戦争に関する原理原則!?
07年10月12日
No.578
福田首相がおかしな答弁をしている。衆議院の予算委員会における答弁である。以下は、いずれも asahi.com からの引用である。
インド洋での海上自衛隊の給油活動を違憲と論じた民主党の小沢代表に対し、自民党は質問を通じて反論。首相も「憲法違反にあたらない」との考えを鮮明にした。
福田首相は11日午前の衆院予算委員会で、自衛隊をアフガニスタン国内に派遣する可能性について、「まさに憲法で規定している問題につながる可能性がある。そのことを私たちは懸念している」と述べ、海外での武力行使を禁じた現憲法下では困難との認識を示した。民主党の小沢代表が、国連決議に基づいてアフガンで活動している国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊派遣を主張していることに、反対する考えを示した発言とみられる。
テロ特措法は、アフガニスタンにおける“テロとの戦争”を始めたアメリカ軍を中心とする部隊の艦船に給油等を可能に法律であった。テロとの戦争がひとまず終った後は、アフガニスタンで国際治安支援活動をしている部隊に対する給油活動をしているものと思われる。福田首相は、この国際治安支援部隊に自衛隊を派遣することは憲法に違反するという。一方では、アフガニスタンで国際治安支援活動を行っている部隊の艦船に給油することは憲法に違反しないという。あまり難しく考えなくとも、誰も「これはおかしい」と思う筈である。
刑法では、殺人などの犯罪の実行行為を直接行っていなくとも、その実行行為に加担した者は共犯者として罰せられる。加担の態様は千差万別だが、共犯者だからといって刑罰が実行行為者の半分になるというものではない。共犯者も実際に実行行為を行った者と同じ犯罪者なのである。福田首相もこの程度の知識はもっていると思うが、なぜ上記のような矛盾した答弁をするのだろうか。それは戦争というものに対する単純な認識がないからである。
戦争とは、ある国家が他の国家に対して武力を行使することである。特定の目的が達せられれば戦争が終結することもあるし、その国家・体制そのものの抹殺・崩壊を目的とする戦争もある。アフガニスタンに対する戦争も、イラクに対する戦争も両国の体制・政権を抹殺・崩壊することが目的だった。アフガニスタン戦争では、タリバン政権だった。イラク戦争では、フセイン政権だった。アメリカが目指したように、タリバン政権もフセイン政権も打倒され消滅した。
まず確認しておかなければならない。いかなる名目があるにしろ他国に対して軍隊という武力を行使する行為は、戦争である。そして他国に対して武力を行使する軍隊の後方支援をすることは、戦争の共犯者である。戦争を直接実行しているわけではないから、戦争には加担していないなどという言い訳は国際政治では通用しない。これは国際政治・軍事の常識である。だから、テロ特措法に基づきアフガン戦争を行っているアメリカ軍の艦船に対してインド洋まで赴いて給油をすることは、そもそも戦争加担行為なのである。これを戦争加担行為でないというのは、いくら美辞麗句を並べても所詮“詭弁”にすぎない!
戦争の結果、その国を統治していた政権が打倒されたり崩壊してしまうことがある。アフガン戦争もイラク戦争もこのケースである。いつもいっているように国家の最低限の目的・任務は、秩序の維持である。タリバン政権やフセイン政権が崩壊すれば、誰かがこの秩序の維持を行わなければならない。イギリスのカムデン卿がいったように「いかなる悪い政府も、無政府状態よりまし」なのである。アメリカはタリバン政権やフセイン政権という“悪い政府”を打倒・崩壊という戦争の目的を達成したのだが、その“悪い政府”でさえ行っていた治安の維持をはじめとする秩序の維持を行わなければならないのである。
戦争に完全に勝利したアメリカは、“悪い政府”が行っていた治安維持をはじめとする最低限の統治に責任をもたなければならないのである。それが戦争に勝った国の責任である。“あとは野となれ山となれ”では、ならず者よりタチが悪い。アメリカの要請に基づき軍事占領地域の治安維持・民生復興などの統治の支援活動を行うことは、戦争の最終段階における戦争加担行為なのである。この原理原則をキチンと踏まえていないから、冒頭のような頓珍漢な答弁になってしまうのである。民主党の小沢代表の「国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊派遣発言」が野党間に物議をかもしているが、以上の原理原則をキチンと踏まえれば解決は可能であろう。このように原理原則は、大切なのである。
それでは、また明日。