ヘッダバイパス[j]ump
liberal-shirakawa.net 白川勝彦 Webサイト (HOMEへ)
白川勝彦へメールを送る
永田町徒然草を閲覧しています
自薦論文を閲覧します
白川文庫を閲覧します
フォトエッセイ即写一言を閲覧します
永田町徒然草
自薦論文
白川文庫
フォトエッセイ 即写一言
プロフィル
リンク

 

あの日から5年 ── その日の私は(2)

16年03月12日

No.1816

< 永田町徒然草No.1815からつづく>

彼女は急いで実家に連絡を取ろうとしたが、携帯電話も有線電話も繋がらなかった。彼女だけでなく、事務所全体に「これは大変だぞ」という緊張感が走った。他の職員全員も、私の部屋のテレビの前に集まってきた。そこに、仙台市の隣の名取市上空を飛んでいたヘリコプターからの映像が、映し出された。災害報道のために飛んでいたのか、たまたま名取市上空を飛んでいたヘリコプターなのか分からないが、沖合から陸上に向かって津波が押し寄せてくる様子が映し出された。

津波が、どんどん押し寄せてくる。道路には、多くの自動車が走っている。その自動車に乗っている人々が、津波が迫ってきているのを知っているのかどうかは、私たちに分からない。しかし、それより海側の道を走っていた自動車は、みんな津波にのみ込まれていった。それを見ていた事務所員は、「危ない、危ない。早く逃げて、早く逃げて!」と、叫んだ。津波は、非情にも次々と自動車をのみ込んでいった。私は、津波の恐ろしさを初めて、この目で見た。たぶんこれは、事務職員の皆も同じだと思う。

東京全体も、同じ思いだったのだろう。東京も、急に慌ただしくなってきた。道路は自動車で溢れ、列車のダイヤも乱れ始めた。白川勝彦法律事務所も、何らかの対応をしなければならない。私は事務職員を集め、こう伝えた。「歩いて自宅に帰る自信のある人は、自宅に帰りなさい。その自信のない人は、今晩は事務所に泊まりなさい」。恐らく、午後4時頃だったと思う。半数は自宅に向かい、半数は事務所に残ることになった。食べ物は用意しておいたから、何とか大丈夫だ。

テレビを見ていると、大異変だということが次第に明らかになっていく。特に、津波の被害が大きい。前出の名取市の映像は、かなり上空から映した映像だが、夕方頃からは、気仙沼市や石巻市などからの映像が次々と入ってきた。津波というものの実態を知らない私たちには、まさに信じられない映像であった。事務所居残り組の職員とテレビを見ながら、いろんなことを話した。皆、それぞれの思いを持ったことだろう。

あの日は、金曜日だった。私の家に、お手伝いさんが来る日だ。お手伝いさんは遠いので、帰れない。家内も、自宅にいる。白川勝彦法律事務所と自宅は、道なりで5キロ弱だ。そうすると、私は自宅に帰らなければならない組である。もちろん、帰る積もりでいたが、道路の状況を見ると、とてもタクシーは拾えない。私は夜になれば大丈夫と思っていたので、居残り組の人たちとテレビを見ながら、あの大災害についていろんなことを話した。

夜9時頃になっても、交通渋滞はますます酷くなるばかりだ。地下鉄は、既に止まっていた。もう、歩いて帰るしかない。私はシッカリと着込んで、自宅に向かうことにした。白川勝彦法律事務所を出ると、大勢の人が赤坂方面に向かって歩いていた。こんなに大勢の人が列を成して歩いているのを見たのは、初めてだった。私も、その一人だ。途中、赤坂見附の飲食店が並んでいる田町通りを歩いた。会社の同僚と思われる人々が、テーブルを囲んで話している。きっと明日が土曜日で休みだからだろうか、いろんなことを話しながら、けっこう楽しそうに飲んでいた。

この夜は、ひどく寒かった。私は、正直言って赤坂見附辺りでしんどくなった。バイクに乗ったお兄さんがいたので、乗せてとよほど頼もうかと思ったが、私にその勇気はなかった。赤坂見附から自宅のある青山までは、2キロくらいだ。昔なら何ともない距離だが、本当に辛かった。青山通り(国道246号)の歩道は、渋谷に向かう人たちが溢れていた。

3時間くらいかかって、ようやく自宅についた。家内もお手伝いさんも、意外に平静としていた。自宅の様子を聞くと、確かに揺れはあったが、ドシンなどといった衝撃はなく、落ちたり壊れたりした物もなかったという。帰りの列車は動いていないので、お手伝いさんは、今晩泊まるという。3人でテレビを見ていても、結局話は津波の凄さ・恐ろしさに尽きた。

私は疲れたので、明け方頃に寝た。津波と同じくらい大きな被害を齎らすことになる東京電力福島第一原子力発電所の事故のことは、この日はほとんど話題にならなかったと記憶している。ところが、官邸では、これに天てこ舞いしていたのだ。昨日のTBS-NEWS23は、このことを詳しく報じていた。初めて知ることも多く、非常に参考になる、秀逸の内容だった。これを見たら、原発再稼働などとても、正気の沙汰ではないのだ。

<取りあえず完>

それでは、また。

  • 16年03月12日 12時00分PM 掲載
  • 分類: 1.徒然

白川勝彦OFFICE   白川勝彦へメール送信 ]

Valid XHTML 1.0 TransitionalValid CSS!Level A conformance icon, W3C-WAI Web Content Accessibility Guidelines 1.0

Copyright©K.Shirakawa Office 1999-2016 - Web pages Created by DIGIHOUND L.L.C. All Rights Reserved ©1999-2016
Powered by Nucleus CMS. Page designed by James Koster.Ported to Nucleus by Joel Pan. Re-design and adjusted by DIGIHOUND L.L.C. © 2006-2016