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FORUM21 2008年12月 通巻155号
特集 混迷深める自公政権&創価学会
なぜ自公“合体"政権は狂ってしまったのか!?
白川 勝彦 元衆議院議員・弁護士
魚は頭から腐る
魚は頭から腐る、という。人間も政党も政権も同じようである。考えてみればごく自然の理である。いずれも魚以上に複雑な生命体であるからだ。
自公“合体”政権の頭といえば、その筆頭はやはり麻生太郎首相なのであろう。私は麻生首相の漢字の読み違いをあげつらうつもりなどない。最近の日本人の“日本語”は乱れている。私だって読み間違ったり、書き間違えることもあるだろう。読み間違えは他人に指摘されないとなかなか気が付かないが、書き間違いは注意すればかなり防げる。ワープロで原稿を書くようになると、漢字を書き間違うということはなくなった。しかし、本当にこれで良いのだろうかと思い、私は以前よりも国語辞典で確かめることが多くなった。
変換ミスもあるが、それは単純なミスである。不注意であることが多い。ご愛敬である。しかし、変換ミスに気が付かず、それが正しいと思うようになると事態は深刻である。
最近の麻生首相の発言や行動を見ていると、自公“合体"政権は腐り始めていると感じざるを得ない。今回のテーマは「自公“合体"政権のどこが狂っているのか」である。そして「その狂いはどうして生じたのか」を究明することである。
文教族の関心事 ─ 歴史と道徳
まず「どこが狂っているのか」といえば、人によって意見は異なるであろう。そもそも私などは自公“合体"政権のすべてが狂っているのだと思っている。だからといって、そんなことを事細かく論ずる必要はない、と言ったのでは話にならない。気が乗らない作業だが、順次筆を進めることにする。
国語力の問題は止すことにする。ただひとつ指摘しておきたいことがある。麻生首相は若い議員のころ文教族であった。森元首相などと共に日本の文教政策を論じていたのである。彼らの関心事は、いわゆる“歴史教育"と“道徳教育"であった。日本語でも英語力でもなかった。しかし、歴史も道徳も言語を正しく解しなければ、これを正しく読み取ることも伝えることもできないのだ。田母神などというおかしな空華長が生まれた理由のひとつはここにあると思っている。だから麻生首相も浜田防衛大臣も同類なのである。
私は麻生首相と同じく昭和54年衆議院議員に当選した。宏治会という同じ派閥に長くいた。大蔵常任委員会にも一緒に長く在籍した。政治理念などについて語り合ったことはないが、その時々の政治問題を話すことはあった。そうした折、麻生氏は“われわれ経済人に言わせてもらえば…"というのが口癖だった。私は経済について門外漢なので御説を黙って聞いていた。経済が国政の中心課題になっている現在、麻生首相の経済に関する見識はどうも怪しい。
ある択一問題!?
- 麻生氏は安倍首相辞任と福田首相辞任に深く関与している。麻生氏は二人が辞任する直前に差しで会って自民党幹事長を引き受けている。ふたりの首相が政権を投げ出すことになった事態の責任者でもあるのだ。そういう事態(辞任)が到来することが読めないようでは、麻生氏はよほどの政治音痴ということになる。
- 麻生氏が二人の首相の政権投げ出しという事態を予測していて、自民党幹事長の職を引き受けたのだとしたならば、麻生氏はかなり腹黒い政治家ということになる。明るくおどけてみせる姿は、仮面ということになる。
Aなのか、それともBなのか。どちらが本当なのであろうか。私はAでもBでもないと思っている。その両方なのだ。政治音痴で腹黒い政治家のである。このことが判明すれば、国民や野党の対処方針は簡単であろう。
政治音痴で腹黒い政治家
これはあのバカバカしい自民党総裁選挙の真っ最中に私がある雑誌に書いたモノである。私の見方は間違っていなかったようである。
政治音痴ということは、政治の本質が分かっていないということである。目の前に座っている人が一ヶ月後に政権を投げ出すことを見抜けない人など政治家と呼べない。こんな人がもっともらしい事をいっても恐るるに足りない。腹黒い人ということは、人間として卑しいということである。志が高くないのである。だから平気で人を編す。そういう政治家のいうことに決して編されてはならないのである。自民党の議員も公明党・創価学会も編されたようである。いまになって臍を噛んでいるが、後の祭りだ。
アナクロニズムの極めつき
麻生首相は、就任以来言っていることもやっていることもハチャメチャである。漫画が好きだそうだが、麻生首相の言動はもうマンガである。私がいちばんマンガだと思う点は、時代認識が全くないことである。自民党がおかれている状況が全く分かっていないのである。衆参両院に自公“合体"政権が過半数を超える議席を持っているのならば、麻生首相はこれまでの総理大臣のように振舞っても好い。しかし、もう参議院で過半数はないのである。基本的には野党の協力を得なければ、何にもできないのである。しかし、この人はお爺ちやまの昔からゴ収権は自民党にしかないないのだ〃と錯覚しているのである。
このことを端的に示したのが、2兆円ばら撒きを発表した際の「3年後に消費税の増税をお願いしなければならない」という発言であった。3年後に自公“合体"政権は衆参両院で過半数を確保しているのだろうか。その目途は果たしてあるのだろうか。選挙のプロとして言わせてもらえるならば、そんなことはまずあり得ない。
現在は郵政選挙の遺産があるので3分の2条項を使えるが、これももう半年一寸の命だ。自民党と公明党で衆議院の3分の2を超える議席を獲得することなど不可能といって構わない。万事にわたり野党とよく話し合って国政を運営しなければならないのに、民主党の党首を「あの人のいうことは信用できない」といったのでは二進も三進もいかなくなる。こういう発言は時代認識が完全にアナクロだから出てくるのである。要するに政治音痴の然らしめるところだ。
批判精神を失うと知性は鈍化する。
麻生首相というか自公“合体"政権が“100年に1度あるかないか"という経済危機の中でやっている政策の目玉が“2兆円ばら撒き"である。正式には定額給付金というのだそうだが、これには国民も呆れている。その通知がくればほとんどの人が受け取るだろう。自分のお金なのであるから当然であるが、ただそれだけのことである。
総選挙は早晩くる。しかし、定額給付金を自公“合体"政権の成果だといって吹聴するのは、創価学会・公明党筋の人たちだけであろう。自民党公認候補の応援演説に立つ人は、そんなことを言わないであろう。たとえそんな演説しても聴衆が拍手喝采することはまずないであろう。
国民は賢いのである。ところが肝心要のわが国の首相はバカなのである。政治音痴なのである。そんな人物を圧倒的な多数で選出したのであるから、自民党も政治音痴でありバカといわざるを得ない。
もともと自民党はバカではなかった。政治音痴でもなかった。政治音痴な政党が50年以上も政権を保持できる筈がない。そうなったのは、批判精神を失ったからである。批判精神がなくなれば、知性は鈍化する。バカになってしまう。そういうことである。
自民党が批判精神を失ったのは、公明党と連立したからだ。末に交われば赤くなる。自民党は公明党と同じように批判精神を圧殺してきたのである。だから私は名誉ある自民党離党第一号となったのだ。議席は失ったが、批判精神と知性だけは失わずに済んだ。
自民党の断末魔は因果応報である。