“木の芽”と“熊汁”
08年05月05日
No.797
昨日予定通り十日町市に来た。列車の方は心配していなかったが、驚くなかれガラガラだった。というより私が乗った号車の乗客は私一人であった。これには私も驚いた。臨時列車のせいもあったが、上越新幹線で何百回となく往復してきたがこんなことは初めての経験だ。たった1日の違いだが、雲泥の差だ。世の中なかなか上手くいかないものである。
私が十日町市に着いたのは午後3時過ぎであった。当初予定していた山菜パーティーが1日早まってしまったので、会場決めや山菜の調達などは新幹線の中から電話で打ち合わせをした。十日町市に着いてから大車輪の活躍であった。山菜の王者“木の芽”は、友人が山から採ってくれていた。しかし、いくら“木の芽”が山菜の王者だからといっても、それだけではやはり寂しい。ワラビはまだ採れないようである。ゼンマイは盛りだが、これは生で食べる山菜ではない。ウドは盛りらしい。そうなるとどうしてもウドが欲しくなる。
十日町市のちょっと在の方に嫁いだ姉に、ウドの手配は新幹線の中から頼んでおいた。なんとか手配できたとのこと。姉の亭主の見舞いに暫く行っていなかったので、病気見舞いを兼ねて甥っ子と出かけた。姉と会ったのは久々だったので、いろいろな話をした。4番目の姉であるが、もう82歳になったという。私よりも19歳も年上である。姉の嫁いだ近くにニワトリの有精卵を売っている養鶏所があることを思い出した。“木の芽”食べるとき、溶(と)いた生卵と一緒に食べると美味しい。
洒落た高級な食べ方は、ウズラの卵をかけていただく。しかし、溶いたニワトリの卵でいただくのが一般的だし、美味しい。そう、スキヤキを食べるときの要領である。いちど有精卵を溶いたもので“木の芽”いただいたことがあった。それを思い出したのだ。狭い地域なのでその養鶏所はすぐに判った。運良く卵はあった。2ダース買い求めた。2ダースで900円だった。スーパーで売っている物よりも高いが、価値は十分すぎるほどあった。有精卵を溶いたものでいただいた“木の芽”は格別に美味しかった。
本日の山菜パーティのメインデッシュは、前から“熊汁”と決まっていた。狩猟の資格をもっている友人が、5月の連休に帰ったときに食べさせくれると約束していたのだ。有害駆除として今年の冬に獲ったのだ。私はこれまでに何度か熊の肉を食べたことがあるのだが、そんなに美味しかったという記憶がない。気のおけない友人なので率直にそのことをいったのだが、それは料理の仕方だというのである。煮かたが難しいのだそうだ。
5時半過ぎ友人から「“熊汁”が出来上がったぞ」という連絡が入った。“熊汁”と友人を乗せて会場を頼んだ従兄弟の家に向かった。“木の芽”は茹でてあったし、山菜のてんぷらも出来上がっていた。あとはいただくだけである。東京を出かけるとき小雨が降っていたが、関東も十日町地域も凄くいい天気であった。30度近くあった。夏という天候であった。まずはビールだ。とても美味しかった。
下戸の私は、ビール1杯で十分なのである。あとはひたすら山菜とそのてんぷらをいただいた。私は“木の芽”を腹一杯いただいた。山菜のてんぷらも、美味しかった。そして、“熊汁”がまた、美味しかった。肉は程好く煮込まれており、脂身は濃厚だが脂っぽくない。さすがマタギ仕込みの料理は旨かった。狩猟をする人は、仕留めた獲物を大切にするのだ。天の恵みとしてひとつも無駄にしないのである。マタギ料理もそのひとつだという。食べかつ呑み、そして夜遅くまで語り合った。こうして私の連休の第1目は過ぎた。
それでは、また。