マスメディアの大本営発表ぶり
16年06月24日
No.1838
安倍首相は、今回の参議院選挙の争点を“アベノミクスへの審判”と国民に訴えた。そもそも、アベノミクスなる経済的概念は、存在しない。安倍首相本人とその追従者たちの間だけで通用している、造語でしかない。ところが、わが国の大手マスコミは、アベノミクスをさも実態のあるモノとして使い、その是非を真剣に論じている。バカバカしくて、話にもならない。
安倍首相は日銀総裁に黒田某を任命し、異次元の金融緩和に踏み切った。資本主義経済においては、通貨の供給量を増やせば一時的に景気が良くなることは、ごく自然の理である。しかし、それは覚醒剤で元気が出るようなものである。もちろん、それは錯覚であり、その中毒は、深刻な害毒をもたらすことになる。最大の害毒は、通貨の信用不安である。
異次元の金融緩和は、“黒田バズーカ砲”などと喧伝され、円安を齎した。輸出企業が多いわが国では、円安のお陰で株高となった。しかし、わが国はいまや輸入大国でもあるのだ。円安は、国際的にみれば日本国民の資産の減少となる。少しでも外貨を持っていれば、このことは良く分かる。ところが、この単純な理屈を知らないマスコミや国民の多くは、“アベノミクス”があたかも自分たちに良いモノだと錯覚させられた。
ところで、イギリスのEU離脱で、アベノミクスの第一の仕掛けである円安・株高が、突如として崩壊してしまった。皆さん、想定外だったといっているが、これまでの世論調査で、その可能性は十分あったのだ。最近、何か起こっても“想定内の範囲”という弁解が聞かれる。しかし、ある出来事が起きた時、その現象が意味することを深く分析するのは、極めて大切なことなのだ。
今回は世界中のメディアが、イギリスのEU離脱を読み違えた。安倍首相のお友達であるキャメロン首相は、即刻辞意を表明した。ところで、わが国の全新聞社が世論調査の結果と称して、「改憲勢力は3分の2をうかがう勢い」と一斉に報じた。そもそも、公示日と翌日に世論調査を行う理由はいったい何なのであろうか。新聞社の使命は、まず、今回行われる参議院選挙の政治的意味を報道することであろう。
自公“合体”政権の最大の目玉であるアベノミクスの根底が崩壊したその日に、わが国の全新聞社が「自公“合体”政権は圧倒的勝利」と報道するわが国の、この異常さは、明らかにおかしい … いや、狂っていると言った方が良い。私が、昨日の永田町徒然草No.1837「<拡散希望> 安倍晋三、敗れたり! 野党共闘・国民が勝利する四つの根拠」で述べたことは、私の単なる思い込みではない。30年の経験とデータに基づいているのだ。
橋本龍太郎首相・加藤幹事長の下で行われた、平成10年参議院選挙の歴史的惨敗を予想してくれた新聞社など、ひとつもなかった。その時の官邸は、現在のようにマスメディア工作などしていなかった。現在の官邸は、マスコミを牛耳っている。そんなマスコミの世論調査は、「世論調査ではなく世論誘導操作」以外の何物でもない。わが国民は、こういうマスコミとも闘っていかなければならないのだ。頑張れ、日本国民!
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。