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ごごばん! デイリースペシャル 〜法律クリニック〜 2011年7月19日 火曜日 (第24回)
テーマ
「債務の弁済は第三者でも出来ますか?」
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | ラジオの前のあなたの法律問題についてお話を伺ってまいります。「ごごばん! 法律クリニック」スタジオにはお馴染み、白川勝彦法律事務所・白川勝彦弁護士です。今日も宜しくお願い致します。 |
白川 | こちらこそ、宜しくお願い致します。 |
堀・ 増山 | 宜しくお願い致します。 |
話者名 | 話の内容 |
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上柳 | それでは早速、今日の相談内容ですね。今日は、匿名希望の男性からのメールでございます。 |
増山 | 実家で一人暮らしをしている父が、消費者金融など数社から借金をしていることが分かりました。その中に、私の名前が保証人として使われているものがあったようで、それで父の借金が発覚しました。なんとか借金を整理したいと思うのですが、父親は変なプライドがあるのか「大丈夫、大丈夫」と、聞く耳を持ちません。また、私が返済したいところですが、私自身もお金に余裕はありません。例えば、私が代わりに父親の借金を債務整理することはできるのでしょうか? |
上柳 | 身内の借金、しかも保証人ですか。これは白川さん、なかなかややこしいことですけど。どうなんですか? |
白川 | よくあるケースかと思いますが、法律的には、大きく言って3つくらいの問題がありますかね。 まず1つは、その中に「私の名前が保証人として使われてるものがあったようで、それで発覚しました」というようなことですよね。ということは、このお父さんの借金、この息子さんは保証人になったのを承知してないということじゃないでしょうか。 |
上柳 | 知らない間になっていた、ということですよね。 |
白川 | それは堀さん、どうでしたっけ? 保証契約というのは、どういうことでしたっけ。 |
堀 | 勝手にやったというのは、本人が印鑑押したわけでもなく、署名したわけでもないということですよね。それだったら… |
白川 | 保証人になるというのは、誰と誰との契約でしたっけ? |
堀 | 金融会社と自分との… |
白川 | あくまでも、そうですよね。お父さんは関係ないですよね。だから、ご本人が知らなければ、父親と息子であろうが、奥さんと夫であろうが、親子であろうが、そういうことは関係ないわけです。自分が貸した消費者金融会社に保証しますよという判子を押すなり、署名するなりしてなければ、もう基本的には、契約そのものが成立してないのですから。 |
堀 | 借金が発覚しましたってことは、きっとちゃんと払ってないってこと…? |
白川 | そういうことじゃなくて、いくつか借りてるのが分かった、と。それで、債務整理したらどうですかということ言ったけども、お父さんは律義な人なんでしょうね。俺は自分でやるから「お前になんか心配してもらわなくっていい」ってことなんじゃないでしょうか。 それで、お父さんの借金ですから、なんとか出来れば返してあげたいと思うのでしょうが、息子さんがお父さんの借金を返すことは、どうでしょうか? これは出来るんでしょうか。出来ないんでしょうか。 |
堀 | 出来ると思います。 |
白川 | これ、出来るんですよね。民法に、はっきりとこう書いてあるんです。民法第474条「債務の弁済は、第三者もすることができる。」ただし書きでかいてありますけど、出来るんです。問題ないと思います。 ですから、こういうことが結構あるんです。息子さんが色々問題を起こしていなくなったと。しかし結局、元の住所は実家なので、貸した方が取りに来ますよね。『返して下さい』と。 |
上柳 | 『お宅の息子さんに、えらい目に会いましたよ』と。『お父さん、頼みますよ』と。 |
白川 | そうすると、お母さんなんかは、『いずれ払わなくちゃいけないんだから』といって、お母さんが払って。中には完済した人もいるんですよね。 もちろん、完済して、昔なんかはだいたい違法金利で払いましたから、過払い金が発生しますよね。そうすると『過払い金を取っていただきたいのですが?』というような息子さんもいるんですよ。 |
上柳 | あなたが返せよと? |
白川 | しかし、業者もしっかりしてまして。お母さんは返したんだから、もちろんお母さんと一緒になって請求すれば返しますけども、実際返したのがお母さんで送金したんであれば、やっぱりお母さんと話をして、そっちに返しますよと。 |
上柳 | 過払い金だけ息子が手に入れるのはねぇ… |
白川 | リーガルマインドってやつですね。法的精神で、やっぱりおかしいでしょうと。苦労して返したのはお母さんなんだから、お母さんが返してくれっていうなら返しますけども、息子さんが返してくれっていったって、ちょっとこれは業者の方も難色を示しますね。 さて、そこで、基本的にはこの場合だったら、お父様の借金だから息子さんが返すこと、それ自体はいいのですが、それがままならないということでの相談ですよね。だから、債務整理が出来るかということですよね。 親の代わりに返すのも出来るんだから…債務整理も第三者である息子さんが、出来るんでしょうかね、出来ないんでしょうか? |
上柳 | どうなんだろうな?? |
白川 | 債務整理というのは、債務の弁済じゃないですから。 例えば、減額してくれとか、それからさっき言ったように、過払い金があった、返してくれとか。あるいは、大変なら破産して欲しいとか。これはやっぱり基本的にはご本人でなかったら、ご本人の意思がそうでないと、出来ませんよね。 ただ、今回のお父さん『そんなことはしたくない』という風に言ってるんだから、やっぱりご本人が『俺が大変でも返すよ』と言っている以上、お父さんに『債務整理すれば、もっと少なくて済むかもわかりませんよ』と言っても、ちょっとこれは無理じゃないでしょうかね。 こういうケースじゃないんだけども、あまり意思がはっきり表示出来ないような場合に、奥様から『主人がそういう状態なんですが…』というような相談を、私達はよく受けます。 そういうのも出来ますけども、たとえ一言でも、『債務が、借金があるんですが、それをなんとかしたいんですね』というのを、僕らは必ず本人の意思を確認して。 ただ、細かいこととか分からないですから、細かいことは奥様に、『よろしいですか?』と、それだけ確認受けて。後は、委任状をご本人が書いてもらえれば大丈夫ですから。 この場合でも、お父さんは『俺は自分で返すよ』と言ってるけども、そう言わないで、息子さんが債務整理したほうがいいんじゃないか? という気持ちなんじゃないかな? |
堀 | 金利だけでも、勿体ないですもんね。 |
上柳 | お父さんを息子さんが説得するしかないでしょうね。 |
白川 | ですから、もしそういうことで、委任状をもらって僕の所に来たとします。それで、僕ら委任状だけ見てもすぐはやりませんけれども、お父さんに意思確認で『やりますか?』と聞きます。出来るならやって欲しいというならば、細かいことは息子さんと話をします。ですから、債務の弁済は出来る、と。民法に債務の弁済は、第三者もすることができると書いてあるので。 だからといってね、息子とか身内が債務整理まで出来るかというと、それはちょっと違うということですね。 |
上柳 | はい、お時間になりました。ということで、白川弁護士でした。来週も宜しくお願いします。 |
白川 | 宜しくどうぞ、お願い致します。 |
堀・増山 | ありがとうございました。 |
上柳昌彦氏・ 増山さやか氏 = ニッポン放送アナウンサー / 堀ちえみ氏 = タレント曜日パートナー (文中敬称略) | 第23回 | TOP[t] | 第25回