鬱陶しい不気味な気配
13年10月05日
No.1611
安倍首相が消費税を来年4月から8%にすることを“決断”したのは、10月1日であった。それ以来、天気はカラッと晴れないし、株価も低迷している。4日で500円近く落ちている。天候の方は、台風の影響だ。株価の方は、アメリカの予算不成立も影響している。だから、消費税の増税と関係ないという人もいるだろうが、私は、そうは思っていない。権力者は、天変地異や世界情勢に対しても、無責任ではいられないのだ。それが、権力者というものの宿命である。
アメリカでは、予算が成立しないと、国でも地方自治体でも公共機関の一部が停止する。公共機関は、国民の税で
一部の公共サービスが停止されたとしても、国民が痛痒を感じないものも相当あるのではないか。これを繰り返せば、行政の無駄の排除は、相当に進むであろう。公共サービスを停止している部署に勤務している公務員は、アメリカでは自宅待機を余儀なくされるのだそうだ。この間、多分給料は支払われないのではないか。そうでなければ、仕事をしないで給料だけを貰え、却って税金の無駄使になるからだ。( 脚注参照 )
アメリカ議会の攻防は続いているが、近いうちに必ず、妥協は成立するであろう。デフォルトするほど、アメリカ議会は愚かではないからだ。だから、わが国の株価の下落は、アメリカ連邦予算のせいで済ませないのだ。やはり、消費税を8%にすることの厳しさを、世間は知っている。10月1日の増税会見で、安倍首相が強調した諸対策など少しも効果はないと、市場は見抜いているのだ。
誰もが、景気を良くして欲しいと思っている。政治家も、景気を良くすると気軽に言う。しかし、景気対策ほど難しいものはない。特に、自由主義経済の国で政治の力で景気を良くするのは、非常に難しいと考えた方が良い。政治にできるのは、その国の経済がもっている成長力やシステム力を引き出すことである。引き出すといっても、そんなに簡単ではない。よほど能力のある政治家でなければ、できないのだ。
無能な政治家や官僚ができるのは、経済の自然な動きやシステムに対して、「無駄なことをしない」だけである。そのくらいならば、無能な政治家や官僚でもできる筈のだが、無能な政治家や官僚ほど、“あたふたと”いろいろなことをする。一部の国民も、それを望んでいる。経済の分野こそ「一利を興すは、一害を除くに若かず」なのだ。今回の増税会見で、安倍首相が強調した5兆円規模の経済対策など、その見本のようなものである。
アメリカで、「世界経済を発展させる3語です。“Buy My Abenomics”」と啖呵を切った安倍首相である。しかし、アメリカ株価の低迷に端を発した世界市場の低迷に、アベノミクスなど何らの効用もない。そもそも、わが国でも、経済の専門家はアベノミクスなど全く評価していない。私もそうだ。アベノミクスをヨイショしているのは、御用学者とバカな経済論評家だけである。マスコミは、こういう人物ばかり登場させる。困ったものだ。
そもそも、アベノミクス(Abenomics)なる言葉など、誰が流行らせたのか。その犯人探しは、してみる必要がある。どうせ、チーム安倍の中の誰かなのであろうが。自由主義経済社会における政治の役割と力を知っている者ならば、そんなバカなことは、決して考えない筈だ。円安で、輸入物資の価格が上がっている。物価が、徐々に上昇している。円安で景気を持ち直した会社でも、輸入部品が上昇しているので、円安効果は徐々に落ち込んでいる。そこに、8%の消費税だ。アベノミクスの後退は、安倍人気の後退となる。
今日は、このくらいにしておこう。それでは、また。
脚注 : 「米ホワイトハウスは4日、自宅待機となっている政府職員が復帰した場合、待機期間の給料を支払うための法案を支持するとの声明を発表。法案は5日に下院で投票され、その後上院に送られて可決される見通し」5日11時26分 朝日新聞デジタル [ ↑ 読んでいた箇所に戻る ]