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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2012年4月17日 火曜日 (第60回)
テーマ
「クレジットカードの名義を貸しても大丈夫なのでしょうか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 毎週火曜日のこの時間、「ごごばん!法律クリニック」です。ラジオの前のあなたの法律の問題について、お話を伺います。スタジオには、白川勝彦法律事務所所長、弁護士歴40年の白川勝彦弁護士です。今日も、宜しくお願い致します。 |
白川 | どうぞ、宜しくお願いします。 |
増山 | 宜しくお願いします。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | 今日も早速、ご相談内容です。タダシさん、28歳の男性からの、このメールです。 |
増山 | 少し前から、友人に、『クレジットカードの名義を貸して欲しい』と言われています。昔からの友人なので助けてあげたいと思うのですが、不安もあって困っています。名義を貸しても、大丈夫なものなんでしょうか? |
上柳 | 名義貸しというのはあんまり良いイメージがなく、また、法律的にどうなんだ、と…。貸しちゃった日には、大変なことになると思うんですが。 |
白川 | 気持ちはわかるんですけど。現実問題としては、そう簡単に名義を貸すなんてことは、今、出来なくなっております。 |
上柳 | 自分が、色んな事情があってカードが作れなくなっちゃって、『作れないから、頼む!』と、いうことですよね。 |
白川 | そういうこともありますからね …。今、確かに相対での取引って、少なくなってきていますよね。特に、ATMなんかで支払ったりとか。 ただ、この世の中は、基本的には契約自由の大原則であって、契約が成立して初めて、義務が発生したりするわけですね。ですから、表面上は、昔のような相対取引じゃないんだけども。 |
上柳 | 相対取引というのは、簡単に言うと…? |
白川 | 相対取り引きというのは、「直接これ売って下さい・買います」「現金半分払います・残りは後日払います」という … はっきりしていますよね。ATMを通じて、借りたり、返すから。だから、借りた借りないというのも、相対に比べたら機械相手ですから。 ただ、大原則はあくまで、当事者間の契約が成立して初めて、支払い義務がある ─ あるいは、貸してもらえるというのがあります。 ですから、出発点は非常に厳格なんです。表面上は関係ないようだけど、カードを作る時とか、暗証番号を含めて、少なくとも、この10年間くらいは、金を貸す方もクレジットを組んだりする方も、一番最初の契約の成立は、極めて本人確認を厳格にやっています。ですから、現実には、この方はまだ28歳だから、友達も若いからかもしれませんが……『悪いけど、お前の名前借りて、カード作るけどいいか?』と、出来ると思ってるのか知りませんが、簡単にはそうは出来ません。 現実問題には、いま本当に友達がカードを作るということについては、クレジットを組むほうも厳格な手続きをしますから。 |
上柳 | 勝手には出来ない、と。本人確認がある、と… |
白川 | ところが、現実にはこういうことが結構あるんです。と、いうのは、タダシさんが実際会社に行って免許証を出したりして、カードを作るわけですね。そして、100万までは貸しましょうとなれば、カードを作って、そのカードを渡して、『暗証番号はこれだからね』と言うと、そこから先は、ATM相手でも真正なカードが入って暗証番号が入れば、貸す方はその当事者が来たと思いますから、推定されるわけですね。ですから、実際金が振り込まれたり、ショッピングが出来たりするんです。クレジットを通じてキャッシングもできます。 ただ、それはあくまでも真正なカード、それから、暗証番号がちゃんと入った場合の話で。その場合は、相手方としては無理が無いですよね。『その人が借りに来た』と。 これを、法律的にはどういう風に返すべきか、ということなんだと思うんですが、要するに、私の代わりにこのカードを持って行って、かつ暗証番号を打ったら、私が行ったものと言うことにして、代理権を与えたという風にみられるんじゃないでしょうか。私の代わりに代理したとみなされて──実際は、この方の場合は、ご本人が取引したとみなされて、通常は、責任を負わなければならない。 |
上柳 | やっぱり、そうでしょうね。 |
白川 | 私も、それこそ色んな人と何万件と取引しているけれど、殆どの場合、こういうケースですね。『自分が作ったんです』と。困ってるからこのカードで、暗証番号はこれだよと言って、その貸した人が50万借りました、100万借りましたというケースの場合で。『私には責任が無いですよ』という人は、滅多にいませんね。それは、本人も私の代わりに借りてもいいよということですね。 ただ、本当にこの質問とは関係ないですが、自分のカードを盗まれちゃった …… 暗証番号も書いたりしてたりten |
上柳 | 生年月日で、分かりやすくしちゃったりとか。簡単に分析できるもので、当たっちゃったとか。 |
白川 | という場合に、本当に法律的にどうかというと、それは、『カードは盗まれた』と。暗証番号も、別の方法で知られちゃったという場合は、法的責任は負わないと思います。 |
上柳 | そう願いたいですけど… |
白川 | ただし、最初からどんと丸々借りたりしないで、途中から借りたりした場合は、請求書が来たりしますよね。それから払わなければ、催告書が来ますよね。 まず、カードが盗まれたなら、普通は早めに届けるのが義務じゃないですか。まずは、それをしなかったじゃないかと。それから、『途中で、ちゃんと請求書出してますよ。それに対しても、クレーム付けませんでしたよね』と、いうようなことで、この場合も、責任はある程度負わなければいけないところはありますが、大本は、本当にカードを盗まれた、と。暗証番号も、なんだか知らないけど、勝手に知られちゃったという場合は、法的には無責任だと思います。 ただ、ここで、『昔からの友人なので、助けてあげたいと思うのですが、不安もあって困っています』と。基本的には、止めた方がいいということですね。と、いうのは、保証は、できるだけならない方がいいですよと前に申し上げましたが … ただ、保証の場合は、50万とか100万という金額について保証するだけですから。ところが、このカードを使って借りるというのは、いくら借りるかもわからないじゃないですか。今は規制がありますから、そんなに貸せませんけど、原理的には、いくら借りるかもわからない。だから、保証よりももっと、危険と言えば危険ですよ。 |
上柳 | 安易に、そういうことをやっている方もいらっしゃるわけですか … 白川さんの所に行く人がいる、ということは。 |
白川 | さっき言った通り、カードを自分で作って、それを他人に預けて、『どうぞ、これを使って借りていいよ』と。『でも、返すのもお前がやれよ』というようなのは、結構あります。結構いるんですよ。だから、これもやめた方がいいと思いますね。 |
上柳 | 確かに、そうですよね。お時間でございます。法律に関するご相談がございましたら、お待ちしてます。白川勝彦弁護士でした。どうも、ありがとうございました。 |
白川 | どうも、失礼いたしました。 |
増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー (文中敬称略) | 第59回 | TOP[t] | 第61回