アメリカのchange
08年11月06日
No.982
昨日の永田町徒然草をupdateして、私は事務所に出た。すでにテレビではオバマ当確を打っていた。333代議員を獲得した報道が流れたのは正午過ぎだっただろうか。圧勝である。白川勝彦法律事務所は忙しかったが、私はできるだけテレビで大統領選の映像を食い入るようにみた。時々入る解説・特に日本関係者のコメントには、ほとんど興味なかった。ハッキリ言って“ウザ”かった。
オバマ氏の勝利は、生身の人間がいろいろな想いを込めて戦った“想像を絶する膨大な行為の集積”の結果である。まずそれを素直に受け入れ、じっくりとみることが必要である。そんなに簡単に分析したり、解説する必要はない。私はオバマ勝利に涙する支持者の顔をできるだけみたかった。多くの黒人の支持者が涙していた。流れる涙には“万感の想い”があるのだ。あの涙の意味が分からない者には、今回の大統領選の意味を語る資格はない。
メディアは盛んに“黒人初の大統領”と繰り返していた。私にはちょっと耳障りだった。オィオィそれはちょっと違うのではないかと感を禁じ得なかった。“黒人初の大統領”を選ぶということに、アメリカ国民はそんなに重点をおいていたのだろうか。黒人もそんなに力点をおいていたのだろうか。彼らはもっと大きなことにchangeしたのである。株価と選挙の予想はしない方が政治的には無難である。だから永田町徒然草では滅多にしない。しかし、私は2008年6月5日永田町徒然草No.829「Can You Change ?」で次のように書いた。
Yes,We Can.
オバマ氏はたぶん大統領になるであろう。アメリカ国民にマケイン大統領という選択はないのではないか。困難だがアメリカの能動的な選択としてはオバマ大統領という選択しかないのではないか。Changeと“Yes,We Can.”というキーワードがそのことを象徴している。アメリカ国民はその国と世界を変革したいのである。アメリカ国民がどのような変革を決断し、実際にどのように変わっていくのかを自信をもって予測する能力は私にはない。しかし、そのChangeは私たちが考えるよりかなり大きなインパクトがあるという予感がする。
「アメリカ国民がどのような変革を決断し、実際にどのように変わっていくのか」は、いざとなると意外に困難が伴うと思う。国民の変革の想いをどのように受け止め、オバマ大統領がどのようにリードできるかがこれからの課題である。日本人もオバマ大統領に希望することを遠慮なく言わなければならない。ブッシュ大統領の片割れである自公“合体”政権には、既に日本国民の想いを伝える資格がないのである。オバマ大統領はおそらく素直に受け止めるであろう。そうでなければオバマ大統領はアメリカ国民からも見放されていくであろう。
世界中の黒人の意識が大きく変わる。アメリカにおいても世界においても黒人の多くは貧困に喘いでいる。黒人だけではなく貧困に喘ぐ人たちの意識も大きく変わる。困窮者が国際社会において貧困を齎す者を告発する。世界中において貧困に対する闘いが始まる。「そのChangeは私たちが考えるよりかなり大きなインパクトがあるという予感」とは、そういうことだと私は思っていた。貧困との闘いは、本来夢のある仕事なのである。その闘いは苦しいが、戦争をするよりはるかに楽しい。莫大な有効需要がそこから生まれる。バーチャル経済から脱却する唯一の道だと私は思っている。
正直いっていま私はいささか興奮している。興奮は一日中続いている。それは変革を求めて長い間政治の道を歩んできた者だからであろう。変革は政策ではない。変革は利害損得でもない。政治的変革はもっと思想的なものである。アメリカ人はあまり思想を好まないので、人間的・エモーショナルなものと言っておこう。オバマ氏は選挙戦ではあまり政治的に重要なことを言っていない。オバマ氏が多くの人々の心を掴んだのはあのチャレンジ精神である。不撓不屈の闘争心である。わが国の民主党はたぶん浮かれるであろうが、見習ってもらいたいのはオバマ陣営のあのチャレンジ精神と努力である。
それでは、また。