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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年5月15日 火曜日 (第64回)
テーマ
「リストラされて、家賃を滞納しています。立ち退きまでの猶予期間はありますか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日この時間は、「ごごばん!法律クリニック」。ごごばんリスナーの、あなたの法律の問題についてお話を伺います。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の白川勝彦弁護士です。今日も、宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願い致します。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | それでは、今日の相談内容、早速ご紹介いたしましょう。匿名希望、45歳の男性からのメールです。 |
増山 | 私は、賃貸アパートに一人暮らしをしています。今から半年前に会社からリストラされ、今は無職のため、現在三ヶ月分の家賃を滞納していて、アパートの大家さんから、これ以上滞納が続くと立ち退きと言われています。現在仕事を探していて、仕事さえみつかれば、滞納した家賃はすぐにでも支払いたいと思っていますが、アパートの立ち退きまで、どれくらいの猶予期間があるのでしょうか? |
上柳 | 家賃は払う意思はあるんだけど、仕事が無い。でも、三ヶ月経ってしまった。困った状況ですね。 |
白川 | そうですね。今日の質問は、極めて具体的で単純なんですが、結構こういうことで悩んでいる人、多いんですよね。 ここで、いくつか述べたいと思うんですけども…。 基本的には、私も弁護士になりたての頃、土地とか建物の賃貸借に絡むことは、やらされました。最近は、こういうことやっていないので、あんまり詳しいことは分からないんですけども、少なくても3〜40年前は、とにかく、賃借人の立場は非常に強かったですね。そういう場合でも、家賃を払わないと、したがって貸している方が出て行って下さいというようなことについては、かなりはっきりしていましたね。あくまでも、賃貸というのは、貸して対価を取ることが目的ですから、本来の家賃を払ってくれなかったら、そもそも、賃貸する目的がなくなるわけですから。一ヶ月だけ遅れたからもう出ていけ、とはなりませんけど、比較的そういう場合でも『家賃は払いなさい』と。『払えなければ、出なさい』と。 基本ですからね。『買うんだから、代金払って下さい』と。『代金払ってくれなかったら、これ渡せませんよ』と、同じような問題なんですね。 しかし、一方では、大家さんには罪も何もないんですが、リストラされて払うお金が無くなると出てこないというのも、また現実にありうることだし…。大家さんに責任はなくても、現実には、住むところが無いというのは、大変な問題ですよね。 ですから、2〜3年前リストラされて住むところがなくなったというようなことを含めて、色んな制度が出来まして。とりあえず、住むところが無いということに関しては、家賃を補助してあげますよとか、出してあげますよとか、かなり出ましたよね。ハローワークでも、そういうことに対応している制度もあるので、まずは、大家さんには関係ないことなんだから、家賃を払ってやることが大事ですから。そういう制度があることはあるんだから、お住まいの市役所なんかに行って、『こういうケースなんだけども、助けてくれる制度はないですか』というのを、相談にいかれることをオススメしますね。そうすれば、大家さんとしてはどういう形であれ、払ってくれればいいんですから…。 さて、それが出来ない場合どうなるかということで ── ご質問には、『立ち退きまでに、どのくらい猶予期間があるんでしょうか』と。そういうことを、何ヶ月間は大丈夫ですよというような規定は、ないですね … 借地借家法には。 基本的には、家賃を払うのが当然であって、払えなかったら、契約を解除されて出ていかなければならないということなので。これも同じことなので、出て行かなければならないということと、移るべき所がないわけで、そこも、タダで勝手に … 住居に不法に侵入することになりますから、そうはできませんよね。だから、強制的に出されるのは、いつかということですが、自分で出ていく分には、出ていけばいいんですが、要するに、出て行くにもどこか借りるのにもお金が必要でしょ。それがあるくらいだったら、とりあえず遅れた家賃を払うのも出来るわけですが。 だから、払わなかった場合、強制的に出ていかなければいけないのはいつかということが問題になるんですね。 それが、あえて言えば、強制的に出されるのはいつでしょうかと。強制的に出されるというのは、大家さんの方は判決をもらって、『家賃を払わないから、賃貸契約は解除されたよ』と、裁判所の判決で『退去しなさい』という判決があって ─ 判決が出て、そうしなさいということだけども、移りたくても移れなかったら、現実には出て行くところがないですね。その場合、どうなると思います? 判決はもらった、と。負けちゃったと。裁判所は、『出ていけ』と、判決に書いた、と。その場合、強制執行になるわけですよ。 |
上柳 | となると? |
白川 | 執行官が来て、荷物をまとめて、どこか持っていかなきゃいけないわけです。それを、大家さんが来て、勝手に持って行ってどっかに売っちゃったら、別の問題が出てきますから。 |
上柳 | 執行官と言う人がいるわけですか。 |
白川 | 大家さんが訴えて、裁判が確定して『出て行きなさい』と。 |
上柳 | 手順としては、色々段階踏まなければいけないんですね。 |
白川 | 大家さんが裁判を起こしたとしても、僕の感じでは、4〜7ヶ月の間に大家さんが出て行って下さいという場合に、初めてそういう事態になるってことじゃないでしょうか。 だから、法律上は、早く出ていかなければ … 契約上の義務なんだけども、しかし、移りたくても移る場所が無い、と。それでも、大家さんの方が、空けてもらわなければ、次の人にも貸すわけにもいかないわけですから。手続きが全部終わるためには、ある程度かかりますよ、ということですね。 ただ、その裁判をやるにしろ、執行官に頼むにしろ、費用がかかるわけですから。だから、大家さんだって、『払わなかったら、出て行きなさい』と、勝手に荷物をまとめて、どこかに放り投げるわけにはいきませんから。 だから、大家さんにしても、恨みがあるわけじゃないんです。家賃をもらわなかったら、自分の財産に入ってこないわけでしょ。だから、一生懸命こういう理由なんだって説明すれば、大家さんの方も、早く仕事があればいいですねということで。誠意を持って話をすれば、ある程度は、現実には猶予はあるとみていいんじゃないでしょうか。 |
上柳 | あとは、自治体にそういう補助・援助があるかもしれないから ─ 努力・アクションを起こすといい、ということですね。お時間でございます。白川勝彦弁護士でした。どうも、ありがとうございました。 |
白川 | 失礼いたしました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第63回 | TOP[t] | 第65回