「国会議員の職務」考
07年02月09日
No.331
1 衆参の国会議員は、ふつう政治家と呼ばれています。私は、長い間衆議院議員を務めましたが自分を政治家だといい、かつそのように自負してきました。以前はそれで世の中はだいたい納まっていましたが、最近小泉チルドレンなどと呼ばれるちょっとおかしな政治家が出現したことにより、国会議員イコール政治家との考えはだいぶ少なくなってきました。
2 私は現在国会議員などの選挙に出るつもりはまったくありません。ですからまかり間違っても国会議員となることもないのですが、政治家としての自負をもち、政治家としての活動は続けております。具体的にはWebサイトを通じて私の政治的所見を述べることにより、私が理想とする政治や社会を作ろうと一所懸命に努力しております。また雑誌などで私の政治に関する意見を発表しております。これは政治好きな人間の趣味や道楽として自己満足的にやっていることではありません。政治家としての私の義務であり、職務だと考えているからです。
3 このような生活をしておりますと、政治家とは一体何だろうかと考えざるを得ません。私は公職としては衆議院議員しか経験していません。衆議院議員は通常政治家と呼ばれています。私もそのような自負をもち、かつ誇りをもって衆議院議員イコール政治家に求められることを一所懸命にやってきたつもりです。そして現在やっていることもその延長線としてやっているような気がしてならないのです。政治家としての私の最大の目標は、自由な社会を作ることそのため真に自由主義政党と呼べる政党を作ることでした。私の現在の活動も思いはまったく同じです。自民党の国会議員として発言したり行動することはできなくなりましたが、それに伴う仕事がなくなったためにかえって私がやりたかった活動に専念できるようになりました。このような活動にバッチ(国会議員などの資格)があるない本来関係ありません。バッチを付けていても、そのような活動を全然していない国会議員はいっぱいおります。そのような国会議員を私は政治家と呼ぶ気はまったくありませんし、そのことは間違いないことだと確信しています。
4 このような愚にも付かないことを述べたのは、国会議員とはいったい何であるのか、ということを述べたいからです。そのことを明らかにしなければ、国会議員の職務が何であるかを明らかにすることはできません。国会議員の第一義的な仕事は、立法府の議員として法律を作ることです。法律は衆参両院の過半数の賛成を得てはじめて制定されます。わが国では政府の官僚が法律案のほとんどを作っているのが実情です。しかし官僚が作った法律案が法律となるためには、衆参の本会議で過半数の賛成を得なければいかに優れた法律案といえども法律にはならないのです。立法府の議員としてある法律案に賛成するか反対するかが、国会議員の第一の仕事なのです。この職務を負っている公務員として、国会議員の歳費が支払われるのです。法律を作る作らせないに関して賄賂を受取れば、それがまさに収賄になることは論をまちません。
5 ある法律を作るあるいは作らせないために、その前提となる事実やそれに関連する政府の考えを委員会や本会議場で議論したり、質問することはよくあることです。ある事実や答弁を政府から引き出すことは、法律の要否や賛否を決める上で大きな理由となるからです。そうした質問をすることは、法律を作ったり反対したりすることと密接に関連することです。ですから質問をすることは国会議員の職務といえる場合もあります。だからといって質問することそのものが国会議員の職務と即断することはできません。法律案とはまったく関係ないテーマを質問することも多くあるからです。そのような質問も政治的には大きな意味があるからです。このような質問も国会では許されるし、現に多くなされています。こうした質問のすべてが職務といわれたのでは、国会質問は著しく自由を欠くものとなってしまいます。
6 政治家たる国会議員には、法律を作る以外にも多くの使命・仕事があります。具体例を挙げて説明しよう。私は平成7年から11年までの間、自治大臣等を務めていた以外は総務局長・団体総局長として自民党の選挙運動の指揮をとることにほとんどの精力を費やしていました。党の支持を広めるためにいろんな所にいって講演をするのも大きな仕事でした。それは自民党の政治家として大切な仕事でありました。私は自民党の役員として、その職務を立派に果たした方だといわれたし、自負もしています。
7 本会議場にいってある法律案に賛否を表明しましたが、法律作りに携わるのはほんのその時間だけです。党の方針に従って賛成したり反対したりする頭数に過ぎなかったのです。頭数は法律を作る上で非常に大切なのです。ですからそれでも立法府の議員としての職務はちゃんと果たしたことになります。このように政策に全然関係ない忙しい役職にあるときは、法律の賛否の判断は政策を担当している自民党の役員や議員を信頼して賛否を決め、自からは法律作りと関係ない別の仕事に専念することも政治家としての大事な職務です。私の担当して選挙の指揮を執る仕事は、法律を作る上で決定的役割を果たす議員を獲得する活動です。しかし、このことは法的に国会議員の職務といわれないでしょう。
8 このように政治家と呼ばれかつその自負と使命をもっている国会議員には、立法府の議員としての活動(法律を作る公務員としての仕事)と自らの政治的信念や使命に基づく活動のふたつの分野が厳然とあるのです。前者に関して財産的利益を受取れば職務に関し賄賂を受取ったとなりますが、後者に関して仮に財産的利益を受取ったとしても一般には収賄罪には問われません。政治的信念や使命に基づく活動がある法律を具体的に作る作らせないということになった場合には、それは立法府の議員としての活動になることはいうまでもありません。
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以上は、一昨日から昨日にかけてある目的のために書いた文書の一部分である。政治家としての国会議員の職務とはいったい何かを考える上で参考になると思うのであえて紹介した次第である。考えてみると私はリベラルな政治を実現するために私の精力の大半を傾注してきた。リベラルという視点からみて大切な法律案については、その過程で中心になったことは事実としてあるが、一般の法律作りに私はそれほど精力を傾注しなかったことは率直に認めざるを得ない。私の政治家としての使命は、リベラルの政治をわが国でどう実現するかであった。そしてその先頭に私が立たなかったら、事態はほとんど進まなかったのが実情であった。「政治家としての職務」を誰よりも一所懸命にやったことは、省みてもいささかの自負がある。
それでは、また明日。