな問題として議論された郵政三事業の民営化ということを反映して、郵便・貯金・簡易保険の郵政三事業はこれからは郵政事業庁として総務省の外局というとになります。そして、2003年(平成15年)に郵政事業庁は「国営の新たな公社」に移行することになっています。総務省内には、この郵政事業庁のヘッドクォターとして「郵政企画管理局」がおかれます。
2: これまで郵政省のなかで情報通信3局と呼ばれていた「通信政策局」と「電気通信局」と「放送行政局」は、総務省では「情報通信政策局」と「総合通信基盤局」の2局となります。
「情報通信政策局」は、「情報通信に関する総合的な政策の企画・立案・推進」や[放送業の発達・改善・調整、放送局免許関係事務」などを所掌します。これまでの放送行政局は基本的にはここに入ります。CATVに関することは、この局におかれる「地域放送課」が所掌することになります。
「総合通信基盤局」には、電気通信事業部と電波部と国際部がおかれ、こちらの方は事業に深く関係する行政分野を担当する色彩があります。
3: 国をあげてIT革命を行うのですが、その中心にならなければならないのは情報通信を担当してきた郵政省であることは論をまちません。私たちは、形こそ変りましたが郵政省を一つのまとまりとして守ったのですから、総務省のなかで郵政省の職員が誇りと自覚をもってその職責を果たすことを期待しています。私が最初に郵政省の職員と勉強会をもったころに比べれば、優秀な人材も大分そろったと思います。
 IT革命について思っていること
1 いったい何が遅れているのか
1: 世はまさに「IT革命」一色といっていいほど議論が盛んですが、断片的な私見を若干のべてみたいと思います。インターネットの誕生・普及に関してIT革命ということがいわれだしたことから明らかのように、これは電気通信に関する革命をしようということだと思います。ITに関してなぜ日本が遅れをとってしまったかということです。
2: それは、日本の電気通信が電話を中心にそのネットワークを形成することにこだわってきたことです。FAX通信は日本がいちばん先導しましたが、これは容量的にはそんなに多いものではありませんでしたから、電話を想定したネットワークでも十分やってこれたのです。インターネットも文字中心ならば、そんなに大きな容量を必要としませんので電話を想定するネットワークでもなんとか対応できたかもしれません。しかし、コンピュータの方がどんどん発達し画像を伝送する必要が生じたとき、電話を想定した容量のネットワークでは対応できなくなってしまったということではないでしょうか。
3: インターネットが始まったとき、日本はちょうど電電公社の民営化をしたときでした。電気通信ネットワークの整備は民間企業たるNTTに委ねることにしたのです。インターネットの利用者がそんなに多くいるわけではありませんから、NTTがそんなにその需要に応えるためのネットワークの整備を急がないのも当然といえば当然です。
2 ネットワークの整備の仕組みについて
1: 需要があるから、また需要が確実に見込まれるから設備投資をする。このことを度外視して設備投資をすることは、民間企業ではできません。携帯電話の設備投資や普及をみればこのことは明らかです。この場合、最初の加入者のある程度の犠牲というか、過大料金はどうしても避けられません。このために、加入者の増加もネットワークの整備自体も遅れてしまいます。なにもこれは電気通信だけではなくて、電気・ガスのエネルギーや航空・鉄道・道路の交通などのあらゆるネットワークの整備に共通していえることです。
2: ですから、ネットワーク事業の料金や設備投資については、普通の事業と違った仕組みというものを考えないと日本は同じ過ちを繰り返すことになります。CATV事業をやってこられた皆さんには、このことは十分に経験済みのことと思います。
3: 日本におけるIT革命の急務は、まずインターネットの需要にたえうる大容量の電気通信ネットワークをどう整備するかということです。理想的には、大容量の光ファイバーを日本全国に敷設することです。光ファイバーも当初考えていたより相当安くなってきていますので、NTTの計画をかなり前倒しすることも可能になってきたとは思います。しかし、これに対する支援措置は必要です。
4: しかし、もうひとつ大切なことは、現にある大容量の電気通信ネットワークをインターネットに利用できるようにすることです。そういう意味で、CATV事業者がインターネットの接続業務をはじめたのは当然ですし、こういうことを他の電気通信ネットワークにもどんどん広めることです。たとえば、全国のCATV網を光ケーブルで繋げればCATV加入者は、大容量の電気通信ネットワークを利用することができるようになります。
3 ハードとソフトについて
1: CATVについてもよくいわれることですが、やはりハードとソフトの問題です。これは相関関係にあると思いますが、私はソフトの方が大切だといつも考えております。わが国の消費者は、いいソフトを買うだけの購買意欲もお金も持っていると思っています。私自身、Webサイトを開設してまだほんの一年しか経っていませんが、私のささやかな経験からいってもそういうことをいつも痛感しています。幸いにも政治家のWebサイトとしては、望外の多くのアクセスとヒット数をいただいておりますが、それはマメに更新をしていることと、双方向性に着目してBBS(掲示板)を置いているからだと思います。他の政治家のWebサイトを覗かしていただいておりますが、更新が多い少ないは別にして、BBSはほとんどありません。これでは、何のためのWebサイトなのか、見る方にしては興味半減なのではないでしょうか。いつも批判にさらされ、みんなの見ている前で議論することを、国民は政治家に望んでいるんですから。
