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暗澹たる思い

07年04月18日

No.399

暗澹たる思いで、いまこれを書いている。ふたつの衝撃的事件が昨日起きた。いうまでもなくアメリカ・ヴァーニア州のヴァージニア工科大学で起こった銃乱射事件と伊藤一長長崎市長銃撃事件である。ヴァージニア工科大学の銃乱射事件では32人が殺害され、犯人(23歳の同大学の韓国人学生)は自殺した。伊藤市長は執筆の時点では、心肺停止の重篤状態で手術中である。犯人は指定暴力団山口組系水心会会長代行の城尾哲彌である。多くの人々が今回ほど銃による犯罪の衝撃を受けたことはないのではないだろうか。

多くの報道がふたつの事件を伝え、また今後報道するであろう。それに私が付け加えるものはないであろう。私がいま時点でいいたいことは犯罪一般ではなく、“銃による犯罪”の悲惨さということである。銃は攻撃用であろうが防衛用であろうが、人間を殺害するための道具でしかないということである。現代社会では、銃はそれ以外に何らの用途はない。問題はこのような“銃”を保有することの怖さである。銃が多く保有されていれば、このような事件は必然的に起こるのである。このような事件を防止したかったら、銃の保有を規制するしかない。

殺人は銃だけ行われる訳ではない。いろいろな物が人を殺す凶器となる。私たちが生活する上で必要な包丁やハサミも凶器となる。そんなことは百も承知している。しかし、銃の殺傷力は特別だということである。そのハンディ性も特別である。しかも現代社会で、銃はそれ以外にほとんど用途がないということである。そのような物を所持していれば、今回のような悲惨な事件が起きることを避けることはできないのである。こんな単純な事実をアメリカ社会はなぜ理解できないのだろうか

わが国の銃規制はかなり厳しい。一般の人々の間で銃が殺人の凶器となることはほとんどない。しかし、暴力団同士の抗争では銃が使われることは珍しくない。逆にいえば、暴力団は銃をかなり保有しているということである。暴力団が保有している銃が一般人に向けられることもある。暴力団は、銃などの危険な凶器を保有しているだけで反社会的である。警察は、暴力団の“刀狩”をしなければならない。暴力団が暴力団である所以は、彼らが持っている各種の武器である。

暴力団のもうひとつの特質は、銃などの武器の使用を平気で使用するということである。銃などの武器を平気で使うことを“組織の武器”としているが故に、暴力団は暴力団なのである。わが国の治安当局にとって最大の課題は、仮想のテロリスト集団のテロに対する取締りなどではなく、実態をすでに掌握している暴力団に対する取締りであろう。一般の国民に10万円以上の振込みをマネーロンダリングの防止ということで厳しく規制しておきながら、今回の伊藤市長に対する銃撃事件を阻止できなかったことを深刻に反省しなければならない。現在の治安当局の治安対策は、焦点がどこかズレている

今回のふたつの事件を起こした犯人の思想的・政治的背景などは、いまのところハッキリしていない。このことを捜査当局は徹底的に捜査してほしい。そのことが明確にならないと今回の事件について政治的な判断をすることは難しい。だから今日のところはこうした判断をあえて控える。しかし、選挙期間中に候補者を銃撃することは理由の如何を問わず許されない。 ただ暴力団について述べたことに関連することだが、国家や国際社会における“暴力装置としての組織”が軍隊であるということである。このことをこの際改めて指摘しておきたい。軍隊に多くの無辜の大衆が殺戮されてきた。これは歴史が証明している厳然たる事実である。そしてイラクでは、多くのイラク国民が殺戮されてきた。これは、現在進行中の事実である。

それでは、また明日。

追記 4月18日午前2時28分伊藤一長市長は死亡した。ご冥福を心からお祈り申し上げます

  • 07年04月18日 01時11分AM 掲載
  • 分類: 3.国際政治・外交

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