泰然自若として、わが国と国民の本当の利益を守ることを考えよ。
16年11月12日
No.1876
トランプ候補の当選という事実は、いろいろな情勢や人物の本質・本性を明らかにしてくれた。政治は、正しい情勢分析をした上で、適切な判断をしなければならない ─ これが大原則である。人物の評価は、想定外の事態が起こった時に、その人がどのように捉え、いかなる行動をしたかによって定まる。トランプ当選という事実が起きた。わが国のマスコミは、ネチネチと報道した。その結果、いろいろな人物の本性が明らかになった。
まず安倍首相だが、彼は明らかに狼狽した。そもそも、安倍首相の周辺にアメリカの大統領選を正しく判断するブレーンがいなかったことを、暴露してしまったのだ。選挙予想というと博打のように思われる方もおられるが、選挙は、サイコロの丁半を当てるゲームではないのだ。大勢の人間が何かを求めて行う、極めて人間的な営為なのである。人間の営為について、正しい判断ができない者は、政治を語る資格がないことを意味する。政治の対象は、人間の営為だからである。
政治的な判断を間違ってしまった場合、いちばん大切なのは、慌てないことである。少し立ち止まって、「自分はなぜ判断を間違ってしまったのか」を、まず考える。その上で、同じ過ちを犯さないために、慎重に行動することが肝要なのである。右往左往するのが、一番いけないのだ。ところが、安倍首相は早速、トランプ氏との面会を決めた。わが国のマスコミとそこに登場するコメンテーターや“評論家”と称する多くの人々は、安堵している。バカじゃなかろうか、と多くに国民は思っていることだろう。
日本人の常識や感覚では、「およそ、大統領にふさわしくない。当選はしないだろう」と思えるトランプ候補が当選したのは、現実である。いかなる現実が、アメリカの有権者をトランプに投票させたのか、まずそこを徹底的に考えなければならない。5000万人余のアメリカの有権者が狂ったり、バカになる筈がない。強欲資本主義は、本家のアメリカ社会でも大きな害毒と被害をもたらしているのだ。
アメリカの事情を良く知るある人から聞いた話だが、「アメリカ国民の7割は、アメリカのマスコミの言うことなど信じない」というのだ。わが国では、7割の人々がマスコミの言うことを信じ、踊らされている。まるで逆だ。この際、ハッキリと言っておこう。わが国のマスコミの言うことなど、7割が出鱈目なのだ。アメリカの強欲資本と、それに隷属している自公“合体”政権の宣伝媒体となっているのだ。そういう目でこれからの報道を見てみれば、成る程と頷ける筈だ。
「選挙の世界では、“不思議な勝ち”はあっても“不思議な負け”はない」と、ある先輩政治家から言われた。自民党総務局長として多くの選挙に携わって以来、この先輩の言葉の意味の深さに敬服している。今回の選挙に当てはめれば、クリントン候補の負けは、不思議な負けではない、ということだ。トランプ候補の当選を意外と考えた人々は、そこの処を考えた方が良いと思う。
トランプ次期大統領は、当選が決まってから、文字通り豹変した。それを好評して、暴落したアメリカの株価が、元に戻った。日本でも同じように、値を戻した。今回のトランプショックで、アメリカの強欲資本は、また大儲けしたのだ。70歳を過ぎた人間がそう変わるとは、私には思えない。日米関係や経済などでいろいろと困難な問題が起きるのは間違いないが、それは良い事ではないか。
これまでの既成観念に囚われることななく、新しい日米関係・日ロ関係・日中関係・アジア関係など、日本も真剣に考え直さなければならないことが、いっぱいある。日本という国にもっと自信をもって、泰然自若として、わが国と国民の本当の利益を考えていく必要がある。「山より大きなイノシシは出ない」は、宏池会を作った池田勇人首相の口癖だった。私は、いつもそういう考えをもって、政治上の問題に対処してきた。一喜一憂など、無用である。
それでは、また。