2: 前にでた「網の文明」を出版するときも議論したのですが、情報の英語はinfomationだけではないのです。実は、inteligenceにも情報という訳もあるんです。CIAのIは、こちらの方です。インターネットは、このinteligenceを高めるための大きなツールにしなくてはならないのではないでしょうか。またインターネットは、これにむいている情報伝達手段であるように私には思えるのです。
3: 最後に、私が情報通信の勉強をするときいちばん多くを教えていただいた先輩から肝に銘じいわれたことは、どんなにすばらしい情報伝達ツールであろうがソフトであろうが、それが大衆に普及するためには適切な料金設定だということでした。どんなにいいものでも、所詮は可処分所得の範囲内でしか大衆は手にすることはできないし、しないということです。幸いにも、大衆の心は物からそうでないものに確実に変わっています。インターネットであれ、CATVであれ、大衆の心を掴むものがあれば確実に成長する産業として発展していくことでしょう。
 最近の政治について思うこと
1 加藤騒動がもたらすもの
1: 加藤騒動は、これからの日本の政治を考えるうえでかなり大きなことを意味します。
加藤騒動は、単に加藤氏に政治的に大きなダメージを与えただけでは決して済みません。加藤氏以上に大きなダメージを受けたのは、実は自民党だと思います。加藤氏本人の意思や言動を別にしても、加藤氏は自民党の改革勢力として国民の目には映りました。この改革勢力が国民が忌避する自民党執行部に鎮圧されてしまったことは、一部にはそれでもまだあった自民党への期待を完全に失わせることになりました。自民党に対する国民の気持は完全に醒めたものとなり、国民のなかで自民党に対する支持を訴える人は極端に減るでしょう。自民党を支持する人はある種の利害関係を持った特殊な人々という構図では、選挙で勝利することは困難となるでしょう。
2:自民党は、矛盾の多い政党であり多くの問題も抱えています。しかし、これを改革する力はまだあると思われてきました。また、現に振り子の原理を使って自民党は、これまでなんどか問題や難局を乗越えて来ました。
自民党の若い候補者が当選するために使ってきた常套句は、「自民党を改革する」ということでした。これが唯一の公約であり期待であった政治家が多くいます。これからも、自民党はこうして選挙を戦っていかなければならないのですが、自民党の若い候補者が有権者に対してこのような期待や幻想を抱かせることは難しくなりました。新しい政治家を補充できない政党に未来はありません。自民党や自民党の若い政治家はまだ気が付いていないようですが、これは自民党にとってたいへんなダメージなのです。
3: 日本の政治を変える━少なくとも自民党の政治を変えるといった加藤氏からも、公明党との連立をどうするという発言はまったくありませんでした。公明党との連立を批判する勢力が自民党にいなくなってしまったということです。自民党は永久に公明党と連立を組むのかという捉え方を国民はしてしまいました。このことにより、一時的であった反自民層の動きを完全な反自民層にしてしまいました。自民党は、実はこうした健全な保守層の支持があったから各種の選挙で勝つことができたのです。この層を失ったことは、自民党にとっては致命的なことなのです。
2 政治家主導の政治
1: 今回の講演のために中央省庁等改革推進本部のパンフレットを見たところ、今回の省庁改革の第一の柱として、
<政治主導の確立>ということがあげられていました。
ちなみに、第二の柱は「縦割り行政の弊害を排除」、第三の柱は「透明化・自己責任化」、第四の柱は「スリム化目標を設定」とありました。
2: 確かに、役人天国・官僚支配を拝し、行政を国民のものにすることはいまや国民のコンセンサスですが、果たしてどういう政治家がこの期待に応えることができるかということです。これは、システムの問題ではないと私はいつも思っています。政治家の質の問題です。でも、国民は果たしてこのようなことができる政治家を育てているのだろうかという疑問をいつも私は持っています。普通の政治家では、選挙に当選するために精力を費やしてしまい、官僚を支配しこれを使いこなす力を蓄えるだけの修練をしている時間などあまりありません。
3: 最後に、官僚支配を排すためには、国でいうならば大臣の就任期間はやはり問題です。役人がもっともおそれる人事権を行使するという武器は、現在の就任期間では使えません。もっとも最初から使う意思も能力もなければ一緒ですが…。
地方についていえば、知事・市町村長の場合、すくなくとも数人のスタッフと一緒に乗り込まなければ、その地方自治体の官僚組織を使いこなせることはなかなか難しいのではないかと思います。21世紀の政治のために、即断行すべきことは簡単なところからいっぱいあります。
(以上) |